第2話 側室の一人や、二人は許してくれるそうです……
俺が高岡に困っていると、俺の前に美少女が現れる。
つぶらな大きな瞳は可愛らしくもありながら、強い意志を覗かせる光を放つ。整った唇はまるで、意地悪な小悪魔! 瑞々しくも柔らかそうな、その妖艶さは、つい触れたくなってしまうほど。それでいて簡単には男を近づけない気品が漂う。
サラサラの真っ直ぐ長い髪を、ゆらし、スカートからは、すらりと長い足が伸びている。
そう! 俺の恋人である桐生のえるちゃんなのだ!
俺は彼女なんて安っぽい言葉は使わない。『恋人』なのだ。
のえるちゃんの容姿をながながと賛美したが、決してのろけている訳ではない。のえるちゃんは、他者も認める美少女なのだ! まいったか! ……気を悪くした方がいたら、ここで謝っておこう。
そんな、のえるちゃんが、俺に助け舟を出してくれる。
「おはよう。椎名君。教室に入らないの?」
「いや、それが、その……」
本当は高岡なんて、どうでもいいのだが、クラスの人気者である俺は、どう振る舞ったものかと、口籠ってしまう。
「行こっ」
のえるちゃんが、その細く柔らかい手で、俺の手を強くギュッと握る。
その『ギュッ』には、俺への愛、そして焼きもちが込められている……。妄想ではない! 2つ上の姉がいるために、少女漫画はよく読んだが、決して妄想ではない!
のえるちゃんが、俺の手を握り、俺を教室へとひっぱっていく。
クラス上位の美少女が俺の手を引いていくんだ! まいったか! すまない……もう一度、気を悪くした方に向けて謝っておこう。
でも、にやけちゃうな。
そんな俺の背後に、大きな声が覆いかぶさる。
「そのオナゴはなんにこざいますか! 目の前に、ワタクシ、藤がいるにもかかわらず」
なんなの!? この今の、のえるちゃんと俺の行動を見て気付かないの!? 更に高岡の声がかぶさる。
「
大きな声に何故か俺はつい振り向いてしまう。
そして、高岡は自信満々でとんでもないことを言う。
「藤は、側室の一人や二人許さぬ、小さきオナゴではありませぬ」
満面の笑みを向けてくる。当然、優しい美少女のえるちゃんも、ギョッとしている。もちろん俺は硬直してしまう。えーっと、うーんっと、こういう時、どうやったらカッコイイの? 所詮、偽りの仮面だからどうしたら、いいか分からない!
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