第103話 犬猿の仲って諺はおまいら仲良いなって解釈でいいですか

 ボス部屋前到着。

 いやー、さすが最深部手前、かなりの凶悪さだった。

 猿も犬も、連携して群れて攻撃してきたし!

 お前等仲悪いんじゃないのか⁈

 しかも、巨大雪男、又の名をドド○ランゴ出てきたよ!

 オオカミのデッカいのも出て来たよ!

 群れを指令してきてめちゃくちゃ面倒くさかったよ!


 疲れてきたので、安全地帯である洞の陰で野営する。

 ソードもこのまま突入とか言わなかった。

 寒さは感じないはずなんだけど、なんとなく身体の芯が冷えてるのだ。

 ので、シャールの中でお風呂に入った。

 …………ソードも一緒に。

 なんだろね?

 私たち、一応男女だよ?

 男女で一緒にお風呂入るの、恋人同士だよ?

 なのにさー、一緒に入ってるのって、これって、親子じゃね?

 親子だよね?

 でもさー、お父さんと一緒に入るのでも、十三歳とかって、無理がないかにゃ?

「あっわあっわー♪」

 とか考えつつも歌ってる私。

「この泡どーやってんだ?」

 バブルバスにしてるの。

 炭酸風呂は、温まるから。

「理論を説明しろ、と」

「やめて、ちょっと聞いただけだから」

 ……ソードは何を考えてるのか分からない。

 けど、ソードもどうやら普通の幼少期を過ごしてないんじゃないかと思うのは、こういった男女の行為めいたことを誘ってくる割にそれがわかってないところでそう思う。

 なんとなく、スキンシップに憧れてるのかな?

 やたら「ソロ」とか「一人」を強調するしなー。

 まーね、私も別世界の知識が無かったら、別段不思議に思わずに一緒に入ってたのかも。


 お風呂に入って、温まったら、さらにあったまるシチューを食べる。

 ぬくぬくになったー。

「ダンジョンの中にいるってことを忘れるんだよな」

 って、ソードがブランデー飲みながら寛いで言ってる。

「シャールをお前がねだってくれて良かった。テントはいかにも野営! って気分が盛り上がるのだが、こんな吹雪の中だと気が塞ぐ。快適な部屋の中から外の悲惨な風景を他人事のように眺めている贅沢は、シャールというキャンピングカーがなければ味わえない」

「相変わらずドSの発言だな。俺、そこまでは思ってないよ?」

 ドSじゃないもん!

 ハァ、とため息をついて、ソードがソファに寝っ転がる。

「王都のお高い客室より、高級住宅より快適な乗り物って、なんだろな?」

「私は衣食住には拘る。拘れるだけの財力はお前が持っていて、技は私が持っている。ならば当然の帰結だ。……食と住は満たした。あとは衣、なんだけどな? ……お前、虫が出した糸で作った布とか心当たりないか?」

 この世界の布は、動物の毛織物が主流だ。

 長い毛の魔物の毛を、縒り合わせて織った、まぁ、悪くはない、くらいの着心地の服。

 ただし、夏は暑い。

 平民は植物の服、らしい。

 麻でも綿でもない。

 麻の方が近いんだろうな、柔らかく丈夫な繊維を縒り合わせて織った、柔らかい麻、あるいはゴワゴワした綿、って着心地の服。

 ただし、冬は寒い。


 天然繊維は嫌いじゃない、むしろ好きです、ロハスです。

 だけれども、ナンバーワンは、お蚕様、絹糸、虫の糸だ!

 シルクは光沢や肌触りが最高級、さらには糸の成分で美肌にもなれる超優れものなのだ!

 別世界じゃ蚕以外無理だったぽいが、この世界じゃどうだろう?

「あるぜ。つーか、お前……そんなにも虫が好きか」

 ……そんな、憐れんだ顔で私を見なくても!

「違うぞ! 布の最高級品は、別世界じゃ虫の糸から織り出した布なんだ! それは、艶といい、肌触りといい、動物の毛や植物ではかなわない代物なのだ!」

「ふーん……。そんな話だったら、ま、伝手はないこともないけどよ。……お前、もしかして、服も作れたりするのか?」

「まぁな。刺繍は貴族の嗜みだし、縫い物は料理と並んで得意分野だな。別世界で立体パターンを習ったこともあるので、人体から型紙も作れる、つまりこの世界の服屋にもなれるぞ」

 私は家庭科一般が全部得意です。

「というか、私の作った下着を愛用してるじゃないか」

「えっ」

 バシッと自分の腰をたたくソード。

 ――毛織物と植物の布を合わせてゴム部分をゴム編みにした、腹巻き兼パンツは、屋敷の皆が愛用している。

 私がいくつか作って、それをメイド嬢が参考にしていろいろ作ってるよ。

 ゴム編みは、おっきいリリアンをS、M、Lと作って、メイド嬢が頑張って編んでる。

 機械編みを作ってあげたいが、作り方がわからんのだった。

「……コレ、お前が作ったの? この、画期的な、前に穴が空いてるヤツ。いちいち全部脱がなくてもいいヤツ。着脱にいちいち紐を解かなくていいヤツ」

 うなずいた。

「本当はな? 伸縮する素材があれば、もっと楽なのだ。蛙の舌のような、ああいったのを紐代わりに入れれば、引っ張れば伸びる、そのままだとフィットする。心当たりないか?」

「…………ある」

 お! これで、ゴム素材もゲットだ!

 両生類魔物の皮もそれなりに弾力があるが、弾力がある、くらいなんだよねー。

 ゴムほどの柔軟性を持ってない。

 さーてなにを作ろうかなーと考えてたら、ソードが抱きついてきた。

「なんだ?」

「俺の服、作って?」

 …………なんだろ?

 酔っ払ってるのか?

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