第17話 幼なじみ
驚いて目を丸くしている俺と姫(ひめ)。二人のイチャラブ学園生活はどうなるのだ。まあ、全世界配信された時点で終わりっちゃ終わりかも知れんが。庶民のエネルギーは正直、自衛隊より怖いかもなんです。
「ちょっと姫と相談させてください」
「気に入らんのか?」
「それはまあ、埼玉県民としては千葉県民をギャフンと言わせたくはありますが・・・。姫には関係ないことですし」
沼田源一郎(ぬまた げんいちろう)埼玉県知事は、あからさまに不機嫌になる。
「姫、大丈夫?」
「地球人って面白い」
おー!良かった。ドン引きされたらどうしようかとビビったぜ。姫のかわいさ健在。
「どうする?」
「健太(けんた)がいいなら」
とその時、石田三美(いしだ みつみ)が現れて、市長らが差し出している試作品を奪って回る。チビらしく動きに無駄がない。
「コホン。そういうお話なら二人のマネージャー、この石田三美を通して頂かないと!」
おい!石田三美。いつからマネージャーになった?赤眼鏡の奥の瞳を輝かすんじゃねー。どうせまた、俺を落とし入れる悪だくみでも思いついたのだろーが。
石田三美が俺の耳元でささやく。
「金のなる木よ。交渉事はこの石田三美に任せなさい。キミ達、二人だけのラブラブタイムは邪魔させないから。その代わり分け前は五分と五分よ」
ラブラブタイム!二人だけの!!まあ、それならって、てめー。足元見過ぎじゃないか。ってなんだ、その欲望むき出しの目。こぇー。怖すぎる。
「キミ達、二人でやるより10倍は稼いで見せるわ。それなら安いもんでしょ」
校内きっての策士。石田三美ならやりかねない。
「わっ。わかりました。お願いします」
逆らわんとこ!二人のプライベート中に意地悪されるよりましだ。何にしてもこいつには餌が必要だよな。
「ちょっと待って。そういう事なら私たちにも。埼玉ケーブルTVの金蔵(かねくら)です!ぜひ月野姫(つきの ひめ)に出演を」
「いやん!ケーブルなんかに先を越させないわよ。SSTテレビの高田です!」
ローカルの女子アナたちが駆け寄ってくる。
「えーっと。芸能関係は月野姫のプロデューサーである僕、山下陽(やました よう)が受けたまわります」
おいおい。女子アナ。イケメンに見惚れてんじゃねー!ってか、山下陽、お前いつから姫のプロデューサーになったんだ。姫をだしにして芸能界デビューでも企んでいるのか?
「健太。俺たちがひきつけている内に彼女を連れて逃げろ」
「陽君?」
俺は月野姫の手を取って走り出そうとした。
「バカヤロー。邪魔なんだよ。姫ちゃんの顔が見えないだろ!」
「写真、撮らせろ!」
「ファンを大切にしろ」
「そうだ、そうだ。いつまで待たせる。握手会はまだか!」
「姫!姫!姫!姫!」
集まった群衆にもみくちゃにされてしまう。いつの間にか姫は駅前のロータリーに作られた舞台に引き上げられて、カメラを携えたオタクたちにポーズをとらされている。石田三美はオッサンどもと陰でこそこそ。山下陽は女子アナに取り囲まれチヤホヤ。俺だけ一人、人垣の外にはじき出された。
あれ。主役の俺って、ぼっちじゃね!
パーン、パカパーン。パ、パ、パ。パン、パン、パンーン!
何度も、うるせぇんだよー。後輩ども!
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