第11話009「アレイスター・Mt・クロムウェル」
「そこまでだ、クライブ・W・フォートライト」
「……何者だ、あんた?」
声をかけ止めに入ったのは四十代くらいの体格のいい男性だった。
「ちょっ?! ク、クライブ君っ! あなた、自分の住む村の領主様の顔もわからないのっ?!」
「え? サラ先生っ!? なんで先生がここにっ?!」
「そ、それは……」
「そんな話はどうでもいいっ!」
そう言うと、おっさんは俺のほうにズンズンと近づいてくる。そんなおっさんに制御不能になった俺が、
「勝手にやって来て…………偉そうにしてんじゃねーーっ!!」
カッ!
おっさんに対して有無を言わさず睨みつけるように『威圧』をかける。しかし……、
「ほう? やるじゃないか。ここまでの『威圧』を出せるか……………逸材だな」
ニッ!
パシン……ッ!
おっさんがニッと笑うとその瞬間、『威圧』が弾かれた。そして、その満面の笑顔でさらにズンズン迫ってくる。
「ちぃっ?! な、何なんだよ…………何だよ、お前はぁぁーーーーっ!!」
今度は、さっきまで蓄えていた右手の『青の炎の塊』をそのおっさんにぶっ放す。しかし、
「おらぁぁぁぁあぁぁあぁ~~~~~~っ!!!!!!」
ドゴォォォォーーーーン!!!!
そのおっさんはなんとその…………直径三メートルにもなる『青の炎の塊』でさえも片手で払いのけた。しかも、その払いのけた手からは、
「?! あ、青の炎……?」
そう、このおっさんも俺と同じ『青の炎』を纏っていた。
「驚いたか? 驚くよな~……まあ、とりあえず、あいさつは『ちゃんと』しないとな♪」
「な、何……っ!?」
そう言うと、おっさんは一瞬で右手の平に俺がさっき作った大きさの『青の炎の塊』を出す。しかも、その塊は、俺が作ったものよりも明らかに…………『濃度』が高かった。
「俺は……この村を管理しているクロムウェル領の領主で……」
おっさんの手の平の『青の炎の塊』はそこから更に膨れ上がっていく。
「『蒼炎の悪魔持ち』の一人、つまり…………お前の大先輩だ、この野郎ーーーーっ!!!」
おっさんは『あいさつ』を言い切ると、その六メートルにも膨らんだ巨大な『青の炎の塊』を俺に放った。
「お、おおお、おおおおらぁぁぁぁ~~~~っ!!!!!!」
バリバリバリバリ……!!!!!
その巨大な塊が俺にぶつかった瞬間、俺の体に電流のような火傷のような激しい熱と震動が広がる。すると、さっきまで俺を侵食していた『怒り』や『残虐性』『全能感』が消えていき、それと同時におっさんの放った巨大な青の炎の塊も消えていった。
「あ……も、元に戻っ…………あれ?」
おっさんの攻撃による負傷はなかったのだが、何故か俺の体はもの凄く重くなり、その重くなった体を俺は支えることができず、そのまま地面に倒れこむ。
「ふう……何とかギリギリ間に合ったようだな……危なかった」
倒れた俺は、次に、もの凄い眠気に襲われ始める。
「マ、マジ……何者だよ、あんた……」
「今はとりあえず寝ていろ…………後輩」
俺は、そのおっさんの言葉を聞いた後、激しい眠気にそのまま身を委ねた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「何なんだよ、こいつ。ちょっと頭が良いからって俺らのこと見下しやがって……」
「ホントよね。一体、何様かしら?」
「そ、そんな……ぼ、僕は見下してなんて……」
目の前には小六の一学期の時の教室が映し出されていた。
「お前みたいな奴……いるだけで迷惑なんだよ」
「お願いだから、私たちの前からいなくなってくれる? 一刻も早く!」
「良い子ぶりやがって!? お前見てるとムカツクんだよ!」
「もう、あんた死ねば? そのほうが世の為、人の為ってもんよ」
「そ、そんな……」
「「「「死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね!」」」」
「や、やめてよー……」
「「「「死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね!」」」」
「や、やめてよ! お願いだから……お願いだから、もう、やめて、やめてよーーーーーー!!!!」
「「「「死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね!」」」」
「「「「死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね!」」」」
「「「「死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね!」」」」
「「「「死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね!」」」」
「「「「死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね! 死ーね!」」」」
「うぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあ~~~~っ!!!!!」
・
・
・
・
「ああああああああああああああーーーーーーーっ!!!!!」
「クライブ君っ! クライブ君っ!!」
「……はっ!!」
気が付くとそこは知らない部屋だった。
周囲を見渡すとその部屋はとても広く、カーペットも豪華なものであることがわかる。また、今自分が寝ているベッドもフカフカな上質なベッドであることから、自分の家ではないということはすぐにわかった。しかも、今、ベッドの横で声をかけた人物は、
「大丈夫、クライブ君? 随分、うなされてたみたいだったけど……」
「サ、サラ……先生……」
そう……学校の担任、サラ・F・ゴードン先生だった。
「サラ先生……お、俺は、どのくらい寝て……」
「丸一日よ。夕べ、君はここに運んでからずっと寝てて、今は翌日のお昼よ」
「そ、そんなに……」
ちなみに、両親にはサラ先生が『ここで泊まる』ことを連絡してくれたらしい。
「それにしても……クライブ君。随分、夢でうなされていたみたいだったけど……大丈夫?」
「は、はい……大丈夫です。そ、それにしてもここって先生の家ですか?」
「いいえ、違います。ここは…………クロムウェル領領主アレイスター・Mt・クロムウェル様のお屋敷です」
「りょ、領主様……っ?! お、お屋敷ぃぃーーーー!?」
「ちなみに私はここの主……領主であるアレイスター様の秘書をやっています」
「ひ、秘書っ?! え? 学校の先生じゃ……?」
「フフ……さ、クライブ君! 領主様がお部屋で待ってるわ、いきましょう」
そう言うと、サラ先生は俺をベッドから起こし、俺の手を引っ張りながら領主様がいる部屋へと案内された。
一体……何が、どうなっているんだ?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「よぉー! 目が覚めたか、後輩!」
「うぁ?! ど、どうも……はじめ……まして……」
部屋に入ってすぐのところにまさか領主様が立っているとは知らず、俺はビックリして一瞬、取り乱したがすぐに元に戻り挨拶をする。
「な~んだ……。ビックリしておどおどする姿をみたかったのにすぐに冷静に戻るとか…………つまんない奴めっ!」
どうやら、アレイスターはクライブを驚かせようと扉の目の前に立って待っていたようだが、俺がアレイスターの期待どおりのリアクションを取らなかったのを見て俺にいわれのない非難の言葉を浴びせる。すると、
「アレイスター様……」
スッ…………ドゴォォォンッ!
「おごぉぉぉぉあああーーーーっ!!!」
サラ先生が目にも止まらぬ速さでアレイスターの懐に入ったと同時にアレイスターのお腹に肘打ちを食らわす。
「……お戯れが過ぎますよ?」
「は、はははいーー!! すみませんでしたーーーーっ!!!」
アレイスターはサラ先生の肘打ちと冷気を帯びた目で見下されていた。そして、そんなアレイスターは涙目で謝りつつも、何だか…………嬉しそうだった。
「冗談はさておき……」
そう言うと、アレイスターは部屋にあるソファーに腰かけると俺にも座るよう促し、俺は指示されたアレイスターと向かい合わせとなるソファーに腰をかける。
「君は……クライブ・W・フォートライト君……だったかな?」
「は、はい」
「俺の名は『アレイスター・Mt・クロムウェル』……お前のアスティカ村が属するこのクロムウェル領の領主をしている者だ。よろしくな」
「よ、よろしくお願い致します……」
本当に、この人が……このクロムウェル領の領主なんだ。
さっきはおちゃらけていたので威厳など微塵も感じなかったが、今は言葉や纏う空気が上に立つ者のソレを存分に醸し出している。
「さて……お前はさっきまで森で戦っていたことを覚えているかい?」
「は、はい、一応……で、でも、最後のあたりは記憶が曖昧で……」
「……そうか」
俺が質問に答えるとアレイスターは少し、ホッと安堵の息を吐く。
「まあ、まだ『蒼炎の悪魔』が初めて顕現しただけだしな。すぐに乗っ取られることはないだろう」
「乗っ取られる? どういうことですか?」
「昨日のアレだよ………………青の炎」
「!?」
そうだ!
昨日、チンピラが放った火属性の魔法をまともに食らったあの時だ!
あの時、体から勝手にあの『青い炎』が出てきて火属性の魔法から身を守ってくれた……守ってくれたけど……その後から、記憶が朧気で、何か、体の中で……何というか……『強い怒り』のようなものがグルグルしていたのを思い出す。
「は、はい。青の炎が出たのは覚えています。ですが、その後の記憶がほとんど覚えていません。覚えているのは『強い怒り』みたいなものでしょうか……」
「そうだ。その『強い怒り』の感情が蒼炎の悪魔の力であり、その力は今後もお前を飲み込み支配しようとするだろう……」
「ええっ?! そ、そんな……夢では長髪男は『お前を支配するようなことしてもつまらん』て言ってたのに……」
「ほぅ? そんなことを言ってたのか? ということは、単純にお前が騙されただけだろうな」
「えええ……」
あの
「とにかく、今後もこの『蒼炎の悪魔』の力である『青の炎』は使っていく。なので、その力に飲み込まれないよう、今後はお前に稽古をつけるから心配はいらんぞ!」
「え? 稽古?」
「ハッハッハ! まあよい! その話は後だ。それよりも……」
直後、アレイスターの顔が突然引き締まり、何かを見極めようとするような表情で俺に質問を切り出す。
「お前は……何者だ?」
「えっ……?」
アレイスターの探るような鋭い視線が俺を完全に捉えていた。
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