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――ホフマンに訊けば、元に戻るヒントが得られるかもしれない。
遥香はごろんと寝返りを打った。
頭の中は今日クロードと発見したドーリッヒ・ホフマンという男の本のことでいっぱいだった。
もしかしたら元の世界に戻れるかもしれない――、嬉しいはずなのに、素直に喜べない。
元の世界に戻って、遥香はどんな顔をして弘貴に向き合えばいいのだろう。
きっと、弘貴は落胆する。リリーのことを愛している弘貴は、ずっとこのままでいたいと思うに違いない。
しかし、クロードはどうだろうか。クロードはリリーを愛している。リリーはもともと彼の婚約者だ。リリーに会いたくて仕方がないはず。
(……どっちにしても、わたしの居場所はないみたい)
だから、遥香はどうしていいのかわからない。
弘貴のことは今でも愛している。大好きだ。でも――、会うのが怖い。
きっとさよならをすることになるだろう。遥香は身代わりだった。それを知っているのに、知らないふりをして弘貴のそばにいることはできない。
遥香はそっと指輪に触れる。
弘貴に会いたい。弘貴に会いたくない。その二つの相反する感情に挟まれて、遥香は身動きが取れなかった。
しかし、クロードはさっそくホフマンの手掛かりを探すという。
ホフマンが見つからなければいい――、そう思う自分がどこかにいて、そんな自分に嫌気がさす。
結局、自分は逃げてばかりなんだなと自嘲しながら、それでもどうすることのできない自分に苛立って――、遥香は眠れない夜を過ごした。
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