第46話 価値

「な、なんやね今のは!」

「飲み込みましたわ!」

「「!?」」


 反応はそれぞれだけど皆驚いたみたいだ。

 スララの能力なら可能だと思っていたけど、上手く海賊船を回収できたみたいで良かった。

 これで『ハコニワ』内に収納されたのでいつでも出し入れできるはず。


「スララちゃんこんなことも出来たんですわね」

「い。今のはレンヤはんの従魔なん?」

「ああ、そうだよ。俺の相棒だ」

「凄い能力持ってるんやね!」


 アヤメは戻ってきたスララをつんつんしながら凄いな、うちも欲しいなとか言っている。

 スララも嫌がっていないから大丈夫だろう。

 あげないけどな。


「そうだアヤメに聞いておきたい事があったんだ」

「なんやね?」

「アヤメのいる国の名前はなんて言うんだ?」

「えっ? レンヤはん達は船で旅をしてきたんやろ」


 アヤメからしたら俺たちは異国から来た船乗りに見えるのだろう。

 その途中で自分たちを助けてくれた。

 そんな感じなのかもしれない。


 だから目的を持って旅をしている一行、そんな印象を持っていたのだろう。

 そんな一行が周辺の情報を知らないことに驚いているみたいだ。


「ええっと、トレイルって言うんやけど……」

「シーナとネネは知っているか?」

「いえ、初めて聞く国名ですわね」

「私も知りません」


 二人も知らないとなると困ったな。


「レンヤはん達はどこから来たん?」


 俺は二人がいた国の名前を言ってもらうように、シーナに目配せをする。


「スカーレットという王国ですわ」

「なんや聞いたことない国名やね。……いやたしか昔に聞いた遠い国の名前がそんな感じだったんような……」

「そうなのか」


 シーナとネネも知らないらしいし現在地がいまいちよく分からないな。


「そんなに遠くから来たん? 船で行っても数ヵ月はかかるほど距離があるはずやし……」

「いやそこから船で来たわけではないんだけどな」

「なんや訳ありみたいやね」


 現状隠していても進展がなさそうなので流刑の島にいたことを伝える。


「ええ~! あの島から来よったんか? 嵐が酷くて近づけん島やん」

「知っているのか?」

「うん、流刑の島やからね。レンヤはん達は犯罪者なん?」


 流刑のことは知っているみたいだ。

 そこら辺はシーナとネネの国と共通しているな。


「いや犯罪者って訳ではないんだけどな。三人ともあの島に飛ばされてしまってな」

「そうなんや。まあレンヤはん達は命の恩人やし、そんなことは関係なく感謝はしてるんやけどね」


 アヤメは、たとえ俺達が犯罪者でも態度は変わらないよ、と言ってくれているみたいだ。

 

「でもあの島から出てこられるんやね。たしか脱出不可能の地って聞いてたんやけど」

「まあ苦労したからな……」

「そうですわね……」

「そうですね……」


 俺たちはそれぞれに思い出し、物思いにふける。


「へえ~、そうなんや。やっぱり凄いんやね」


 まあシーナの国とは距離がかなり離れているみたいだし、シーナへの追手は気にしなくてもいいかもしれない。


「まあそんな感じでここら辺のことは全く分からないんで色々と教えて貰いたいんだけど」

「そんなことなら全然かまへんよ。幾らでも教えるんよ」


「アヤメはその王国? になるのか、その王都で商人をやっているんだな?」

「せやね。うちは商人家系なんよ。最近大きな仕事任されるようなって、今回も他国での買い付けに行ってたところやったんよ」


 海外に商品を買いに行ってたみたいな感じか。


「金貨700枚程の取引やったんだけど、その帰りに襲われてレンヤはんに助けられたって訳やね」


 ちなみに通貨の価値は多分こんな感じだと思われる。


金貨一枚、十万円

銀貨一枚、一万円

大銅貨一枚、千円

小銅貨一枚、百円


 つまりアヤメは七千万円分の取引をしてきたってことになる。

 これだけの高額取引を任せているのは、親もアヤメのことを信頼しているってことだろう。


「シーナの国も通貨って同じなのか?」

「はい。同じですわね」


 同じなのはありがたいな。

 統一されているならアヤメの国でもシーナの国でも使用できる。

 まあ俺は一枚も持っていないけど。


「シーナとネネも、お金は持っていないよな?」


 装備すら取り上げられていたからな。


「はい。マジックバッグに入っていたんですけれどそれも取り上げられてしまいましたのでありませんわ」

「はい。私もありません」


「えっ! 文無しなん? でも船も立派で結構ええ服着てるし、お金には困ってなさそうやけど……」


 世間からしたら、そう見えるのだろう。

 完全に『ハコニワ』のおかげだけどな。


「まあ何とかやってるよ」

「なんや、まだまだ秘密がありそうやね」


 じろじろと疑いの目をアヤメは向けてくる。


「まあそれは追々聞いていくとして、あの島の物とか何か持ってたりするん? いい物だったら引き取りたいんやけど」


 『ハコニワ』にドロップアイテムの余りを戻して貰うようにしていたので、そろそろインベントリに反映されているかもしれない。


 確認してみるか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る