怒り

【黒金の勇者だとぉっ!?貴様が予言にあった魔王殺しデーモンスレイヤーなのか!?】


さっきからコイツ、白金の聖女と言い魔王殺しデーモンスレイヤーと言い、何でちょいちょい厨二病くさいんだ?



しかし、予言ねぇ。

魔族側にもルビシアや龍神王みたいな神がいるのか?



いや、そう言えば、シリーズにもよるが基本的に大魔王何かは神と同格みたいに扱われていたな。


俺のイメージになるのだが、デモクエでは魔王と大魔王は扱いが違う。


デモクエ1の魔王やデモクエ4のピエトロ、デモクエ6のジャミエル然り、単なる魔王は強い魔物や魔族として描かれている。


しかし、大魔王となると時間や空間等を操る程の強大な力を持つ魔族や魔物の神として扱われている。



つまり、神と大魔王のそれぞれの予言やお告げに黒金の勇者、つまり俺と言う異世界人が出てくる訳だ。


何となく神VS大魔王の構図が見えてきたな。



ん?そう言えば、この世界ってデモクエ全シリーズをごった煮にした世界かつ、10年前の設定だろ?


何でジャミエルは、ゲーム通りカルカナで生贄狩りやってんだ?



「――あぁ。そうか。お前達4柱の魔王はそれぞれの目的の為、ゲーム開始前から動いていたんだっけ。」


【!?】


「お前達は人間の世界を征服する為に、驚異となる4つの施設を破壊するつもりなんだろ?」



つまり、


勇者と言う職業を生み出せる、職業を司る『 法の神殿』


様々な武具を世界に散らばったゴールドメダルと交換してくれる『 コレクター王の城』


あらゆる魔法を生み出す魔法使いの国、『 魔法学園』


勇気を司り、夢の世界を束ねる『 天空の城』



これらの施設を物理的に破壊し、さらに夢の世界で封印する事で、人間の世界を確実に征服しようとしていたのだ。


と言うより、それはデモクエ6開始の時点で完了していた。そして、それを打ち砕くのがデモクエ6のストーリーの中核である。


デモクエ6勢の魔王達は10年前の今から動いていたんだな。


今の所は『 法の神殿』が襲われたとは聞いていないから、まだ計画段階なのだろう。


うーむ。マジで重要施設だからなぁ。

やっぱり他の3柱の魔王も倒しておく必要があるか?


ちなみにデモクエ6で出てくるメインのボスは5人。


大魔王デッドムーア、魔王ムードエル、魔王グラエル、魔王デューエル、そして魔王ジャミエルだ。



「グラエルとか海の底だし、デューエルも空の上、比較的楽に行けるムードエルも絶海の孤島だしなぁ。移動手段をなにか探さないと·····。」


【何故我ら四魔王の事を知っている!?それに今計画されている襲撃先も!これが導かれたルビシアの使徒なのか!?】


おおっと、証言頂きました。

やはり俺をこの世界に招いた犯人はルビシアか?



うーん。ルビシアかぁ。

シリーズによっては慈愛に満ちた女神っぽく見せてはいるが、人間とは違う尺度で物事を見ている節がある。


デモクエ外伝ゲームのビルダーズ何かでは世界の均衡優先で割とドライな感じだったし、外伝漫画でもちょいちょいと神らしい傲慢な発言も目に付いた。


つまり、人間個人よりも世界を優先するある種の冷酷さがあるのだ。まぁ世界を運営する神なので当然と言えば当然なのだが·····。


どんな無理難題を押し付けられるのやら·····。



「まぁ、その辺は『 法の神殿』で判明するのかね?」


剣を構え直し、ジャミエルに向かう。


【くっ!同士達よ!!何をしている!人間共を人質にでもして·····!!】



「させると思うか?『 五月雨』」


ザザザザザザザザザザザっ!!!


雨音の様な斬撃音と共にステージ下に集結していた魔物の群れを、熟練度レベル8の技が細切れにする。



「お前達は一体誰の前に立っていると思っているんだ?」


某サングラスのラピ○タ王ばりの発言をしてみる。

カンストぞ?我レベルカンストぞ?


·····あ。駄目だ。結構な数が生き残ってる。


怯んではいるが、半数以上の魔物がまだピンピンしている。流石に全体攻撃と言えど、百匹単位の魔物の群れ全体に攻撃を当てるのは無理らしい。



「今のうちに固まって!戦える人はいる!?棒でも素手でも何でもいい!諦めないで!」


ミレーヌがナイフを構え、叫ぶ。


「最後まで抗おう!」


ミレーヌに呼応する様にナイフが白銀に輝く。

流石、シリーズによっては退魔の波動と謳われるオリハルコンの輝き。

光に怖気付いたのか、魔物達が後退りしている。


ミレーヌ。暫く見ない間に成長したんだなぁ。

ホロリと来るね。


「は、はい!聖女様!」「固まるんだ!早く!」「勇者様の足を引っ張るな!」「お、俺も戦えるぞ!」



ミレーヌの喝を受けて動き出す元生贄諸君。


「ははっ。しっかり聖女してるじゃないか。ミレーヌ。」


「お、お父さんの·····娘だし·····。」


照れて俯くミレーヌ。

か、可愛いぞ!ウチの娘は何て可愛いんだ!



【な、舐めるなぁ!!】


残った片腕の爪先に炎を纏い、ジャミエルが襲い掛かって来る。


ガシッ!!


俺はジャミエルの手首を掴み、受け止めた。

そしてそのままギリギリと力を込めて行く。


【ぐがぁっ!!】



メキメキと嫌な音がジャミエルの腕から響く。


【く、喰らえっ!!】


ジャミエルが口から激しい炎を吐き出す。


はっ!そう来ると思っていた!

お前の特技はそれ炎の息しかないもんな!


バックステップで一気に距離をとる。

来ると分かっている攻撃だ。避けるのは簡単だ。



·····俺はジャミエルと言うキャラは嫌いではない。各種外伝ゲームでは話好きで偉そうだが、どこか憎めないコミカルなキャラ付けをされており、閣下の愛称で親しまれていたキャラだ。


だが――。


「ミレーヌを殴った事は許せん!俺は怒っているんだ!!」

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