第20話 山下陽
僕の名前は山下陽(やました よう)。高校2年、男子。身長178cm、特技は勉強全般にスポーツ全般。ちなみに芸術系も抜かりない。音楽も美術も得意だ。僕の通う私立松原高校では御三家イケメンと陰で呼ばれている。
廊下を歩けば女の子達が寄ってくる。靴箱はラブレターの山、今年のバレンタインデーは、段ボール箱いっぱいのチョコレート。家はまあまあの金持ち。ハッキリと言うが非の打ちどろがない。彼女がいなかった歴、ゼロ年。
お互いにケンカしないからと、どうしてもと言うことで、去年は五人の女の子と付き合っていた。月曜日から金曜日までの平日は、女の子の当番を決めて一緒に過ごした。土日は交代制だ。それにもかかわらず、彼女たちの仲間に加えてほしいと言う女子からのラブレター攻撃は止まなかった。
僕は彼女たちを平等に愛したし、僕を独占したがる女の子からは手を引いてもらった。これがイケメンに生まれたものの宿命なのだ。常に女の子の熱い視線にさらされている。失敗もドジも僕には許されないのだ。どんな女の子にもやさしく接し、希望を与える。それが僕の役目だ。
世間の男子諸君は、僕のことをいけ好かない野郎だと思うだろう。ところが、僕の周りには男子どもも集まってくる。俺のまわりに集まってくる女子目当てなのはわかるが、プライドを持ってほしい。
僕には唯一、尊敬する男がいる。その男の名は山田健太(やまだ けんた)。彼は僕の幼なじみで、学力も体力もない。逃げ足だけは一目置くが。顔も正直普通だ。五人ほどのクラスメイトが集まったら見失ってしまう。そんな平凡な男だ。意外だろー。でもカッコイイんだよね。生き方が!
山田健太は高校に入ってからは、みんなを避ける様にして、いつも一人だ。ほぼ、ぼっちと言っていい。保育園、小学校、中学校と一緒のクラスで過ごしてきたが、正直、他の男子同様に媚びへつらうだけの小物だと思っていた。
が、高校になってからの山田健太は違った。ぼっちを受け入れた孤高の戦士となったのだ。周りが話しかけても丁寧語を使って退ける。あんな風に自分も、周りを気にせず自由に生きてみたい。僕は一人の時間に憧れていた。
今日、山田健太に彼女ができた。超絶美少女の月野姫(つきの ひめ)だ。彼女はUFOに乗ってやってきた!クールだ。カッコイイ。彼女は宇宙人。僕に一切なびくことがない。彼女の瞳には山田健太しか映っていない。
俺が彼女を狙っているかって。そんなことはしない。私立松原高校の全校生徒、2400名の前で超絶美少女の告白を受け止めるなんてとてもできない。しかも、相手は宇宙人。正直、感動した。山田健太は僕の想像をはるかに超える大物だった。
「なぁ、三美(みつみ)。僕、山田健太と友達になりたいんだけど」
「・・・。やめときなよ。バカが移るよ!あなんぼっち」
「僕たち幼なじみだよな」
「そうだけど」
「クラスもずっと一緒だよな」
「・・・。腐れ縁ね」
「キミ、なんで僕のこと好きになんないの?」
「・・・。うぬぼれないでよ。女ったらし」
「僕、知っているんだけど」
「なっなにを」
「キミ、山田健太が好きだろ」
「はぁっ。ふざけないでよ。あんなぼっち」
「キミがしたんだろ。健太をぼっちに」
「・・・」
「素直じゃないなー」
「・・・。陽君だって、健太を追い込んだくせに」
「・・・。僕は違うよ。周りが健太と僕を比較したがっただけだから。嫌われてっからな。僕、健太に」
「陽君こそ、嫌ってんじゃないの?健太のこと」
「いや、むしろその逆。いつも周りに女の子がいるから、きっかけがつかめなかっただけ」
「・・・」
「自衛隊に頼んで追っかけたいんだけど」
「私に策をねれと」
「うん!」
「いいわ、イケメンに貸を作りたいだけだからね。山田健太なんてどうでもいいんだから」
「そうだな。そう言うことにしとくよ」
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