ナイトガール


「未開の荒野にはアメリカの女がお似合いとか、姉が云っているわよ、ミリタリーも軍事参議官を大量に派遣するらしいわ」

 アリシアさんにはこの意味が読めました。


 しかし次の言葉をミコさんが言ったのです。

「私がふらふらと歩くから、監視役に送り込んだのですけどね」


 ここまで読んでいて何で……


「私、変態でしょう、ガリレオ開発計画にはマルスの財閥などが集まるのよね」

「綺麗なオフィスガールもいたりして、一人二人ね、ものにしたりしてね」

 そんなことを云いながら、喫茶店のテーブルの下から、アリシアさんのスカートの中に、手を伸ばして来るミコさんです。


「もう!エッチなのですから!」

「いいじゃないの、ショーツ、湿っているわよ」

 ……


「ねぇ、今からどうです」

 ミコに誘われ、嬉しそうに二人でラブホテルへと……

 そのまま午後の四時まで、運動などをした二人でした。


 一体何だったのか……心地よい疲労感と充実した満足感に浸りながらも、ミコの行動に疑問が残ったアリシアさんでした。


 翌日、アリシアさんは正式にガリレオ衛星の執政官に任命されました。


「それにしても軍事参議官が多いわね、四人もいるわね、経費はこちらもちなのに」

 アリシアさん、補佐官としてハウスキーパー事務局より指名されたアデライン・スチュアートさんに愚痴っていました。


 社会の底辺で辛酸をなめていたアデラインさんは、かなり人使いが上手く、男あしらいもアリシアさんとは比較になりません。

 女たちにも人気があります、見えないところの苦労と努力が分かる女なのです。


「でもアリシア様、ゼノビア様はあちらの激しい女を選ばれたのでしょう、選ばれた方々は体力抜群ではありませんか」


「まったく、ミコ様ですからね、皆で注意しなくてはね」

「ここで女を作られるとサリー様からにらまれますし、なにより女としては出来るだけ避けたい事ですからね、ゼノビア様のお考えは理解できます」


「私がおります、決して財閥のオーナー対策係の女など拾わすものですか!」


「ナイトガールですか、ガリレオ衛星ステーションに四大財閥――デヴィッドソン財閥、ロッシチルド財閥、鈴木商会の三大財閥にバチカン財閥を加える――の支店がおかれていますものね」


 ナイトガールとは、本来は財閥や大企業が娼婦さんと契約して、オーナーが来社した時に、色仕掛けの接待をする女のこと。


 しかし今では、娼館の水揚げ前の引込新造さんを身請けして、事務員として採用する。

 処女が絶対条件で、三十歳を過ぎてオーナーに抱かれなかったら、その後は自由となる、そのままオフィスガールとして勤める者も多いのです。


「アデラインさん、そちらの方の対策はおねがいしますね、私は経験が足りませんから……」

 アリシアさんはそう言いながら、ふと言葉を止めた。


「なにか不安でもあるのですか?」

「あのミコ様の事、貴女や私、それでも危ない気が……」

「では妹を呼びましょう、アニーはミコ様に物おじせずにしゃべりますから」

「アニー?そうね、アニーならミコ様も出し抜くことは御控えになるかもしれないわね、可愛がっている節がありますものね」

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