反魂香の縞

@hakutaku-38

第1話

白楽天はいつも、言葉を探している。

自然の風物ふうぶつからあふで、心の琴線に触れたるものを歌に言告ことつぐ日々。

言葉をさぐり、歌うは心地良い。

己が自然に混じり、薄まり、しずかさを感じる。

も言われぬ愉悦ゆえつ

だが、閑適かんてき極致きょくちに達するには長かったと白楽天は思う。

明瞭はっきり其処そこる自然や人事。

れが己のうちに入り、内気がつる。


だが、の間に、よこしまな音が入る。

例えば、声。


そのはやし、琴線を爪引く最適なが微かに狂う。

だから白楽天は耳をみがいた。



場所がいつもわからなくなる。

つい先程まで手にしていた筆が見当たらない。

(もう少しで。書き終わるのに。)

わたしは目を閉じ、確かめるように、あなたの姿を思い描く。

(また、逢えますようにと。)

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