020218【泡沫の夢】
「おい、●●●。いい加減起きなさい」
顔を上げて黒板を見ると、見慣れない男が立っている。周りを見ると、隣も前も後ろも面識のない人だった。
「ここは?」
「何を寝ぼけているんだ」
そう言われたのに反して、私の頭は冷静だった。
「いや、ここはまだ夢でしょう?」
「おかしいなことをいうなあ。みんなも教えてあげなさい」
すると、周囲にいた人達は私の肩を掴んでからからと笑い始めた。
「やめて、なら、私の名前を言ってみて」
「●●●、●●●、●●●、●●●」
「ほら、皆分からない」
突然、大きな破裂音。
人混みの間から前を見ると、先程まで立っていた男は銃口をこちらに向けて発砲した。放った銃弾は目の前にいた人に着弾したようで、泡のように一瞬で弾けるように消え去ってしまった。それを合図にしたように、今まで私の肩を掴んでいた人々が一斉に散り散りになった。私は無防備な状態で、目の前には以前として銃口を真っ直ぐにこちらへ向けた男と対峙している。
「ほら、●●●、こんなことを先生にさせないでくれないか」
教壇から降りて、私に近づいてくる。
遂に銃口が私の額に付いてしまうほどの距離にまで来た。
「これが最後だよ。どうしたいんだ」
周囲を見渡すと既に教室は泡だらけになっていた。
「はやくしろ! はやく!」
私は額に冷たい感触を感じながら深く息を吸い込む。
「あなたは夢だよ。私の可哀想な夢。私の名前はね……」
大きな破裂音がした。
目の前の男は銃口を自らの口に突っ込んで、引き金を引いたのだった。
すると、私の体も次第に泡のようになっていき、遂には跡形もなく消え去ってしまった。
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