探し物(2)

どうしようか。三人は顔を見合わせた。


「追い払ったのでは、他の変化へんげたちに気付かれてしまいますね。消しましょう」


「おい環、ここでやるのか?ギャラリー多いぞ」


「やりますよ。私は手妻師ですからね」


「ああ、あれをやるのか。わかった」


「うまく合わせてくださいね。あ、ちょうどお話も終ったようですね」


 環は大きめに声をかけながら集団に近づいた。


「これは良いお話を聞かせていただきました」


 ガマたちは延寿が抱き上げている子に手を出そうと背伸びしている。狙い損ねた獲物に執着しているようだ。


(少しこいつらを抑えなきゃならんな)延寿は子どもを下ろして、懐から細くて長い、小さな金槌を出した。


「何?それ」


「おじさんの仕事道具さ。ちょっとこれで遊ぶのさ」


金槌は柄まで金属でできていて、金槌で無い側は輪になっている。延寿は右手の指をひっかけてクルクル回した。


「はい、みんなもっと集まって。では行きますよ。」環はなるべくみんなが離れないように、わざと低い位置で指輪を転がして見せた。みんな覗き込むようにして集まってくる。ガマの注意も指輪に逸れた。今度は指輪を取ろうと狙っている。動くものに反応するカエルの習性か。いや、気付かれたのかもしれない。


環が指輪を空中に投るたびにガマが宙に飛び舌を伸ばす。延寿はその舌を回している金槌で打ち砕いて行く。そう、文字通り打ち砕く。柔らかいはずの舌が砕けていくのだ。そして左手でガマを払って飛ばす。


 ガマたちはみな、指輪を奪うことだけに意識が向かった。


 環は指輪を回転させて宙に舞い上げる。


「バイラ!」


 指輪に刻まれた呪文が発動し、指輪が光り始める。光が回る。ガマたちは状況のヤバさに気がついたようだ。口をパクパクさせている。


「ビョワッ」


 まだ舌の残っていたガマが指輪を取ろうと舌を伸ばしてきた。そのうちの一匹、これは環の死角からだ。延寿はもう一匹の舌を砕いている。これは間に合わない。

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