第85話 俺、陸チームとして密林を見に行く

 海チームと陸チームに分かれる前に、武器や防具などを補充だ。


 これまでの戦いで、使っている武器もかなりくたびれてきてしまったからな。

 ルリアとカリナが武器を新調し、リザードマンたちにも専用の武器を買ってやった。


 漁村だが、色々流通してるらしくて武器屋があったのだ。

 普段は漁師で、客が来たときだけ武器を売るらしい。


「ま、この辺だと金じゃなくて物々交換だがね。だが、あんたらが色々卸していってくれたおかげで、この辺りの物流のレベルも上がるんじゃないかね」


「へえ、そんなことが」


 武器屋の話に感心していると、イーサワが説明を始めた。


「我々が物々交換という形でも流す、武器や防具、道具の数々は馬鹿になりませんからね。これだけで周囲の市場が大きく変わるほどですよ。そしてそうなると、我々が卸した素材などで作られた武器が出回る可能性もあります。特別な武器を使っていない、ルリアさんやカリナさんはパワーアップできますね」


「俺も特別な武器を使ってないから、恩恵がありそうだなあ。メインは体術だけど」


 ということで。

 たくさん物資を卸して、武器や防具を補充したのだった。


 そしてしばらくの間、海チームのみんなとはお別れだ。


「じゃあなー!」


「元気で!」


 オクタマ戦団は二つに別れ、サンクニージュ大陸を踏破するのだ!


──────


 ここから、ちょこちょこと日向視点での海チームのお話が差し込まれます。

 陸チーム・オクノ視点。

 海チーム・日向視点。


──────



 まずはどこに行ったものだろう。

 キョーダリアス大陸に詳しかったわけでもないが、サンクニージュ大陸ともなると完全に分からない俺である。

 助けを求めるようにラムハをじっと見た。


「私だって知らないわよ。ここまで来たこと無いもの」


「流石に海は渡ってなかったか」


 残念。

 手探りの旅が始まるぞ。

 まずは漁村の人たちに情報を聞いてみようじゃないか。


「北に向かう街道と、東の密林に向かう街道があるよ。密林は猫人族のテリトリーだからね。許可をもらわずに入ると大変なことになるぞ」


「ほう、猫人族」


 興味が湧いた。


「猫……」


「猫……」


「猫……」


「強いのか?」


 ラムハを除く女子三名も同様で、イクサはいつも通りだ。


「はいはい。じゃあ、密林に向かうのね。どうせ私達が行くところ、どこにでも厄介事が転がっているもの。オクタマ戦団として仕事をしましょ」


「おう!」


 俺達は一路、密林へと向かう。


 途中、あちこちで戦闘の跡を見かけた。

 どうやら、天空の大盆が撒き散らしたロボットが暴れまわったらしい。


「うわーっ! お助けー!」


 と思ったら声がするじゃないか!

 街道の先だ。


 俺達は急ぎ、声のする方に向かった。

 すると、そこでは樽から手足が生えたロボが、旅人を追い詰めている。


「よし、行くぞみんな!」


「おー!」


 一同に声を掛けて、戦いに挑むのだ!

 ロボの数は数体。

 装甲が堅めだが、レベルアップしたうちのパーティの敵じゃない。


 ルリアの槍とアミラの鞭が炸裂し、カリナの弓矢が遠いロボを貫く。

 イクサが暴れ、ラムハの術がロボットたちの攻撃を旅人から遠ざける。


「おらっ! ブレーンバスターだ!」


『ピガー!』


 抱え上げたロボットを、自分ごと倒れ込んで地面に叩きつける。

 それでロボットはひしゃげ、動かなくなった。


 強さとしては、フロンティアで戦った兵隊アリと同じくらい。

 一般の兵士よりは強いけど、この程度の数ならそこまで恐ろしい存在じゃないな。


 さて、ロボットの武器を剥ぎ取って回収だ。

 これをこの辺りに流して、物流のレベルを上げるぞ。


 せっせと武器を拾っていたら、旅人から声をかけられた。


「あのー」


「なんですかな」


 振り返って、俺はびっくりする。


「あっ、猫耳……!!」


「我々は猫人族の者です。実は人間の里に協力を要請に行くところだったのです」


「協力の要請?」


 ちなみに猫耳の人は、男である。

 残念だったな。


「密林で最近、六欲天の落とし子が暴れておりまして。六本足の豹の怪物なのですが」


「ほうほう……」


「とても倒すことができない強力なモンスターなのですが、人間たちが使う火を用いると、それを恐れて森から退散するのです。森には火を入れるわけにはいかないのですが、落とし子が現れた時ばかりは例外でして。それで協力を要請に」


「なるほど。つまりこれは、俺達の営業チャンスということだな」


「はい?」


 ラムハに視線をくれてやると、彼女は頷いた。


「ちょうど良かったわ。私達は傭兵団、オクタマ戦団なの。あなた達に力を貸すわ、猫人族」


「なんと! 傭兵団ということは戦闘のプロですか!? それはありがたい……!」


 猫人族の人はとても嬉しそうだ。

 ラムハと報酬の話を始める。

 里が産出する特別なコーヒー豆みたいなのがあるらしく、これでどうかという話に。


 猫……特別なコーヒー豆……。

 むむ、なにか覚えがあるような。


「それにしても、猫人族って許可をもらわないと森に入れてくれないって聞いたんだけど、イメージと違うね」


 いきなりルリアが言う。

 そう言えば……。

 この猫の人はとてもフレンドリーだ。


「ああ、それはですね。我が猫人族は目下、二つの派閥に分かれておりまして」


「ほうほう」


「一つは我々、人間の手を借りて落とし子を追い払おうという穏健派。もう一つは、自分たちの手だけで落とし子を追い払い、他の種族を森に入れてはいけないとする強硬派。彼らのやり方では、森の被害を増やすばかりだと思うのですよ。我々の獲物が全て、落とし子に狩られてしまう!」


「なるほど、なるほど」


 よく分かった。


「狩りは大事です。プライドなんかにかまってたらダメです」


 憤慨するカリナ。

 遊牧民だけに、こういう話題には敏感なのだ。


「オクノさん、早く行って、猫の人たちを助けましょう!」


「よし、そうしよう」


「お姉さんは、猫人の人たちをちょっともふもふしたいなあ」


 アミラが欲望を垂れ流している。

 猫の人はこれを聞いて、スッとアミラの胸元とか腰回りを見た。


「あ、我々は混血もオッケーですので」


「オッケーじゃないよキミィ!」


 これには俺が猛抗議である。

 穏健派、思っていたよりもずっと開放的っぽいぞ。

 これはうちの女性陣に目を配らねば……。


「一つ問う」


 これはイクサの発言だ。

 彼は実にらしい事を考えていたようだ。


「六欲天の落とし子は、森に悪しき事をするんだな?」


「はい。我ら猫人族のテリトリーを侵し、獲物を食い荒らし、そして幼い子どもを襲います」


「悪だ……!」


 イクサの目つきが鋭くなった。

 こいつ、正義をするのが楽しいわけじゃなくて、責任感からそういうのを執行するタイプなのだ。

 イクサの正義スイッチが入ったな。


 というわけで、俺達の向かう先は大密林!

 六欲天の落とし子狩りだ!


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