第18章「迫り来る選択」その6


いや、確か平木と西山は同じ中学だったらしいから、赤の他人ってわけじゃないだろうけど。


それでも今のところ、互いに目を合わすこともない。



平木と東海あずみはあいさつ程度の会話はしているが、


あれだけの性格の差があればこれ以上の関係になることはない。


一番の問題は西山だ。


僕の横にいる彼女は、平木と東海あずみを苦手にしている。


西山は女子委員で成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、徳高望重とくこうぼうじゅう、絵に描いたような完璧美少女なのだ。


彼女はどこに行っても輪の中心になり、みんなは彼女の引き立て役になる。


しかし平木と東海あずみは違う。


西山のことを自分たちより上だとはこれっぽちも思っていない。


学校の人間関係に興味のない人間にとって、一軍の威光いこうなんてまったく通じない。


それでも西山がここにいるのはなぜだろう。


退屈なのか、『悩み部屋』を知りたいのか、それとも…


ただ時間だけが流れていき、知識が頭に入っていく気がしない。


時計を見ると、もう十八時半だ。


「そろそろ帰るか」


誰もペンを置く様子が無かったので、僕が提案した。


このままじゃ後一時間くらいこの自習が続きそうで怖くなった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る