閑話 とある場所にて

時間は少し戻って、デコト・ボーコがニーケインを顕現した頃……


とある場所では二人の人物が部屋の中でくつろいでいた。一人はベッドに横になり、ほとんど裸に近い恰好でだらけていた。もう一人は、部屋に備え付けている細かな装飾が施された椅子に座り、同じ装飾で縁を装飾されたテーブルに両肘をつき、本にかじりつくように眺めている。集中して本を読んでいるようだ。


「はぁ~……」


「どうしました?」


本から顔を上げ、裸に近い人物に声をかける。


「私、暇で死にそう。」


「……それを望まれたのでは?」


「そうなんだけどねぇ~。暇すぎて~。何かな~い?」


「今のところは何も……」


「そっかぁ~。何かあったら教えてねぇ。」


「はい。必ずや。」


「そんなに固くならないでよ。こっちまで固くなるじゃない。チカラ抜いてよね。」


「そう言われ……こ、これは!?」


「……ふぅ~ん。この感じはニーケインかしら? 彼女が動くってことは何か起こきるのかしら?」


……。


「フフフ……勇者ってのが魔王を倒しにいくんだ……楽しそ~。」


「どうされますか?」


「どうって……そうねぇ……勇者君? 勇者ちゃん? に会ってみたいわね。どんな子かしら。楽しみだわ~。」


「では、移動の手筈を整えてまいります。」


「そうしてちょうだい。あっ! でも待って。すぐに勇者ちゃんに会うのも面白くないわよね。もう少しじらしちゃう?」


「しかし、会うのが遅くなりますと勇者として育ちきってしまいますが。」


「ふるえる小鹿ちゃんか、立派になった大鹿か……どちらも甲乙つけ難いわよね~。あぁ! 迷っちゃうわ。」


「ここにいても会えませんので、移動しながらでも考えましょうか。」


「そうね。いつ会えるかも分からないし。会った時に考えるわ。待ってて~!私の勇者ちゃぁぁん!!」




……ブルリ。


「おぉ! なんか悪寒がしたぞ。」


「ディー、体調悪いの?」


「いや、昨日もよく寝たし、ご飯もしっかり食べていつも通りだったんだがな……気のせいか。」

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