三度目の人生
紫乃
第1話 はじまり
私は死んでいた。
「死んで生きよ」という言葉の真意を悟るまで、私は人間として生きていなかった。この言葉は私が師匠の弟子から卒業する際、もらったものだった。「死ぬ気で生きよ」ではなく、死んで生きよ。若い頃の私には全く理解ができなかった。そもそも死の後に生がやって来ることすら意味が分からなかった。
死と生を別物に捉えている人は多いだろう。生のピリオド、それが生だと思っていては、いつまで経っても本当の意味で生きることはできない。なぜなら、生死は表裏一体で、生があるからこそ死があり、死があるからこそ生があるからだ。どちらも共に考えなくてはならない。また、必ずしも生命の始まりが生を表すわけでもなければ、生命の終わりが死を表すわけでもない。人間らしい生死があり、それを行わなければ細胞が生きているだけで、人間として生死しているわけではないのだ。かく言う私も昔は死と生は反対のものだと信じていた。しかし、少し歳を重ねた今ならわかる。
こうして、私が筆をとっているのは、少しでも師匠の言葉を世に知らしめたいと考えたからだ。どこから話を始めるか迷ったが、やはり私の生い立ちから話すのが最もわかりやすいだろう。私はセントリア帝国暦一六◯年にこの世に生を受けた。ここから、全てが始まった。
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