第244話 続続 屋台の準備をしよう

 ハイ、作業中断。

 他の人はともかく、子供たちの汚さは異常だ。

 こんなに汚い子たち、今まで出会ったことないぞ。

 とりあえず、他の人たちには野菜を洗って刻んでおいてくれと見本を渡してやってもらい、子供たちをシャールに連れて行く。


 子供たちがシャールを見て悲鳴を上げたが、

「はじめまして! ボクは、シャール! ボクは、Sランク冒険者のソードさんの輸送ゴーレムなんだよ! 中にソードさんを入れて走るんだ!」

 って挨拶させたら悲鳴が止む。

 恐る恐るといった感じで一人がつぶやいた。

「……魔物じゃないの?」

 私はうなずいた。

「私が作ったゴーレムだ」

「「「「「「作ったの!?」」」」」

 すごいすごいと褒められて、気を良くした。

「うむ! 私はすごいのだ! 天才美少女なのだ!」

 そう言ったら、キョトンとされて、

「……お兄ちゃん、なんか、イメージと違うね。ちょっと残念な人なんだね」

 って言われた。


 一応、男女に分かれ、数人ずつシャワーを浴びさせる。

 すごい騒ぎだ。

 服は、イオン&高速洗浄&乾燥だ。

 植物繊維だったので、子供たちがシャワーを浴びて乾燥し終わるところまでには服が乾いた。

「わぁ! 綺麗になった!」

 喜ぶ子供たちに、私は真剣な顔で説明する。

「……今度ソードと服を寄付しにいってやる。だから、今度から着替えがある場合は一日着た服は、特に下着は洗え。人間とは、思いのほか汗をかき、脂を流す。水で洗うだけでも大体汚れは落ちるので、洗って干すのだ。わかったな?」

「「「「「はーい」」」」」

 不潔ダメ、絶対。


 洗い終えて、大分綺麗になった。

「うむ。大体いいだろう。その手拭いはプレゼントするので、首に巻いていろ。手を拭くときはソレで拭け、いいな?」

「「「「「はーい」」」」」

 元気よく返事される。

 よし。

 ようやく作業に入る。


 戻ってきたら、お手伝いの人たちに唖然とされた。

「子供たちを洗ったんですか?」

 私は深くうなずいた。

「私は、不潔は怖いのだ。だから、あれほど汚れていると、近付いてきたら怖くて泣いてしまうのだ。だが、呼んでしまったので、綺麗になってもらったのだ。綺麗なら怖くない」

 もっと唖然とされた。


 ソードが来て、

「お、かなり出来上がってきてるな」

 って声をかけたら、お手伝い全員がフリーズし、そのあと悲鳴。

「本物だーーー!」

 ソード、ドン引き。

 本物って……どういう意味だろう。まぁいいけど。

「明日は古着屋に行きたい」

 私は肉を受け取りながらソードに言った。

「古着屋?」

「子供たちの替えの服を寄付したい。じゃないと、不潔になるのだ。コワイ」

「わかった。買いに行くか」

 洗ったのを察したらしい。

「まさか、魔術で強制的に洗ってねーだろーな?」

 ソードが子供たちを見て心配する。

「思わずやりそうになったがシャールに連れて行って洗った」

「お、成長したなー」

 ソードにナデナデされた。


 さて、調理再開。

 せっかくだし、予定にはなかったがコロッケでも作るか。

 アレは子供ウケも良いし、腹にたまる。

 と、いうことで子供たちに、芋を洗わせる。

 タワシを持たせ、擦らせて、泥をしっかり落とすように言う。

 洗い場に陣取ってキャーキャー言いながら洗ってる。

 洗い終えた芋を、蒸籠(っぽいのをプラナとサハド君とで作った)で蒸す。

 蒸し終えたら、でっかいボウルに入れて、子供たちにすりこぎを渡して突いてもらう。

 突き終えたら、刻んだ塩漬け肉、ゆで豆を加えて混ぜ、ハーブと塩で味付け。

 これを私が等分に分けて成形。

 そのまま何もつけずにガブリといってほしいので、バッター液に味付けする。

 マヨネーズ多めにね。

 ここら辺から大人の作業。

「この液につけ、次にパン粉をまぶす。そして、これは熱くした油だ。これに入れると、焼くのとも茹でるのとも違う仕上がりになるのだ。今回店のために大量に使っているが、普通に鍋に食材を並べ、半分漬かるくらいまで入れて、火に掛け、半面焼いたらひっくり返す、という方法でも良い。使った油は、布を重ねてざるの上に敷き、こすとまた使えるぞ?」

 知識を披露すると感動された。

「さすが【迅雷白牙】のパートナー!」

「Sランク冒険者はだてじゃない!」

 って言われたけど、カンケーなくね?


 交代で揚げてもらった。

 何気に揚げ物は大変だ。

 跳ねると熱いし、油の匂いでなぜかおなかがいっぱいになったりするのだ。

 で、揚がった分は、揚げた人用と、残りは子供たちにまず配った。

 紙にくるんで渡す。

「熱い」とか「口の中をやけどした」とか言いながらも、ものすごい感激して食べている。

「うむうむ。〝コロッケ〟は、出来たてが一番うまいのだ」

 揚げ待機中の人が、食べている連中を羨ましそうに見ている。

「数はたくさんあるのだから、しばし待て。いつ食べようが揚げたてなら一番うまい」

 そう諭し、食べ終わった人はまた別の料理の準備をしてもらう。

 バーベキュー用の肉と野菜を切り、餃子の具を刻んでもらう。

 肉は私が一瞬にして刻み終えた。

 餃子の皮も一瞬だな。

 肉と野菜はバーベキューソースと和えてなじませ、餃子は具を全部混ぜて、包むのをやってもらう。

 ひだを寄せるとか茶巾包みにするとか難しいだろうから、潔く半月型にした。

「具をたくさん入れると包みづらいから、ホドホドにな」

 伝えて任せた。

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