第46話 この世界と私を愛してくれますか? By イザナ
「美味しい、それに何度か口にした事がある
「見栄を張らずに言えば、サリエルが手配してくれたんだよ」
さらりと自然な形で内情を一部露呈しておき、俺も焼き立てのワッフルに
「ふむ、ゼファルス領の菓子にも引けを取らないか……」
種類の豊富さでは領主ニーナの積極的な支援を受けたドイツ菓子に叶わずとも、個々の品目だと十分に太刀打ちできるのかもしれない。
その事実に少々感心していたら、先ほどの独り言に反応したイザナがジト目を向けて来た。
「
状況的にロイドが妹に可愛らしいチョーカーを、俺はイザナに銀細工のバングル型カフを購入した手前、レヴィアだけ除け者にしないと考えたのだろう。
確信と共に
「日頃の感謝と信頼を込めてな……」
「それで
「薄々は勘づいていたが、やはりそうなのか?」
「専属騎士と魔導士は多くの時間を共有しますから、惹かれ合うのでしょう」
その件に関しては先王の
ただ、父王と姉代わりの人物が持った肉体関係を亡き実母への裏切りと
故にどうしたものかと逡巡していると、落ち着いた様子の彼女が先に言葉を切り出す。
「既にサリエル本人から聞き及んでいると思いますが、お父様との関係を認めなかった事…… 私にも
真摯な態度に横槍を入れるなど論外なため、此方も襟を正してイザナと向き合い、続く言葉を聞き逃さないように傾注する。
「何処の馬の骨とも知らぬ
「有難く心に留めておく…… 個人的には一途で在りたいと願うけどな」
「ふふっ、期待させて貰いますね」
柔らかな微笑に照れて誤魔化すようにベルギーワッフルを頬張り、口端に付いた生クリームをイザナに
僅かに残った紅茶も飲み干し、再び店主の御老人と少し談笑したイザナが王家御用達の許可を確約した後、俺達は本日最後の目的地である西区の丘陵地を目指した。
近場故に
「ふゎ、夕焼け色に街が染まって凄く綺麗です」
「確かにそうだな……」
少々気のない返事を返して、艶やかな黒髪が風で乱れない様に押さえているイザナの横顔を
「? どうかしましたか、クロード」
可愛らしく小首を傾げる彼女に対して
「…… 建前で無く、本心を聞きたい」
「内容次第ですけど、善処致しましょう」
「婚姻は臣民の為と
「正直、分かりません…… 元より嫁ぎ先を選ぶ立場に無いので」
返ってきた言葉は十分に納得ができるもので、やはり成り行きで相手に選ばれたに過ぎない自覚を深めてくれるものだった。
(ならば、今の関係性を維持するのみか)
都合良い解釈でイザナを傷つける事が無いように、暫時瞑目して未熟な自身を戒めていれば、耳に
「そうやって皆の気持ちを汲んでくれるクロードの事、嫌いではありませんよ。
夕焼けの街並みを背にして、はにかみながら彼女はバングル型カフが嵌められた右手を差し出してきた。
「未だ還りたい気持ちは否定できないが、既に多くの人達と関わっているからな」
そっと色白な手を掴んで抱き寄せ…………
背筋を走り抜けた悪寒に従って真横へ飛んだ直後、一瞬前までいた場所を漆黒の魔槍が貫く。
「フム、
振り返った先には逢魔が時に相応しい黒衣の騎士が一人、不気味な雰囲気を漂わせて
「ッ、生命の息吹が感じられません」
「
短く言葉を交わす
「白エルフ共ノ未来予測デ、余計ナ事ヲシタト責メラレテナ…… 気二喰ワナイノデ退場シテ貰ウゾ、新タナ騎士王」
異形の言葉に付き合う義理も無いので、此処から離脱する旨をイザナへ小声で囁き、俺は懐に忍ばせた連装式短銃を無造作に引き抜いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます