第141話 バレた!
あれから、数週間が経ったが、未だに大神様とカサンドラ様からの連絡が無い。
季節は冬に入り、いよいよ師走である。
街は、クリスマスや忘年会等で賑わっている。
しかし、あの魔力源と魔力タンクの放置が気になって仕方が無いのである。
凄く嫌な事が起きそうな気がしてならないからである。
1週間に2度程は、あの塔に異変が無いかをチェックしているが、今の所下階層の浸水の水面が微量ずつ上昇しているぐらいで、特には異変が無いのは幸いだが。
ちなみに、水位が上がっているのは、どうやら俺達が緊急停止した事で、塔を覆うシールドが消失した事が原因らしい。
防水と言うか、気密構造にはなってないので、隙間とかから海水が浸入して来ていると思うのだが、これは取りあえず先に何処階段とかエレベーターシャフトを遮断すべきなのかも知れないな。
今は微量ずつの水面上昇であるが、何処かが崩壊すると一気にあの35階層も水の中になってしまう可能性が高い。
確かに水中でも作業は出来るが、何が起こるかは判らないからな。
と言う事で、本日は塔の階段とエレベーターシャフトを封印しようと43階層にやって来た。
階段や通気口等、封印すべき箇所は多い。
まずは階段である。
土魔法でガッチリと補強しつつ強固に固めて43階層以下を遮断した。
これが何気圧に耐えられるかは、実際の所不明なのだが、少なくとも50気圧ぐらいには耐えられるんじゃなかろうか?
そしてエレベーターシャフトである、無理矢理扉を開けて、シャフトも同じ様に土魔法で遮断した。
さて、ここからが問題である。配線や配管類が通っているサービス用の空洞や通気口を探して廻るのだが、これが地味に大変で、1箇所でも漏れがあると、そこから上階層へと海水が吹き上がり、その海水の圧力で壁や天井が壊される可能性もあるからである。
兎に角出来る限り完全に遮断する必要がある。
アクティブ・ソナーを掛けて、下と繋がっている空間を細かく探しながら、入り口を探して侵入し、念入りに封鎖して廻る。
細かい事を言えば、配管の中も封印したいぐらいだが、流石にそこまでは無理である。
結果5時間程掛かって、やっと全ての穴を塞ぎ、43階層より下を遮断し終わったのだった。
「多分、これで大丈夫な筈……… これはフラグじゃないからな?」
と自分に言い聞かせ、最後に問題の35階層を確認してから、自宅へと戻ったのだった。
まあ、幾ら自分に言い聞かせても、何時暴発するか判らない爆弾を抱えて溶鉱炉の横に居る様で、落ち着かないのである。
自宅に戻ると、午後2時過ぎであった。
まだ敬護は学校から戻って来てなかったが、俺が険しい顔をして戻って来た様で、心配されてしまった。
いかんな、顔に出てしまってたな……と反省しつつ、隠しても逆に不安にさせるかと思い、詳細を教えると、さっちゃんもヤバさを理解し、一瞬険しい顔はしたが、
「まあ、でもヤレる事は全てやったんでしょ? 後は情報を待つしか手が無いんだから、なるようにしかならないし、神様を信じて待ちましょう。」
と言っていた。うーむ、これが母は強しって奴なのか? ハハハ。
話は変わるが、佐々木家の庭には大きなモミの木が植えてある。
これは、子供らが生まれた際に、山から持って来たモミの木で、主にこのシーズンに大活躍する。
今年は、色々と例の一件でバタバタしていたので、まだ飾り付けをしていない。
「まあ、気に病んでもしょうがないから、今の内に飾り付けしましょうよ。」
と言うさっちゃんの提案に乗り、家に居る者総出で飾り付けを始めたのであった。
「ハハハ。俺ダメだな、こう言うのは、全然センス無いや。」
と余りのダメさに笑う俺。
「プププっ!」と失笑するさっちゃん。
「とーしゃん、がんばれー」と皐月が応援してくれるのだが、こればかりはなかなかね。
そうこうしている内に、敬護やピートも帰って来て、一緒に飾り付けを楽しむのだった。
佐々木家の子供らのクリスマスプレゼントだが、欲しがる物が実に変わっている。
玩具?と言うより実用的な刀であったり、ナイフであったりと、一昔前なら、教育委員会とか近所の口うるさいおばちゃん達がギャーギャーと騒ぎそうな物騒な物だったりする。
今年は、身体の成長と例の一件もあり、ピートも敬護もそれなりの刀が欲しいらしい。
と言う事で師匠にお願いしてあるのだが、
「お前ら、ポンポンと注文しおってから………。1本作るのに、どれくらい大変か判っておろうの?」
と泣きが入っていたが、日本酒の差し入れで、コロッと態度が変わり、「おう!任せとけ!」と良い笑顔と共に胸を叩いていた。
そうして、日々過ぎて行く。
取りあえず、塔の封印は成功したらしく、水位の上昇は今の所抑えられている様だ。
そんなある日、母上から、
「ねえ、アッ君。今年の年末年始は何処にする?」
と言われ、一瞬なんの事か判らずに聞き返してしまった。
「え? 何言ってるの? 年末年始の旅行に決まってるじゃない?」
と真顔で返され、ああそう言えばと最近旅行続きだったのを思い出す。
「えっとね、今年は俺達別行動しようかなぁ~って思ってるんだよね。
まあ、出来れば、ピートも一緒にね。」
と俺が答えると、凄く怪訝そうな顔をして、ジッと俺の顔を見つめてくる。
「ど、ドウシタノ、ハハウエ?」
とその視線に耐えられず、思わず目を背けつつ、返したのだが、
「あらぁ~ アッ君、判り易いからバレてるわよぉ~?
アッ君は昔から嘘がつけないからなぁ~。
お母さんにはすーーぐに判るのよぉ~?」
と母上が詰め寄って来る。
「あああ、イヤナニモカクシテナイヨ?」
と思わず焦るが、やはりダメであった。
母上に誘導尋問され、ハワイの別荘がバレてしまったのだった。
結果、一族全員でハワイの別荘で年末年始を過ごす事に決定してしまった。
くそーーー! 当分秘密にしとくつもりだったのになぁ。
母上は大喜びで佐々木家全体に知らせてしまい、佐々木家界隈では、その別荘の話で大盛り上がりとなってしまった。
はぁ~ 母上の誘導尋問は本当にヤバい。
何故か母上相手だと、隠し通せる気がしないなぁ。
流石は我が母上と言った所なのだろうか? 父上も隠し事をしようとしても、確実にバレるからなぁ。
母上曰く、「そんなのは、勘よ、勘! それより仕出しとかの注文入れなきゃ行けないんだから、素直に早めに教えなさいよね?」
と窘められてしまったのだった。
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