蹂躙

「『五月雨』」「『極大真空魔法エアクロス』」


俺とミレーヌの範囲技が圧倒的なステータスと共に振るわれる。


目に付いた魔物を吹き飛ばしながら、気軽に法の神殿内を進んでいく。完全な蹂躙である。



「次は右側の物陰に3匹潜んでいます。」


「うん!」


フィルがいれば周囲の警戒の心配はない。

何せ物音を隠そうとも心の声は消せないのだ。



【ち、ちくしょう!こっちに来やがった!!】

【攫ってきた魂砕きをされた人間達を全面に押し出せ!同士討ちは嫌がるはずだ!】

【もういねぇよ!!】



うむ。魂砕きの被害者達はここの警備にも使われていたので真っ先に無力化させて貰った。



【ま、待て!こ、降参す――】


「『火炎魔法フレア』!!」


フィルの火炎魔法が命乞いをした魔物を焼く。

大神官と言う役職だが、実際の職業は賢者らしい。


「·····ここが襲われたあの日。助けてと叫ぶ無辜の民を笑いながら殺した貴方達を許す事はありません。絶対に、神殿は私が取り戻します。」


フィルはどこか寂しげに、でも力強く言い放つ。


「フィル。私も一緒に戦うからね。皆で法の神殿を取り戻そう!」


フィルの悲壮な覚悟を慰めるように、ミレーヌが優しい笑顔で同調する。


うーむ。尊い。

幼女2人の絡みが尊いわ。


「·····シュウ様?」


盲目なので常に目を瞑っているが、確実にジト目でこちらを見てくるフィル。


·····ちゃうねん。



そんな事をしながら何だかんだと大方の魔物は倒してしまい、後は偽大神官のみ。

残党処理やらは遅れてやってくる神官長とロンフーに丸投げすればいいな。



「取り敢えず感知される魔物はいません。後は大神官の間にいる魔物のみですね。」


しかし、フィルがいてくれると非常に助かる。

まさに一家に一台と言うやつだ。

何かメイドみたいだな。合法ロリ。ちっぱい。

·····あ。やべ。


「合法ロリ神官メイドですか·····。そんなに胸が気になりますか?ご主人様。」


「お父さん?」


ミレーヌの冷たい声と、呆れ半分楽しさ半分なフィルの声をスルーしてズンズンと突き進む。


俺は大人俺は大人俺は大人。いい歳してんだから自制しろ!俺!

ちなみに俺は巨乳もちっぱいも好きだ。

まぁそもそも触った事がないんだが。



「大人同士なんですから普通の事だと思いますよ。ただ、全部終わってからにしましょうね?」

「そんなに触りたいなら私で良かったら後で·····」


合法ロリと非合法ロリ、2人の大悪魔の甘い囁きを強靭な精神力で自制する。



ど、どうしたらいいんだ!?

このまま行ってもいいのか!?


いや、駄目だ。リリーやステラとはどうなる!?

それに流石にミレーヌは駄目だろ!


あぁ!でも!でも!



·····女性はすべからく悪魔だ。

間違いない。大魔王なんざ可愛く見える。



この妙な空気を誤魔化すように大広間の扉を蹴破るように開ける。そこには偽大神官こと、カーディナルアントが待ち構えていた。



「ふはははは!よく来たな!貴様らの力は――。」

「『力溜』、『大切断』」


偽大神官たる悪魔カーディナルアントを力溜により2倍になった戦士熟練度10のスキル、『大切断』が両断する。


まぁまともにやり合えばこんなもんである。



「一瞬、でしたね·····。」

「お父さんって本当に身も蓋もないわよね。」


ジャミエル曰く、俺は魔王狩りたる黒金の勇者らしいからな。

中ボス程度、苦戦するはずもない。


「さぁ、邪魔者は処分したし、早く転職を――。」



パチパチパチパチパチ



神殿の上の方から拍手が聞こえる。


見上げると天井付近に大きな目玉から複数の触手を生やした魔物が張り付いている。


あれは悪魔の瞳?


遠く離れた場所の映像をあの目玉型の魔物を通して見たり、声や映像を送れると言う、漫画や小説等でよく出てくる魔物である。


よく激昂した魔王に意味なく握り潰されたりする可哀想な奴でもある。



悪魔の瞳が光り、中空に映像が映し出される。



そこには一体の魔王がいた。



赤黒い筋肉質の肌。

それを包む真っ黒な鎧。

手には上下2つの刀身をもつ両剣を持ち、王者の風格を漂わせ自信に充ちた笑顔の悪魔。


デモクエ6に出てくる魔王の一角。

天空の城を落とした悪魔。

魔王デューエル。


ちなみに、小説版ではミレーヌの弟、アンディとのBL疑惑の描写があり賛否両論となった。



【素晴らしい手際だった。大魔王オルドデミウスに先に法の神殿を落とされたと聞いた時は冷や冷やしたが、君のような強大な敵がいると知った今は、これで良かったと思っているよ。】



コイツは基本的に武人キャラで、ダンジョン攻略や中ボス戦で傷付いていても全回復させてから対等な勝負を挑む正々堂々とした奴である。



【しかし、法の神殿が我等の目標の一つである事には変わりない。そして今や我等の最大の脅威は君だ。】



ほう。つまり、俺と今からやろうってか?

良いぜ!中ボス如きが俺を倒そうと思ってんのなら、まずその巫山戯た幻想を·····。



【我等が主、大魔王デッドムーア様とその配下たる4柱の魔王がお相手をさせてもらう。】



·····ん?

今なんて言った?



【私はただの先触れでね。今より15日後、デッドムーア軍100万の軍勢を持って我々はこの地を攻める。逃げるも良し。戦うも良し。好きにした前。】



15日後?

大魔王と4柱の魔王がここに!?

それに100万の軍勢!?



【願わくば!一心不乱の死闘を望む!ではまた会おう!愛しき怨敵よ!!】



·····なるほど。

ぶっ殺されたのは俺の幻想らしい。


現実がゲームのシナリオを蹂躙して来やがった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る