第91話 日向マキ航海記その2
なし崩しに幽霊船で戦うことになってしまいました!
ええと、確か戦う前に多摩川くんはみんなのステータスをチェックしてたような……。
え、えいっ!
ステータス!
……こうかな?
名前:日向マキ
レベル:40
職業:体術使い
力 :99
身の守り:69
素早さ :118
賢さ :30
運の良さ:26
HP312
MP32
体術23レベル
精神抵抗10レベル
動物会話5レベル
☆体術
・浴びせ蹴り・裏拳・三角蹴り
・空気投げ・爆砕鉄拳・鬼走り
あれ?
精神抵抗がスキル? になってる?
あと動物会話って、フタマタちゃんとお喋りできるようになったから?
じゃあ、他の人達は……。
名前:オルカ
レベル:62
職業:海賊
力 :168
身の守り:130
素早さ :206
賢さ :87
運の良さ:130
HP625
MP249
剣41レベル
銃36レベル
風の呪法21レベル
✩剣
・巻き打ち・飛燕剣・稲妻突き
・ディフレクト・ベアクラッシュ・残像剣
☆銃
・反応射撃・集中射撃・曲射
・跳弾
★風の呪法
◯コールウインド◯アイスジャベリン◯ウインドバリア
◯ライトニング◯ソニックバーナー
つ、強い……!
オルカさん、剣も銃も呪法も使えるんだ。
いつもは下品なことを言ってるおじさんにしか見えないから、すごい人だなんて全然分からなかった。
名前:グルムル
レベル:49
職業:リザードマン戦士
力 :140
身の守り:200
素早さ :139
賢さ :80
運の良さ:34
HP516
MP123
槍30レベル
水の呪法12レベル
✩槍
・足払い・二段突き・風車
☆槍呪法技
・ミヅチ
★水の呪法
◯油地獄◯コールレイン
グルムルさんは安定している感じ。
いつも落ち着いてるし。
名前:ジェーダイ
レベル:60
職業:古代人の戦士
力 :185
身の守り:170
素早さ :100
賢さ :120
運の良さ:125
HP540
MP213
光刃剣55レベル
気の呪法50レベル
☆光刃剣
・リフレクトソード
★気の呪法
・
◯フォースアーマー◯フォースパワー◯フォースチョーク
ジェーダイさんは、多摩川くんが前に見た時とそんなに変わってない感じ?
あんまり戦いとかなかったもんね。
名前:シ=ロマ=ルー
レベル:51
職業:マーメイドメイジ
力 :56
身の守り:87
素早さ :120
賢さ :188
運の良さ:105
HP254
MP388
幻の呪法(人魚)30レベル
風の呪法25レベル
水の呪法20レベル
★幻の呪法
◯ミラージュハイド◯サーチミラージュ
★水の呪法
◯ウォーターブリージング◯デクリースウォータープレッシャー◯ウォーターカッター
★風の呪法
◯コールウィンド◯ウィンドカッター
★幻、水複合
◯幻夢結界
★幻、風複合
◯ホワイトアウト
★水、風複合
◯吹雪
ほわああああ、呪法のエキスパートだあ!!
ここまで使いこなす人、うちのクラスにもいなかったよ。
「ロマさん、ロマさん」
「ん? どうしたんだい?」
ロマさんは気さくなので話しかけやすいです。
ただ、人魚なのでちょっと価値観とか違ってて、話が通じないことも多いんですけど。
「ロマさん、呪法が増えてませんか?」
「ああ、これかい? オクノの仲間になってから、あたいが使えた呪法の一つ一つが強力になったみたいなんだ。なんだろうねえ、これ。あと、ラムハとアミラと協力して、合成呪法ってのを今作ってるところさね。三つ並んでるだろ? これはあたいの呪法。アミラは今の所水だけだけど、あの子は土の呪法の素質がある。ラムハは珍しくて、多分あの子、闇の他に光の呪法を使えるよ。相反する呪法は使えないはずなんだけどねえ」
情報量が多くてクラクラしてきました!
私はもともと体育会系なんです。
難しいことはわかりません!
とりあえず言えることは、このパーティで一番弱いのが私だってことで……。
異世界から来た勇者なんて言われてても、この世界の人達強いじゃないですかー!
「ほれ、嬢ちゃん、モンスターが出てきたぞ! 構えろ構えろ!」
オルカさんが合図を送ってきます。
「は、はい!」
私も慌てて前に出ました。
「残念ながら、オクノがいねえから陣形は組めねえ。ってことで、みんなめいめいバラバラに戦うぜ!」
オルカさんの合図をもとに、戦い開始です!
うわあー、相手は骨だったりゾンビだったりするじゃないですか!
殴りたくなーい!
「うううー、爆砕鉄拳!」
ぐちゃって言った! ぐちゃって!
「うーぐーわー」
ゾンビがぐずぐずーっと崩れていきます。
いやーん!
手をぶんぶん振る私に、ロマさんが水をかけてくれました。
「体術だとその辺つらいさねえ。オクノなら気にせずやっちゃいそうだけど、あの子そういうところ無駄に心が広いからねえ」
デリカシーが無いんじゃないんですよね彼。
そう、やたらと心が広いです。
「あのお、グルムルさん、ゾンビはおまかせしても……?」
「ええ構いません。私の槍ではスケルトンには効果が薄いです。互いに役割分担して参りましょう」
「やたっ! お願いします!」
ということで、グルムルさんと交渉成立です!
私はスケルトンを蹴って、殴って砕きます!
グルムルさんはゾンビを突いて、呪法で押し流します。
すぐ近くで、ジェーダイさんが目に見えない呪法の腕を使って、ゾンビやスケルトンを空中に吊り上げています。
フォースチョークっていう呪法らしいです。
首がボキッと行きました。
見てて背筋が寒くなります。
「よーし、お前ら! 船長室までの道は切り開いたぞ! こういう船は、幽霊船長がいやがるんだ。そいつが幽霊船の核になってる! 普段なら船長を足止めして船底のお宝をいただくんだが……」
オルカさんの言葉に、ロマさんがウィンクを返します。
「あたいの呪法で、水の中でも動けるようになるよ。だから、お宝が沈んでも回収できるわけさね!」
「助かるぜ! ってなわけで、幽霊船長をぶっ飛ばすぞ!」
オルカさん、宣言とともに真っ先に船の一番奥へと走ります。
そこには船長室がありました。
オルカさんの接近に気づいて、船長室の扉が開いて……。
ううん、あれは船長室そのものが形を変えていきます……!
まるで、骸骨でできた舞台みたいになっていきます。
その中心に、豪華な船長の服装をしたスケルトンが立っていました。
『海賊どもめ、我が“帝国の誉れ”号はやらせんぞぉ!!』
帝国の……ということは、これはもともと、帝国が持っていた船なんでしょうか。
「うるせえ! 死人がお宝を持ってるなんてのはもったいねえだろうが! 俺達によこしやがれ!!」
オルカさんがサーベルを向けて、幽霊船長に宣戦布告です。
『出てこい、我が兵士たちよ! 海賊どもに目にものを見せてやれ!』
「行くぜお前ら! オクタマ戦団の力を見せつけてやるんだ!」
「おや、キャプテンがオルカ海賊団を名乗らないとは意外です」
「うるせえ。俺もあの若造の事は認めてるんだよ! 今はあいつがリーダーだからな!」
ツンデレでしょうか。
といことで、戦いが始まってしまいました。
海賊船から、ゾンビやスケルトン、果ては実体がないゴーストまでどんどん涌いてきます。
これを、私達が次々に迎え撃つんです。
ひゃあ、きりがない!
「おい、ヒナタマキ!」
「は、はい!」
オルカさんに突然声をかけられました。
「お前が切り開け! 連携であの船長を叩くぞ! 他はジェーダイに全部任せろ!」
「私が!?」
「お前が一番突破力があるんだよ! 移動しながら技を出せるのはお前だけなんだから!」
そういうことですか!
それにオルカさん、私が多摩川くんと一緒にバリアを割ったところを覚えていたみたいです。
一目置かれてるのかな?
だとするとちょっとうれしいです……!
「じゃあ、行きます! みんな続いて! 鬼、走り!!」
鬼走りは、突進しながらの攻撃連打です。
私が習ってきた空手の型には無い、でも、この世界で得た異常な身体能力があれば可能になる、一対多の打撃技!
幽霊船のモンスターたちを跳ね飛ばしながら、私は一気に幽霊船長に近づき、一撃を食らわしました。
『ウグワーッ!!』
「続くぜ! 跳弾!」
オルカさんが放った射撃が、船中を飛び回りながら幽霊船長を襲います!
「参りましょう。油地獄!」
水が油の性質を得て、幽霊船長の動きを鈍くします。
「とどめだよ! 吹雪!」
『鬼跳油雪』
四文字熟語みたいです。
私が飛び退いたところに、ロマさんの複合呪法が炸裂しました。
全身を跳弾で砕かれ、動きを止められ、吹雪で凍りつかされた幽霊船長。
『く、口惜しや海賊共ぉ……! ウグワーッ!!!』
ひと声叫ぶと、消滅していきました。
すると、急に船の足元がふわふわしてきました。
「消滅するぞ! みんな船に戻れ!」
オルカさんの言葉を聞いて、慌てて船に向かって駆け出します。
走るのが苦手そうなロマさんを、抱き上げます。
「失礼します!」
「あら、ありがとうさん! あたいは海に落ちても平気なんだけどね? でも、こうして女の子扱いされるのもたまにはいいさね」
なんだか嬉しそうです。
「船に戻ってもそこで終わりじゃねえぞ! 沈んだお宝を回収するまでが仕事だ! いいなお前らー!」
オルカさん、とっても元気です。
こうして、最初のお仕事は無事に終わりました。
ここで私、どうにかやっていけそう……なのかな?
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