第34話 アリスになった切っ掛け①
12月中旬、奈緒は神心統一合気道の道場に足を運んでいた。神心統一合気道とは世界的に有名な合気道の一門であり、数々の実績を誇るエリート合気道集団である。奈緒は中学生時代に神心統一合気道の門下生であった過去がある。奈緒は今の現状を当時の範士と話す目的でやって来たのだった。
奈緒「明知範士、お久しぶりですね」
明知「久しいね奈緒ちゃん。活躍の噂は聞いておるよ」
奈緒「範士、あれから痔の調子は如何でしょうか?」
明知「うむ。ワシは切れ痔を患って居る身であるからな。痔は痛いぞ。しかし、まだ衰えはせんぞ」
奈緒「それでは、再びお手合わせ頂けるんでしょうか?」
明知「任せんか。ワシを誰だと思うとるがじゃ。合気道は無の心じゃ、この様にな、痛ッ!」
奈緒「大丈夫ですか、範士」
今日は門下生達も集まる中での範士との一騎打ちともあって奈緒も気合が入っていた。
健斗「僕は中学生の門下生で健斗と言います。頑張って、奈緒ちゃん。イボ痔のおじいちゃんに負けるな」
奈緒「大丈夫、負けないよ。後、範士は切れ痔だからね間違っちゃ駄目だよ♡」
祐二「自分は大学生の門下生で祐二という者だよ。応援してるぞ。奈緒ちゃん範士はああ見えて国宝級の強さを誇るから負けるなよ」
奈緒「分かった」
門下生が見守る中で、奈緒と明知は中央に立ち1礼を交わした。
奈緒「それでは参ります、範士」
明知「何時でも来なさい」
始まった途端、張りつめた緊張感が辺りを支配した。
健斗「どちらから仕掛けるんだ?」
祐二「こういう場合は先に動く方が負ける事が多い。何せ達人同士の勝負は一瞬で終わるからな」
奈緒(明知範士は合気を極めし者だ。生半可な技は通用しない。ここは一つ大技を仕掛けてみるか)
明知(以前とは何かが違うな、何と言うか野生の闘争心が有った頃はもっと1手が読みやすかったはずだが。後、お尻痛ッ!)
健斗「動きませんね2人とも」
祐二「動けないんだ」
奈緒(範士の得意技、天地落としを誘発させる為に此処は縮地を初披露だ)
明知(何で来る、合気に対して空手か?他の武術か?)
奈緒(行くぞ縮地!!)
明知(構えろ来る!!)
奈緒は雷弾キックを応用した高速移動技縮地で距離を縮めた。それに対して明知は天地の落としの構えを取った。
奈緒(このまま行くぞ。秘儀、極撃!!)
明知(何だと。このスピード只事ではない。技を掛けれない)
___バシィ~ン
健斗「うぉぉぉ!!明知範士が空を飛んだ」
祐二「2メートルは上空に飛んだぞ」
___ドォォォォォン
明知(何とか受け身だけは取れたが)
奈緒(決まった♡)
この勝負は何と奈緒の勝利になったのだった。決まった技は低空姿勢での奈緒の得意な極撃と言う技である。明知が天地落としの体勢から腕を掴もうとした瞬間、体勢を低くする事により合気道の入り身投げの体勢になり明知を吹き飛ばす事が出来たのだった。
明知「いや~ワシは長年範士をやっとるがのう、こんなに早い技を見たことは無い。恐れ入ったよ、奈緒ちゃん。ワシの負けじゃ」
奈緒「いやいや、そんな事より範士、痔は大丈夫ですか?」
明知「あっ、痛たたた」
門下生達「わははは」
明知「笑い事ではないぞ。でもまぁしかし、奈緒ちゃん君には範士の位を与えようかの~」
奈緒「有難う御座います」
その後、奈緒は明知範士と2人でお茶を飲みながら話し始めた。
奈緒「明知範士と知り合ってもう5年近くなりますか?」
明知「そうじゃな。確かあの時、奈緒ちゃんは自分の中学の先生にレイプをされそうになって未遂じゃったが心に傷を負っていたんじゃったなぁ~」
奈緒「はい。範士に初めて会った時、余りに狂気じみた門下生だったから覚えておいでですよね」
明知「うむ。良く覚えているよ。こんなに必死になって練習しているが上達しないと言って、いきなり合気道の極意を聞きに来たんじゃったのう。必死過ぎて力を抜くという所謂、脱力が出来ない状態じゃった」
奈緒「なので必死な訳を話して、範士が行っている脱力の為の滝修行に同行させて貰いましたよね」
明知「滝修行はさせるつもりじゃ無かったんじゃが、どうしてもと言って聞かんから仕方なく滝に打たせたら、まったく今度は何時間も動こうとせんで困ったもんじゃった」
奈緒「結局、3時間ぐらい滝に打たれてました。でもある時から徐々に不思議な感覚に囚われていたんです。自然と体が軽くなって行く感覚を掴んでから、何故か気持ちが前向きになり出来る出来ると呟いた時、真の脱力に目覚めたんです」
明知「それからの奈緒ちゃんは強くなった。脱力から技をどんどん習得していったのう」
奈緒「それから1年後、その教師と再開してまた襲われそうになった時に、先程の範士に勝った時の技を使ったんです。極撃と言いまして、私の持つ最高に強い技の1つです」
明知「そうじゃったか。あれは奈緒ちゃん程の脱力を持ってないと使えん技じゃな。良い技じゃ」
奈緒「今日はお手合わせ有難う御座いました。また私も今後アイドルとして東京で活躍したいと思っています。是非応援して下さいね」
明知「分かっておるぞ。ただ奈緒ちゃんの写真集をみたら無心になれないから困り物じゃ」
奈緒「ふふふ、すいません範士。鼻血の方が…」
明知「おおこれはいかんのう、すまんなぁ~」
その後も、奈緒は範士と昔話に明け暮れるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます