第13章「空いた学び」その9
「羽塚くんは私のこと好きなの?」
大胆にもほどがある、休み時間に答えられる質問じゃない。
うるさいんだ、クラスメイトの喧騒が。
もう昼休みも終わろうとしているのに。
君が好きかって?
そりゃ、好きさ。
でも今のこの感情を言ってしまっていいものか、わからないんだ。
もっとふさわしい時、ふさわしい場所があるんじゃないか、そう思うと、
言葉が何も思いつかない。
「...普通かな」
ごまかした、最悪のごまかし方だ。
その顔は残念そうなのか、呆れたのか、とにかく僕にはもう期待していない雰囲気を醸し出していた。
これ以上言葉を発せば、いったい何を失うかわからなかった。
だから、黙ることにした。
五、六限の英語と化学はそれまでは違い、誰とも話すことなく黒板とノートとにらめっこした。
傍目から見たら、真面目な生徒に見えるだろう。
しかし今後の僕の人生で黒板とプリントでしか見ることはないだろう、
英単語と化学式は全くと言っていいほど頭に入ってこない。
ホームルームが始まっても、喪失感で考えがまとまることはなく、開いたノートと筆箱を片づけることを忘れてしまった。
担任の秋山先生はいつものように連絡事項について話していたが、そこに付けくわえ、十月に開かれる文化祭にも触れてきた。
途中から西山と新田も教壇に立って話を進めている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます