Sweet Sanctuary

白ラムネ

哲&透子編

俺の名前は高橋哲(たかはしてつ)。

突然だが俺には幼馴染がいる。

名前は清水透子(しみずとうこ)。

彼女とは幼稚園、小中学校が一緒で高校は透子が県内で有名な女子高。

俺は市内の男子校に入ったことで別れてしまった。

そして、学校が違うこともあり少しずつ会話が減っていくのが年頃の男女だってことを、最近は特に思い知らされるようになっていた。

絶賛思春期の人間にはそれがもどかしい。

だって俺の初恋は幼稚園の頃から変わっていないのだから。


彼女とは朝、近くの駅まで一緒に歩くのだが駅からは行き先が逆なので、その間の500メートルが彼女と話せる時間だった。


「あ、透子。おはよう」

「おはよ」


透子は名前の通り透き通った声で少し冷たく挨拶を返してくる。

表情は昔から変わりにくく、友達には何を考えてるかわからないと言われていた。


「今日も部活か?」

「うん。弓道部の朝練。哲君は?」

「俺もバスケ部の朝練があるよ」


透子は顔色を一切変えずに俺を見ながら頷いていた。


「そうだ、透子。今週の土曜日........」

「無理。予定があるから」


俺は即答されて少しへこんでいた。

そして、次の会話を切り出そうとしたときに駅に着いてしまう。

彼女と別れて俺は反対側のホームに立つ。


俺は線路越しで透子を見ていた。

彼女はスマホを見ながら電車を待っている。

弓道部だからか、とても姿勢がいい。

俺はさっきのへこみをまだ少し引きづっていた。


「あんなにすぱっと切らなくても良いじゃないか........」


俺は小声でそんなことを呟いた。

透子には聞こえていない。

そして、彼女の方の電車が先に到着する。

彼女は俺の見える方のドアに向かって立った。


透子と目が合う。

彼女は俺を見ながら自身のスマホを指差していた。

それと同時に通知音が聞こえる。


「え?」


俺は急いでスマホの電源ボタンを押す。

通知には一通のメッセージがあった。


『日曜日なら大丈夫』


一行のメッセージだった。

そのたった一行に目を奪われる。

俺は口を開いたまま、もう一度透子を見る。

彼女は小悪魔のように笑っていた。


「え........」


俺の方のホームに電車が入ってきたと同時に彼女の乗る電車が動き出し、彼女が見えなくなってしまう。



動揺と驚きで思考停止した俺は乗るべき電車を見事に乗り過ごしてしまうのだった..........





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