第168話 どちらのゲーム派?
スカーレット嬢をご招待した。
シャールに案内すると、お付きの侍女が、悲鳴を上げそうになっている。
スカーレット嬢は小首をかしげてつぶやいている。
「……なんか、どこかで見たような」
「ダンゴムシをイメージして作った」
「あぁ! なんとなく思い出しました!」
手をたたいて合点していた。……良かった変なこと言われなくて。
「御用聞きの商人のために多脚輸送戦闘ゴーレムを作ったのだが、ソードが自分にもとねだってきたので、多脚住宅戦闘ゴーレムを作った。中は、部屋になっている。下手な客室よりも快適に仕上げてあるので、お招きするならこちらの方が良いだろうと判断したのだ。……勝手ながら、ソード教官にも話を聞いてもらいたいのでな。今日は突っ込んで話をさせてもらうつもりだ」
スカーレット嬢はうなずいた。
「えぇ、
「……ご紹介にあずかりましたアンと申します。どうぞ、スカーレット様をよろしくお願い致します」
綺麗な挨拶をしてきた。
「私はインドラだ。故あって、姓は捨てた平民だ。だが、スカーレット嬢とは、もしや魂の故郷が近いところにある気がしてな。誼を設けたいと考えたのだ。貴女が驚くような話が出るかとは思うが、全て飲み込んでくれ」
「承知致しております」
おぉ、頼もしい。
うちのメイド嬢たちもこういう感じだから、本当は公爵令嬢付とかだったら良かったんだろうねー。
……あ、なんかかわいそうになっちゃった。
シャールを開けて招いたら、絶句して立ち尽くした。
「まぁ、貴族のように調度品をそろえているわけじゃないし、そもそもキャンピングカーだからな、諸々見苦しいのは見逃してくれ。平民が頑張ってもこの程度だと納得してもらえると有り難い」
「…………。私の部屋よりも高級感がある気がしますけど? そのソファとか、何で出来てますの?」
「大体が魔物の素材だな。耐久性と肌触りで選んだ。中に入っている[ウレタン]のような素材も、似た感触の、弾力のある魔物の素材を加工して使っているので座り心地も違うはずだ」
「マジデスカ」
スカーレット嬢、言葉遣い、言葉遣い!
スカーレット嬢を座らせて、紅茶と軽食の用意。
ソードも現れた。
「無作法者だが、俺も同席させてもらえるか? ……インドラの別世界の話は妄想も多くて、インドラと同じ知識を持ってるやつに確認して回ってるんだ」
えー。何ソレ? 主旨が違うよ?
依頼の内容について心当たりを聞くの!
紅茶を出すと、スカーレット嬢がほほ笑んだ。
「早速使っていただいてるのね。…………あら? もしかして…………」
ミルクを添えた。
「冷凍したものなので、質は落ちているが、まぁ、元がおいしいミルクなので良かったら使ってみてくれ。ソードはコレだろう?」
ブランデーね。
「あ、それってもしかして」
「そうだ。[ブランデー]だ。こちらだと葡萄蒸留酒だな」
「そういえば、お酒をお作りになられてるのでしたわね。……良かったら、分けていただけません? お菓子作りに使いたいんですの」
「いいぞ。ただ、交換品をなにか考えてくれ。金でもいいが……別のものの方がうれしい」
「わかりましたわ」
隣ではソード教官、一口飲んでは酒を足し、一口飲んでは酒を足してる。
最終的にブランデーにする予定らしい。
「……インドラ
「インドラ〝さん〟だからな。知ってるぞ? やったことはないな。私は【美少女ゲーム】派だ」
「あぁ……男の方はそうですよね」
ソードが紅茶を噴いた。
「だから、女だ。前世も今世も女だ。ソード教官も何とか言ってくれ。とにかく、男に間違えられるのだ」
ひとしきり咽せたソード。
「そうなんだよ。男にしか見えないけど、女なんだよ」
ちゃんと言ってくれた。
「…………冗談ですよね?」
「いや、ホントだって。かわいそうなくらいにストーン! と綺麗な直線を描いてるけど女なんだなコレが。拠点ではメイドや使用人にちゃんと『インドラお嬢様』って呼ばれて、女装……じゃねーな、ドレス着て着飾られてるぜ?」
ホーーーーラ!
だが、スカーレット嬢はおろかアン侍女までが放心状態。
ようやく我に返ったスカーレット嬢がつぶやいた。
「…………女子が、美少女ゲー?」
ソードがスカーレット嬢を見て、小首をかしげた。
「つーかよ、その【美少女ゲーム】ってどんなんだ?」
「男の主人公が美少女と交尾するゲームだな」
私が答えるとソードが放心した。
「…………お前、男じゃねーのか?」
あれ? ソードまで言い出したぞ?
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