ただの紐
夫ツバメは素直にそれを下に落とした。隣の妻ツバメから強めに
「――お、それ
聞けば、暖房として
どこでそんな物見つけたのかと聞くと、彼らは足抜けする時に
かくしてタキシードはエイジャのパンツ(?)を取り返した。
タキシードは不思議と夫ツバメを責める気にはならなかった。それは、長時間にわたった
普段は冷静な探偵タキシード、熱い
「ほんじゃまたな、師匠。アディオス」
タキシードは、そんな普段なら絶対言わない臭い捨て台詞を残し、パンツを咥えて闇夜に飛び立った。そんなおかしなテンションになっていた。
「帰ったで~」
タキシードが事務所に戻ると、エイジャがソファーに寝転んで待っていた。両脚を上に突き出して空気を漕ぐという器用なエクササイズをしていた。おかげでスカートがめくれて大変な感じになっている。
「おかえり~、兄ぃどうだった?」
ポトリと、タキシードが咥えていたエイジャのパンツをローテーブルの上に落とし、忌々しそうに
「――お前……これ、もうただの
それは紐にしか見えなかった。黒い紐だ。
「ふふふ。それ、最近の流行りなんだって。ライチに教えてもらったの、かわいいでしょ?」
エイジャがそう言ってパンツを持ち上げて広げてみせる。しかしそれでもタキシードには紐にしか見えなかった。彼女とは衣服の定義に関して小一時間議論したい。パンツを盗まれたから
――
「今日のも可愛いんだよ! ……見る?」
「見るかっ! はぁぁぁ……ワシはただの紐のために、あんなにがんばったんか……」
タキシードは深々と嘆息を吐き出して天井を仰いだ。夫ツバメと大空の覇を競った友情の記憶が、
「――はぁ、もう寝よ。エイジャ、ワシ疲れたから、なんかテイクアウトしてきて」
そう言ったタキシードを、エイジャは問答無用で抱き抱えて玄関に向かった。
「――今日は兄ぃが好きな
「……はい」
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