閑話 VR課(8)

バタン!


「はぁ、はぁ……みんな! いる!?」


ドアが壊れるかと思うような勢いで部長が部屋に入ってきた。部屋の中を見回して全員がいるか確認している。


「ど、どうしたんですか部長? 」


「マッパ君、ハーベストのみんなは揃ってる? 」


「は、はい。さっきまでプリンちゃんがVR機に戻ろうとしていたんですが、今はそこで横になっていますけど、みんないますよ。」


プリンはメイに膝枕をされた状態で横になっていたが、部長のドアを開ける音で目が覚めたようだ。急に起こされたことで部長に不機嫌な顔を見せる。


「……そう……よかったぁ~。」


部長は、はぁ~っと大きく息を吐きながら座り込んだ。体育すわりをしながら肩で大きく息を吸っては、乱れた呼吸を整えている。


「部長、どうされたんですか?」


ハーベストの皆は今まで見たことのない部長の様子に驚くとともに、きっと何かが起きたんだと身を固くして部長の発言を聞き逃すまいと息をのんで、4人の目が部長を見つめる。


「……帰って来れなくなったんだよ……」


「か、帰れなくなった? 何がですか? 」


「他の国でダンジョンに挑んだパーティーの一人がダンジョンで亡くなったんだ。

マッパ君、ダンジョンで亡くなったらどうなるんだった? 」


「……セーブをした街の教会で復活しますね。あと、ペナルティがつくはずですけど。」


「それが復活しなかったんだ。」


「え? 復活しなかったんですか? 」


「あぁ、それともう一つ……この世界にもいないんだよ。」


「……いないとは? 」


「VR機の中に入っていたはずの人が消えたんだよ……0.1ミリメガネ君みたいにね。」


「「「「……! 」」」」


「原因は分かっていない。でも、分かっているのはVRの世界で死ぬとこっちの世界でも消える。」


「メガネは死んでない!!! 」


プリンは立ち上がり、部長をにらみつける。その肩は震えながら、そして小さく死んでいないと呟きながら、少しづつ俯いていく。


「……メガネは死んで……なぃ……」


メイがプリンを抱きしめる。マッパもプリンの頭をなでている。


「……ごめんよ。僕も0.1ミリメガネ君は死んでないと思っているよ。彼には戻ってきて欲しい。そのために僕たちは頑張っているんだ。」


部長は立ち上がりハーベストの皆を見ながら話しかける。


「僕の知り合いに無理を言って色々と情報を仕入れてみた。他にも消えてしまった人がいるみたいなんだ。どうやら、あの女神が現れてから、VRの世界で死ぬとこっちでもいなくなってしまうんだ。」


そう言って、部長は一度言葉を切った。そして目をつぶって話す。


「君たちは自分の命をかけてでも……命をかけてでも……」



ここからVR課は新しい一歩を進むこととなった。






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