第8話

 ―土曜日の朝―


「あっつい、、、」


 目が覚めると、やけに自分の身体が重い。それに俺の右半身が何故か熱を帯びている。


 もぞりッ


「何かいる!?」


 布団をめくると、そこには昨晩来客用布団で床に寝ていたはずの八重桜さんがスヤスヤ寝息を立てて眠っていた。顔は完全に俺の胸元にうずめていて少しくすぐったい。


「なっ!?」


 驚きのあまりか俺は目が覚めてすぐ心臓がドキドキと騒がしい。


(八重桜さん⁉なんでこっちの布団にいるんだよ⁉)


 顔も近いし、まつげ一本一本長く、それにとても柔らかそうな唇にドキリとした。


 とりあえず体から引きはがそうとするも、八重桜さんの両足が俺の方足をガッチリホールドしていて抜け出せない。密着している部分がムニュムニュとするだけだ。


(やばい、女の子の身体はどこもかしこも柔らかいんだ‼)


 それにどういうわけだか八重桜さんの手はというと、、、俺の股間部分に触れていた。


 もぞもぞ…


「ちょっ、、、」


「んんっ…マシュマロ…」


(あ、やめて八重桜さんそれはマシュマロではない。コラ弄るな!)


「ん…?」


 おっと、そろそろ俺のマシュマロがシャレにならくなりそうなのでもうなりふり構わず強制的に起こすことにする。


「八重桜さん!八重桜さん起きて!朝だよってかここ俺のベットだよ」

「んん、、、」


 うっすら目を開ける八重桜さん。すっとまた目を閉じてしまった。

 今度は露骨に顔を俺の胸にスリスリこすり付けてきた。「ん~っ」とか言ってとても心地よさそうだ。


(なんでやねんっ!、、、くそっ寝てる八重桜さん可愛いな)


 今度は強引に肩を揺さぶる。


「んっ…」


「あっおはよう八重桜さん」


「・・・⁉」


 やっと目が覚めたのか、目を完全に見開いて驚いている様子。どうやらなぜ俺と一緒に寝ているのか自覚がなかったらしい。それは俺もなんだけど、、、


 ドンッ 


「うぁっ」


 ドシンッ


 急に手で突き飛ばされたと思ったら、逆に軽い八重桜さんの方がベットからはじき出されて床に転げ落ちてしまった。


「だ、大丈夫八重桜さん??」


「・・・」


 あれ?…なんか八重桜さんが両手で身体を抱きしめワナワナ震えている。


 じぃーーっ。


 しかも何故か赤面してながらこっちを睨みつけているではないか。


(あれ?コレまさか、俺が昨晩襲ったみたいな感じになってない??あれぇー??むしろ襲われかけたのは俺なんですけど」


「や、八重桜さん?あの何か勘違いしてるみたいだけど、俺は何もしてないよ?、、、むしろいや朝起きたら何故か八重桜さんが俺のベットで一緒に寝てて俺自身も驚いてるんだ。本当だよ?」


「・・・」


 どうやら現状を理解してくれたようだが、おろおろしてて動揺している様子。


「あ、いやいいよ俺も気持ち良かったし…っじゃなくて!もしかして寝ぼけて自分の部屋のベットと勘違いしてこっちに入ってきちゃったのかもしれないね、はは」


「・・・」


 ああ、また八重桜さんが体育座りして丸まってしまった。


「あっ」


(八重桜さんそういえばノーパンじゃん‼)


 体育座りをしている八重桜さんの足で正面からは大事なところはギリギリ隠れてはいるものの危なっかしく、それ以外のきれいな内ももやお尻は組まれた足の両サイドから普通に見えてしまっている。


(無自覚とはいえ、朝から心臓に悪すぎるぞ、、、)


 本当は注意をした方がいいのだろうが、あなたの大事なところが見えそうですよ、もしくはパンツ履いてくださいなんて言えるわけもなく、なるべく見ないように目をそらして事なきをえることを選択した。


(が本当はチラチラみてしまいました。ごめんなさい!)


「あっ、そうだ八重桜さん!今日こそ管理会社に連絡して、部屋の鍵作ってもらおうよ」


 むくりと顔をあげてコクコクうなずいている。こうして見ると先ほどから思ってはいたが、メガネを外している八重桜さんはかなり可愛らしい顔をしている。メガネをコンタクトに変えて普段からもっと前髪も短くして顔も見えるようにしたら男子が寄ってきそう。


 とはいえこの現状も今日で終わりだ、普段はまったく関わりないただのクラスメイトなのだから。今までが特別だったのだ。


「ええと、八重桜さん服とか忘れずに持って帰ってな。俺の服は後で学校ででも返してくれればいいからさ」


 再びコクンとうなずいて立ち上がった八重桜さん、ふと自分の下腹部やお尻を触り始めた。


 どうやらパンツをはいてない事を忘れていたみたいな反応をしている。


 ふいにこちらを向く八重桜さんと目があった。


「・・・」


「・・・ん?」


 どうしたのだろうか、俺の目と俺の股間あたりを交互に睨みつけている。あまりの眼力にちょっとひゅんってなったじゃないか。何がとは言わないが。


 じーーっ


 もしかしてパンツをご所望ですか?…それともやっぱり俺が襲ったと思われてる?


「・・・」


 すると急に動きだした八重桜さんは布団の上に座っている俺のズボンを両手で脱がそうとしてきた。


 ガッ。


「な、なんだ、どうした!手を放してくれ!」


 と俺は必死に八重桜さんの手を止める。


 フーッ、フーッ


 これは八重桜さんが興奮しているときに口からでる音だ。


「落ち着いて八重桜さん‼パンツは貸すしズボンは君がいらないって返したんだよ!」


 ひとまず落ち着かせ、貸せるボクサーパンツを探すもやはり新品のパンツなんて持ってはいなかった。普段俺が履いているパンツをクラスメイトの女子が履くと思うとなんだか妙な気持ちになるな。


 無難に黒のボクサーパンツを選び八重桜さんに渡す。


「なにこの状況、、、なんで女子にパンツ捧げてんだ朝から」


 さっと受け取ったと思いきや両手でバッと広げてまじまじ見ている。


「ちょっ、何してるの八重桜さん!履くなら早くしてよ」


 さすがに恥ずかしくなり催促すると謎行動をやめ、目の前で普通にパンツを履くために足をあげた八重桜さんから、俺はとっさに目をそらす。


 現在時刻は朝の9時30分を少し過ぎたところ、すでに俺はちょっと疲れていた。


 そのあと一応八重桜さんを玄関の外まで見送って、再びベットへ戻り横になった。


「はぁ、朝から疲れた……二度寝しちゃおう」





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