4.




すると、怯えている私のすぐ横で「は?」と小さな声が聞こえた。





「誰に向かって言ってんの?」



柊は私と繋いでいる手とは反対の手で、女の子と顎をギュッと掴んだ。



一瞬にして緊張感が漂う。





「お前に言われたくねーんだよ。ブサイク勘違いクソ女が!!」







え…?





柊は他校の女の子にそう言い放ち、私の手をそのままギュッと引っ張って、駅の入り口に向かった。



怒っているのか歩くスピードが速く、私は小走りでついて行くのがやっとだった。



「ちょっと…柊!」



「何?」



柊はめちゃくちゃ不機嫌だ。



声の感じで分かる。





「いいの?あんなこと言って!」



本当は穏便に済ませたかったんじゃないの?



だから私を連れて行ったんだよね?



あんなこと言って、逆恨みとかされたらどうするの?





「いーんだよ、別に」



「でもあの子、柊のことが…」



本当に好きそうだった。



好きな人からあんなこと言われたら立ち直れないよ。



擁護するつもりはないけど、もし自分が言われたと思うとさすがに辛い。





「海莉は、あんな奴の味方すんの?」



「そう言う訳じゃないけど」



もう少しやり方があったんじゃないかなって思ったの。





「海莉は何も分かってない」



「え?」



分かってないって何…?





急にぴたっと歩くのをやめた柊にぶつかりそうになる。



「ちょっと急に止まらな…「海莉はさ、あいつにあんなこと言われてイヤなじゃかったの?」



私が喋り終わる前に、柊の言葉が被さった。



「そりゃイヤだけど、でも言われても仕方ないのかなって…」



今までだって、柊に釣り合わないとかブサイクだとか散々言われてきたから。





「本気でそう思ってんの?」



柊の目つきがさっきより鋭くなる。



てか何で私、柊に怒られてるの…?





「あの子の方が私より全然可愛いし…」



言われても仕方ないかなって。





「まじでありえないんだけど」



「…ありえないって何?」



柊は何に対して怒ってるのか、全然分からない。



疑問が募る一方の私に、思っても見ない言葉が飛び込んできた。





「海莉を傷つけるヤツは絶対許さない」





え…。





それって、私をかばってくれたってこと…?





「だって海莉をいじめていいのは、俺だけだから」





柊は最後に不敵に笑って、また歩き始める。



手は握られたまま。





なんなの…。



自分でも顔が赤くなるのが分かるくらい、今の柊の言葉にドキッとした。





分かってるんだ。



柊は口では冷たいこと言って、横柄な態度で私に接してくるけど、本当は誰よりも優しい。



柊は柊なりのやり方で私を守ってくれている。





だからこそ、期待してしまいそうな自分を抑えるのに、いつも必死なんだ。

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