第二章 統括都市・千代田
第10話 千代田の街
世界の秩序とは何か。
ふとした時、手持ち無沙汰な時間、考える命題。
高度な繁栄を横目に、自動電車に揺られながら俺はおもう。
少なくとも俺が子どものころは、秩序があった。
国があり、都市があり、会社があり。
上から順に数えられる世界があった、束ねられる世界の単位があった。
もちろん、今でもある。
俺がいるのは日本だし、東京だ。
でも、それらは半ば形骸化していて、もう本当の意味での国家の自治なんて存在していないのだと思う。
国家に帰属する意識はもはやない。
これはある種、秩序の崩壊なのではなかろうか。
力をもつ企業たちが、意味のなくなった
健全がどんなものかは知らない。
だが、少なくともこの世界はーーまともではないのだろう。
「アキラさん? アキラさん? 着きましたよ、チュウダ駅です」
「あぁ、もう着いたか」
摩天楼ひしめく遠方から目を離し、電車をおりる。
ホームに降りたち、人波に揉まれながら、広大な駅をスマホ片手に踏破。東京都でも有数の街と成長をとげた千代田の街へと足を踏みいれた。
「2040年以来、グンホーが大きな影響力を確立した都市ですよね。私、来るのはじめてです」
「俺もだ。ここではグンホーの目がどこでも届く。住みやすさ、幸福度、交通の利便性、多くの項目で高い数字をとり、『都市ランク』上位に位置する優良街だ。……だが、気をつけろよ、スズ。吉祥寺ほど穏やかな街じゃないと聞く、すこしネットを探れば悪い噂もあとを耐えない。特に近頃は『黒いワニ』とかいう、人を襲う生物の目撃情報があるくらいだしな」
「ワニですか? それはまたずいぶんと物騒……というかどこから来たんですかね」
「わからない。噂なんてのは
夜の香りが立ち込めはじめる大通りをまたぎ、駅前のカフェでコーヒーをテイクアウト。
人々の往来にそって、散策しながら街の中枢へとよっていく。
遠くに見えてきたるは超高層ビル群。
電車の窓よりうかがえた、摩天楼の中央街だ。
「そのお方、少しいいですかな?」
いざ、グンホー本社へ向かおう、そう思った矢先、背後から声をかけられる。
改まった様子の声に、本能的に背筋をただし振りむくと、制服姿の2人組の男がいた。
警察に代わって都市の治安維持をおこう、都市自治隊だ。
彼らに声をかけられるような事をした覚えが、これっぽっちもないのだが。
「あなた、重課金アギトさん、ですか?」
「はい、そうですが?」
確信のないような自治官の質問を肯定すると、男は目を見張り、手首に装着されたタブレットを操作、意を決したように口をひらく。
「容疑者を発見しました。現在地に応援をお願いします」
自治官の顔つきが穏やかではなくなった。
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