タンポポの咲く頃に(番外編)

 (またやってしまいました……。今回は番外編ですから、文字カウント判定は緩めです)



 夢か現か、嘘か真か。覚えているようで覚えていないことがある。というのも、私はほんの小さい頃に誘拐されかけたことがあるのだ。今でもその時の場所も、自分の服装も、果ては季節まではっきりと思い出せる。両親には当初、叱られると思ったので明かしてはいなかったが、中学の時に一応は明かした(知ってもらいたかったから)。

 母の実家は田舎の中でも比較的便利な場所で、周囲は田んぼだらけといえどスーパーマーケットやら服屋が普通にあった(私が幼い頃は典型的?な田舎で、大きなショッピングモールはごく最近できたものだ)公園も覚えている限りでは二つあり、そのうち一つは事件(未遂。でなければ私は今ここにいない)現場の駐車場にほど近い、菓子屋の近くにあった(はず)。

 あの時は確か春で、赤いウインドブレーカーの私はタンポポを摘んで遊んでいた。その時は普通に白い花のタンポポが混じっていたから、それが欲しくて母親から離れたのだと思う。(小さな足にしては)遠くまで行った時、私は気づいたら見知らぬ大人の車に乗せられかけていた(車の色は白であるが、それ以外実はその時の状況も含めて何一つとして覚えていない)。咄嗟にわたしは暴れて逃げたが、怖さのあまり私はこのことを長いこと両親に明かせずにいた(叱られるのが怖いので)。ただ、子どもが見る夢にしてはかなりリアルではあった。

 この事件が現実であるという証拠はほとんどないが、たった一つだけある。それは、数ヶ月から一年後のこと。私は誰もいない部屋で留守番をしていたのだが、その時見ていたテレビは子ども向けの防犯番組だったことをよく覚えている。その際、「誘拐されそうになったら」というのがあったのだが、その中に「暴れる」というのがあった。その時の私は三択クイズと勘違いしていたので、この方法は間違っていたのかと思っていたが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る