幕間1『7月2日』
今日も、いつも通りの一日だった。
この書き出しから日記を始めることにも、いつの間にか私は慣れてしまっていたのだと思う。書き始めの頃は楽しかった日記の執筆も、気づけば惰性になっている。
──日記帳を閉じて、それから私は窓を開くと空を見た。
書くことなんて、何もない。
私の人生に特筆すべきことなんて何もない。
それでも、日記を書くことだけは、私はやめなかったのである。
いつかあの日記に、いつかみたいに書くことができる。たとえほんのわずかの間でも、毎日が楽しかったあの頃に戻れるんじゃないか。──なんちゃって。
そんな自分の諦めの悪さを、今日くらいは褒めてあげたい気分になる。
飽きっぽいくせに諦めは悪い、自分の性格を。
空に、流れ星が落ちていったのだ。
そう表現するのが、たぶん、いちばん近いんだって思う。
ホントウなら「昇っていった」って書くのが正しいんだろうし、実際はそうなんだろうけど、少なくとも私にとって流れ星とは落ちるものだ。
空から地面へ、涙みたいに。
あの光景を、いったい何人が見たんだろう。わからないけど、じゃあ丘に行こうなんて考えたのは、どうやら私だけみたいで。
七河公園はいつも通り、誰もいない静かなところだった。
いつも持ち歩いている大切なお守りが、光り始めたのはそのときで。
星の涙。願いを叶える魔法の石。いつか拾ったそれを、ずっと慰めみたいに持ち歩いていたことが幸運だったのだ。きっと魔法が、私も使えるようになったんだと確信した。
だから願ったのだ。
話には、ずっと聞いていたのだから。
お願いします。
お願いします。
どうか、失われた大事な時間を、返してもらうことはできませんか──。
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