第30話 でかいとりでしゅ
起きたらエンペラーギャーギャー鳥五羽と戦闘中だった。それにしてもデカいな!
普通のギャーギャー鳥はダチョウやエミューくらいの大きさなんだけれど、エンペラーはその三倍くらいはある。見た目はカラスで色はこげ茶色だ。琥珀色の瞳と黒いクチバシが特徴かも。
そんなデカい鳥をいとも簡単に狩っている大人三人は、今晩のおかずにしようと張り切っている。
……この鳥で唐揚げにしたら美味しそう。あとでテトさんに提案してみよう。
バトラーさんが解体し終えたので、また移動。内臓も全部しまっていた。
実は、内臓はどうなのか調べてみたかったんだよね。ニワトリと同じように内臓が食べられるのであれば、焼き鳥も食べてみたいと思ったわけで。
なので、できるだけ内臓を取っといてくれるよう、お願いした。
羽は布団やクッションの中身にもなるし、コートにもできるとキャシーさんが教えてくれた。作るのが楽しみだと、テンションが上がっていたけどね!
処理が終わったので、おはようのご挨拶。それが終わったら移動を開始。
「いまはどのあたりでしゅか?」
「やっと六分の一といったあたりだな。隣国へ向かうだけならば半分も来たが……」
「これから奴らに会わないといけませんしねぇ……」
「素通りしたら、何を言われるかわかったもんじゃないものね」
「しょうなんれしゅね」
この山にはそんな人がいるのか。きっと
どんな人なのかな~。楽しみ~♪
そんなことを考えていたら、先頭を歩いていたバトラーさんが止まる。気配察知には何も引っ掛かっていないんだけれど、どうしたんだろう?
首を傾げていたら、バトラーさんに呼ばれたので近づく。
「ステラ、新たな薬草だ。鑑定するといい」
「あい!」
新たな薬草と聞いてテンションが上がる。これまでは死の森と同じものしかなかったんだよね。なので、見たことがないものを鑑定するのは嬉しい。
これだと言われて間近で観察してみる。見た目はヒガンバナ。しかも、赤と白、黄色と緑、黒がある。
それぞれ鑑定してみると、
どの色も毒持ちなのは前世と同じだけれど、別の薬草と混ぜ合わせることで、状態異常を治す
とはいえ、そのほとんどが冒険者が使うものになるという。
効能としては、赤が物理攻撃力アップとダウン、猛毒を治す
白が魔法攻撃力アップとダウン、石化を治す
黄色が物理防御力アップとダウン、魅了を治す
緑が魔法防御力アップとダウン、恐慌を治す
黒が物理と魔法両方の攻撃力と防御力アップと、死亡と瀕死以外の状態異常を治す万能薬という
あと、五色全ての曼珠沙華は、エリクサーやエリキシル、ソーマやアムリタという、傷や骨折を完全に治したり、体力や魔力を満タンにできる最上級の
すげえな、曼珠沙華。
根っこの部分は毒性が強すぎて使い道がないので、地面から茎を五センチほど残して採取。この時、切り口には絶対に触るなと言われた。液体自体が毒で、触れるとかぶれるから。
それを聞いて、恐る恐るナイフで切ったよ……。
「バトラーしゃん、こりぇしぇんようのはしゃみがほちいでしゅ」
「そうだな……ステラはまだ小さいしな」
「奴らに頼めば作ってくれるんじゃないかしら。絶対にステラちゃんを気に入ると思うわよぉ?」
「そうですね。女の子がほしいと言っていましたしねぇ……」
「うにゅ?」
ジーっと私を見つめる三人に首を傾げる。専用のはさみが欲しいと言っただけなのに、なんでそんな話に?
もしかして神獣じゃない人たちに会うの?
意味がわからなくて首を傾げたら、大人三人はぷるぷると肩を震わせ、小さな声で「可愛い!」と言ったのを聞こえないふりをする。……なんだかどんどん親バカとか兄バカになってないか?
大丈夫かなあと心配しつつ、他にも見たことがない薬草と果物、植物を発見したので、バトラーさんに教えてもらいながら鑑定と採取をしていく。
見た目は見たことがあるものでも名前や効能が違う。それを知るたびに異世界なんだなあと思うと同時に、知ることが楽しくなる。
新たに見つけた果物は、キウイ、パパイヤ、マンゴー、バンレイシ。キウイは黄色と緑の二色で、マンゴーも表面は黄色と赤があった。
バンレイシは地球だと釈迦頭ともシュガーアップルとも呼ばれる果物で、とても甘く、栄養価が高いと聞いたことがある。なんでもカスタードくらいの甘さになるんだとか。
アメリカに三年もいたというのに、一度も食べたことがないんだよね。まあ、忙しすぎて見慣れない果物を食べる気にならなかったというのもあるのかも。
名前が一緒でも、同じ味だと考えづらいけれど、主神がバステト様だから、もしかしたら同じかもしれない。まあ、名前が同じでも味が違う果物もあったから、何ともいえないのがねえ……。
とにかく、見慣れた名前の果物が出てきたから、今から食べるのが楽しみ! 場合によってはジュースにしてもいいだろうしね。マンゴージュース飲みたいな♪
あとでやってみよう。
そんなわけでテンションが高いまま移動していると、やたらと綺麗でデカい鳥に襲われた。見た目は火の鳥とか鳳凰とか、そんな感じの鳥。極楽鳥にも見える。
全体的な色は赤系統。クチバシは黒で、目は金色だ。
頭には金色の飾り羽がアホ毛のようにニュッと伸びていて、風にたなびいている。
翼は先端にいくほど薄くなり、尾羽はふさふさで、中心からとても長い尾羽がゆらゆらと揺れている。その尾羽は真紅。
大きさはワイバーンの倍近くあるだろうか。……でけえな!
「ほあー」
「ズーだな」
「ありぇがズーでしゅか!」
「別の場所ではジズとも呼ばれる、ドラゴンですよ」
「ドラゴン……」
見た目が鳥なのにドラゴンとはこれ如何に。さすが異世界、不思議だな!
襲われた以上戦闘しないといけないんだけど、私が鑑定しやすいようにテトさんが真っ黒い鎖で拘束してくれた。なのでさっさと鑑定するとそのままウィンドカッターを一当てすれば、あとは大人三人の出番だ。
キャシーさんの糸で呆気なく首が落とされ、バトラーさんが解体。全てのものが素材になるらしく、青い血ですら亜空間にしまっていた。
そこからは特に何もなかったんだけれど、そろそろ日が傾いてきたころ。
その魔物に出会った。
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