第10章「沈黙の祭り」その11
「それって、ホームルーム終わってすぐ?」
「あ、うん。今日の放課後でも大丈夫だよ」
つまり、今日の放課後、体育祭の準備をサボれるということか。
「わかった。いいよ」
「ほんと、ありがとう」
西山は手を合わせて、嬉しそうだった。
「じゃあ、ホームルーム終わったら、よろしくね」
「ああ、わかった。それより、会議はもう無いのか?」
「うん、一応昨日で終わって、
後は書類を先生に提出するだけだから、大丈夫だよ」
「わかった」
「それじゃ、ありがとうね」
西山は小走りでさっきまで話していた一軍連中のもとに戻った。
肩まで垂れた彼女の髪の毛は、後ろからでも美少女であることを明記している。
予定よりも時間をかけて消した黒板は、チョークの粉がこべりついていた。
自分の席に戻ると、平木が本を読んでいるのが目に入った。
「西山さんと仲が良いのね」
こちらを見ることもなく、ただページをめくり、そう言った。
「いや、たまたまだよ」
「そういえば、西山と平木は同じ中学だったんだよな」
「ええ、そうね」
「何で言わなかったの?」
平木はそれまで読んでいた難しそうな本を閉じて、
「中学時代の記憶は思い出して微笑ましいものではないから」
そう言って、椅子を下げながら立ち上がり、教室から出ていった。
怒らせてしまったのかな?
平木は西山のことを好いていないのか?
西山の話を聞く限りでは、友だちってわけじゃなさそうだし、
仲たがいしたってことはないだろう。
手に本を持っていたから、図書室に行ったのかも。
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