第3話 山下り1

山を登り初めて数分だが、現在俺は家に帰っている。

もう少し詳細に言うと家の冷蔵庫から保存食のような消費期限の比較的長いものを適当に見繕っている。

何故って?

決まってるじゃん~

「腹減ると思ったら飯抜きで食料品全く所持せずに出てきちゃったんだよな~」

って事だ。

大事な食事を取らずに山を降りるとか無理!

不可能、では無いんだけど……

いや、精神的に無理だから不可能!

飯抜きで1週間とか魔術で水は出すにしても水飲んだだけじゃ腹は膨れないんだよ。

前に水だけ飲んでれば人間1ヶ月は生きれるって聞いたけどさ~

それって理論上じゃん?

俺の場合はさ?

感情論なの。

精神論なの!

まあ感情論も精神論もこんな場面で使う言葉じゃない気がしないでも無いんだが……

過去振り返らない男はカッコいいってジジイも言ってたしな!

もしミスった使い方してんなら忘れてくれ。

「うん、これだけ有れば取り合えず腹は空かないだろ……」

っと、バカ考えてる間に冷蔵庫の保存食は大半が鞄に収まってる。

この鞄さ、

ジジイの特製なんだよな~

その名も《多重次元バック》!

バックの内部空間を増長させて内部の大きさを大きくしてる魔術製の道具だ。

何かさ、今の言いようもない語呂の違和感って分かるかな?

気持ち悪い表記無かった?

まあ良いけど。

そんな訳で鞄の内部が大きいんだよな。

因みに俺の鞄は一辺500メートルの四角い箱状になってる。

だから収納可能な容量は普通よりか大きいんじゃないかな?って感じのバックになってる。

まあ機能性は微妙だけど。

だって内部の重量が軽減されたりしないもん。

おかげで膨大な本と保存食の重みが冗談になってない。

うん、軽々とトンの単位越えてそうな重量なんだよ……

ちょいキツい。

まあ?

常日頃から筋肉向上主義と魔術向上主義を振りかざしてたジジイの影響か過去の糞生活が原因か知らんのだけど、俺の筋力は割かし高い。

まあ平均値知らんから微妙に上下の基準が曖昧だったりするが……

まあ、ご愛嬌って事で?

あ、因みにご愛嬌の意味は聞かんでくれ!

説明下手とか以前に浅~い所の意味しか知らんのだよ俺氏。

「ボチボチ出発するか」

そんなこんなで鞄に積めるだけの単純作業を終えた俺は家を出る。

長居したらダメな気しかしねぇもんな。

そんじゃ……

「改めて、旅立つは俺! まあ?第一目標はダンジョン適当に探して~ちょっとずつ、ジジイに追い付こうかな~?とか考えてるは。あ、具体的じゃないとか言うなよ?その辺は後々考えるって決めてんだから! それじゃ~良い夢見ろよジジイ!」

粗末な木の根本を見つめて言う。

嫌い嫌いも好きの内ってジジイは言ってたが……

今更、分かったところでな~

無意味じゃ無いにしても意味的に薄そうって感じは否めない。

まあ、それで良いんだじゃないかな~?っとか思ったりもするけど。

「うし、未練も何も消え去ったし! 早いとこ出発するかな!」

俺は一頻りつくと家の敷居に背を向けて、山道を下り始めた。



山下りってのは、足場が綺麗なら良いんだよ?

でもさ、連日雨で地面グジョグジョのベトベトドロドロな訳でさ?

まあ~足場が悪いんよ。

そりゃもう靴が沈む位に。

だからさ?

体力の消耗が尋常じゃない。

体の重みで既に嵌まりそうな泥濘だよ?

更にさ、推定値トン越えの鞄担いで下山とか……

拷問ですか?って感覚だよ、マジで。

「魔術使うかな~?水気だけでも消し去りたい…!」

と、そんな感情が少しずつ出てきている。

そんな感じで、まあ憂鬱に歩いてるんだけどさ~

「こりゃ1週間じゃ済まんかもな~」

そんな風に考えてしまう位には気が滅入ってる。

まあ、かと言って今更家に帰宅とか冗談じゃないから進むんだけど。

とは言え暗くなってきたしソロソロ野宿の準備でも開始した方が良いのかな?

そこら辺の案配が分からないんだが?

大丈夫なのかな?

日の射し方的に午後の5~6時は行ってそうだけど?

実に暗い。

もう周りが見えないって言っても良いんじゃないか?って位に見えない。

う~ん……

「準備始めるか、悩む位なら」

って結果的には結論出した。

そんな訳で先ずは地面の湿気を寝袋の範囲より2周り大きい位の範囲を乾かす事にした。

「うん、そうと決まれば早速……」

俺はジジイの杖を強く握って地面を軽く叩いた。

同時に杖起点で魔方陣を構築する。

魔術の基礎は魔方陣と詠唱文句だ。

って言うのも魔術には二種類有って、魔方陣を構築して発動する場合と言霊を放ち現象を再現する場合なんだが……

ジジイは詠唱が恥ずかしい、とかって理由から魔方陣での発動を主軸にしてた。

勿論だが教えられた俺もエスカレーター式にって言うのかな?

まあ、そんな感じで魔方陣の方を教えられた。

んで、説明なんだが魔方陣の場合は1つの現象を表す場合に魔方陣を作る。

簡単に分かりやすく言うなら~

『魔方陣を構築する呪語って単語の羅列に角を持つ図形を組み込んだ物が魔方陣、呪語の一つ一つには決められた意味が存在する。その単語を文章として空間に書き連ねた物が魔方陣で、魔方陣は起点となる何かを囲むように展開される。俺の場合で言うとジジイの杖だな。そんで魔方陣の意味が現実に及ぼす影響の大きさに応じて体内の魔力、と呼ばれる半永久的に体内で生成されるらしい物質が消費される。発動に必要な魔力が体内に無い場合は規模が縮小されるか、最悪の場合は発動しない。更に言うと体を巡る魔力の量が全体の15%に突入した時点で体は正常に機能しなくなる。更に5%を切ると死ぬ可能性が出てくるらしい。そんな魔力の消費によって起こされる魔術は、正に魔力次第で何でも出来る物である』

って感じだ。

途中で話が脱線してる気もするが……

まあ気にしない。

気にしなければ俺の勝ちだ。

あ、何にだよっとか言わないでね?

俺も分からないから。

「今回は久々に少し凝ってみるかな…」

魔術ってのは呪語の詳細が如何に深いか、詳しいかで消費魔力量を減らせる。

戦闘の時とかは大雑把な魔方陣で発動するけど今回みたいに時間が有る場合なら態々詳しく細部まで作るのが主流だ。

魔力は無限に生成されるけど、その時間に持ってる魔力は有限だからさ。

個人差もあるんだよ、魔力の生成量には。

それに作り込まれた魔方陣は綺麗だからさ。

制作者の腕にも依るんだが……

凄い人は魔方陣の展覧会とかで生計を立ててる人も、まあ其なりに居るらしい。

そうゆう人の魔方陣は実用性より芸術性が試されるらしいけど。

んで、今回の魔方陣だが『半径1.5メートルの円周内部に存在する表面の水分は寸刻の内に霧散する』って感じにしてみた。

呪語は単語だからな。

呪語を其々で区切ると『半径/1.5/メートル/の/円周/内部/に/存在/する/表面/の/水分/は/寸刻/の/内/に/霧散/する』って感じの読みづらい文章になる。

だから文法表記って言う表現方法もある。

と、言っても俺は使わないけどな。

そんな訳でジジイの杖を巻くように構築されら魔方陣を発動させるとしよう。

早く飯食いたいし。

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