020225【夜更かし】
月が降ってきて、遠くで犬が三回鳴いた。重量感のあるそれは町に触れるとぱちんと弾けて星になった。
重力から解放された人々はぴよんぴよんと軽くなった身体を嬉しそうに弾ませて、星を捕まえようと躍起になっている。
くだらない言い合いをしていた男女はそれまでの人生で一番強く互いを抱きしめて、愉しそうに夜空を駆けている。先程鳴いた犬が男女の顔を見上げながら愉快に併走している。
入院をしていた余命幾ばくも無い老人は妻によく似た星を見つけたのか、必死な顔で泳ぐように手を漕いでいた。
夜祭の帰りだったのか、女の子の持っていた金魚はふわりと心地良さげに浮き上がり、さらりと水から出て昇って行ってしまった。それを見つけた犬が今度はそれを追いかけて行き、遂には走り回っていた犬さえどこかへ行ってしまった。
どこかで結婚式でもしていたのか、白いウエディングドレスが夜空にふわりと舞っている。深い紺色の背景に月の欠けた星たちがドレス越しにぼんやりと見えて、私はこれからどうやってゆっくりと眠ろうかとぼんやりと考えながら、夜更かしも悪くないかなと思い始めていた。
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