第367話ことしを、ふりかえる

 僕は一年を振り返る。


 振り返ったところで、特になにもないと、気付く。


 まぁ、いつも通りの日常をなぞるだけなので。


 これといって目立った出来事もないんだよね。


「…………」


 季節は冬。


 学校は休み。


 つまり冬休みだけど、部屋の窓から外を眺めてぼーっとしている。


 北風にカタカタと揺れるガラス戸の向こうに、灰色の雲が流れる。


 そろそろ雪が降るころかな。


 そんなことを考えながら、あったかい晩ご飯を想像する。


 シチューがいいな、とか。


 鍋がいいな、とか。


 そんな些細なことで僕は充分なんだ。


 晩ご飯を想像できるだけで、僕は幸せなのです。


 特別なことが起きなくてもいいよ。


 ご飯のことを考えながらうたた寝しちゃって、それで幸せなのです。

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