エッセイ 『適度な距離』

 本エッセイのタイトル『適度な距離』は、”ソーシャルディスタンス”のことではありません。

 私、なずみ智子とスマホとの距離であります。


 2020年2月1日、ついに私もスマホユーザーになりました。

 それまではガラケーを使っていました……というよりも、周りから勧められても頑ななまでにスマホにすることを渋っておりました。

 その理由は「依存してしまうのが怖かったから」です。


 そして、私が実際にスマホを手にした当初は、まさに恐れていた通りの結果になりかけていました。

 なぜか気になって触ってしまう。特に夜などは、ベッドの中でスマホを弄り続けて寝落ちしてしまうこともしばしばで、案の定、翌朝は疲れが取れず、目はチカチカ状態です。

 ”手軽さと便利さ”についつい手を伸ばし、そのまま時間を忘れてズルズルとハマりつつありました。


 そう、スマホは手軽で便利なのです!

 ちょっと調べたいことがあった時、ノートパソコンの場合は椅子に座って電源を入れなければならないのですが、スマホはいつでもどこでも、すぐにササッと調べられます。

 スマホ1台で本も読めるし、音楽も聴けるし、動画も観れるし、ゲームもできます。生活に役立つアプリもいっぱい開発されています。

 どこまでも際限なく広がりゆくネットの世界を両手の中で楽しめるスマホは、まさに文明の利器ですね。


 しかし、せっかくの文明の利器を手にしていても、使い方次第で”依存”という毒に変化してしまうかもしれないのです。

 さらに”依存”は”時間の浪費”に結びつきます。

 私にとって、”時間の浪費”は「自分の時間(小説を書く時間)が減ってしまう」と同義です。


 小説を書く時間を確保するためにも、スマホと”適度な距離”を取ることに決めました。

 完全に距離を取ってしまうのではなく、”適度な距離”を取るのです。

「見ない、触らない、そもそも視界に入れない。主に連絡手段として使う」と。


 机の上に置いていたり、ベッドの中に持ち込んだりしたら、私は絶対に気になって触ってしまいます。

 だから、鞄に入れたままか、棚の引き出しにしまいます。緊急の連絡があるかもしれないので、着信音だけは出る設定にしています。

 電車での通勤時間も文庫本を読むようにしています。

 余談ですが、創元推理文庫の『世界推理短編傑作集』(江戸川乱歩・編)全5巻を最近購入しました。こいつぁ、かなり読み応えありそうです。


 さらに、スマホゲームには最初から手は出しません。

 クオリティが高くて面白そうなゲームたちにハマってしまうのは確実ですから。

 「自分だけはハマらない。ちゃんと時間を決めてゲームを楽しめる」って思っていても、いつの間にやら、どっぷりとハマってしまっている、そのうえ課金までしてしまっているのが私という人間なのです。

 もう35年も生きていたら、自分のある程度の行動パターンは予測できるものですね。


 ちなみに、ゆうきゆう先生の著作『マンガで分かる心療内科 依存症編(酒・タバコ・薬物)』『マンガで分かる心療内科 依存症編(ネット・スマホ・ゲーム・ギャンブル・ポルノ)』(2冊とも少年画報社)は、とても参考になりました。

 スマホ依存の入り口に突っ立っていた私を引き戻してくれた2冊です。


 なお、私はスマホを自分が子供の頃に……というよりも、”何も夢中になれることがなかった思春期”に手にすることがなくて良かったとも思いました。

 今はもういい年なので、それなりに落ち着いてスマホと向き合うことができます。さらに言うなら、自分一人で食い扶持を稼がなければならないという経済状況ですので、仕事に行けなくなるほどにハマってはまずいという自制もききます。


 振り返れば、携帯電話(ガラケー)に至っても、初めて手にしたのは高校3年生の2学期が終わる頃、おそらく大学が決まった少し後ぐらいでありました。

 作者がJK(女子高生)であったのは2000年4月から2003年3月の間ですが、当時は携帯電話を「持っている派」と「持っていない派」に分かれていたように記憶しています。

 今の時代の高校生は、ほとんどがスマホを持っているでしょうね。

 高校生だけでなく、中学生の女の子たちがスマホを見ながら歩いている光景も、通期途中によく見かけます。


 このエッセイですが、スマホゲームを楽しんでいる方々や、それぞれのご家庭の教育方針でお子さんにスマホを買い与えている方々を貶める意図はございません。

 そして、100%アンチスマホ、アンチ携帯電話というわけでもないのです。


 数年前、ガラケーを使っていた時の話です。

 帰宅途中、道で急に体調を崩された高齢男性から「救急車を呼んでくれ」とお願いされたことがありました。

 慌てて救急車を呼んだのですが、もしあの時、私が携帯電話を持っていなかったら……と考えるとゾッとします。

 男性は助かったと聞いておりますが、救急車を呼ぶのが少しでも遅れたら、もしくは救急車を呼べないままだったら、最悪の事態になっていたかもしれないです。

 そんなこともあってか、外出する時は常に鞄に入れておくようにもしています。


 スマホを「見ない、触らない、そもそも視界に入れない。主に連絡手段として使う」と決めた現在ですが、連絡手段としてLINEだけはほぼ毎日利用しています。

 人から勧められてLINEアプリをダウンロードしたのですが、楽しいですね。

 スタンプも買ってしまいました。ただ、返信したらすぐにスマホを自分の視界に入らない所に移動させていますけどね。

 これからも”適度な距離”を保ちながら、楽しんでいきます。


 『Episode6-A ステージ』のテーマの1つが”依存”でありましたため、今月は少し趣向を変えて、”依存”についての自分語りをお届けいたしました。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。



2020年6月25日

なずみ智子

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