同衾と幼馴染
「や、やっと倒せたぁ……」
「お疲れ……」
「このゲーム面白いね‼」
「それは何よりで……」
咲夜はあれから数時間ずっとゲームをやり続けていた。チュートリアルボス自体は割とすぐに倒せたのだが、そこから彼女はこのゲームの面白さにはまったのか飲める込むようにしてずっとやり続けていた。それこそ僕の膝の上にのっていることも忘れるくらいに。
「あ、もう日越えちゃったね。あはは……」
「笑いごとじゃないんだけどなぁ……僕朝弱いし……」
「大丈夫。今日は私が一緒に寝るから問題ないよ」
「ちょっと待て。今なんて言った!?」
「おいで。まーくん?」
咲夜は僕のベットの中に潜り込むとベットを叩き、僕に隣で寝るよう訴えかけてきている。
「おいおい……いくらなんでもそれはどうよ……」
「何をためらっているの?」
「いや。それはためらうでしょう……」
僕たちはまだ付き合ってもいないわけで、付き合っていたとしても年ごろの男女が同じ部屋で寝るのはどうかと思う。まして同じベットで寝るなど論外だ。そういうのは結婚してからするもので、高校生の僕たちがしていいわけがない。
「私は気にしないから‼ むしろそのまま過ちを犯してくれた方が……」
「馬鹿な事を言うんじゃない‼」
咲夜はどうにも自分の体を僕に安売りする傾向がある。いくら僕と早く付き合いたくても自分の体を売るような行為は本当に止めて欲しい。
「ぶぅ……まーくんの頑固者」
「咲夜が緩すぎるの。そういう事は結婚するまで絶対にダメ」
「え!? それはいくら何でも生殺しすぎるよ!?」
「全然そんなんじゃない。むしろ普通だ‼」
「ほら‼ さきっちょ‼ さきっちょだけでいいから‼」
「女の子がそんなはしたない言葉をつかうんじゃありません‼」
時々咲夜のこういうところが中年オヤジに見えて萎える。折角可愛い容姿をしているのだからもっとお淑やかにして欲しいものだ。そうすれば僕だってもっと素直に褒めるのに……
「ぶぅ……まーくんのイケず~」
「本当どうして咲夜はこうも親父臭いのか……はぁ……」
「ガチなため息止めて? 泣きたくなるから……」
「あ、ごめん。そんなつもりは……」
「もう。冗談だよ。それぐらいじゃ泣かないよ。私が次に泣くのはまーくんとの
「随分気の早いことで……」
「そうでもないよ。私達もう高校二年生なんだよ? 私のプラン的には後六年後には結婚したいし」
「六年後……」
六年後というと大学卒業して、就職が決まったくらいだろう。そう考えると咲夜にしては案外堅実な予定と言える。
それにしても咲夜は微塵も僕と破局する可能性を疑っていない。咲夜からすればそうだろう。何せ彼女は僕の事をずっと思い続けている。その間僕に彼女ができるというイベントがあったのにも関わらず、咲夜は諦めなかった。むしろ炎をより激しく燃え上がらせている。それは今も尚。
果たして僕が彼女のそんな気持ちに追いつける日は来るのだろうか。
「まーくん?」
「いや、なんでもない」
「はい。また嘘ついた」
「……本当咲夜は僕に関することを何でもお見通しだな……」
「うん‼ 自分で言うのもなんだけどまーくんの事は本人以上に理解している自身があるよ‼」
「それはそれで怖いな……」
「まーくんはどう? 私の事どれくらい理解している?」
「僕? 僕は……そうだな……」
いざそう言われるとかなり悩む。僕は一体どれほど咲夜の事を理解しているのだろう。他人よりは誰よりも理解している自身はある。でも彼女の家族と比べるとどうだろう。そこまで僕の咲夜への理解は達しているのだろうか。
「考えすぎ。そういう時は誰よりも理解していますって答えればいいの」
「嘘でも?」
「嘘でもだよ。女の子は誰だって自分の好きな人に褒められるのは嬉しい物なんだから」
「それは咲夜だけでは……」
「まーくん?」
「いえ。何でもないです……」
「よろしい。ってもう日を跨いじゃうじゃん‼ 明日も学校なんだから早く寝ないと‼」
「それなら僕は一階で……」
「ダメ。まーくんは今日私と一緒に寝るの」
「いや、だから……」
「却下」
「却下を却下」
「却下を却下を却下」
「却下を却下を却下を却下」
「却下を却下を却下を却下を却下を却下ってもう‼ いいから早く来る‼」
「ちょ!? 咲夜!?」
やばい。やばい。やばい。やばい。このままだと確実にやば……
「まーくんは自分のやりたいと思ったことを最後まで貫きとおせばいいと思うよ」
「……咲夜?」
「誰かになんと言われようがまーくんは最後まで自分意志を貫きとおせばいいよ。その方がきっとうまくいく。私が保証してあげる」
「咲夜は……僕の前から
「うん。いなくならないよ。死が二人を分かつその時までずっと一緒にいるよ」
ああ。そういうことか。咲夜が今日泊まると言い出した理由がやっとわかった。
「……ありがとう」
「何が?」
「とぼけなくていいのに……」
咲夜は僕の事を慰めるために今日泊まると言い出したのだ。先程のゲームにしたって僕の好きなゲームをやることによって僕がより元気になってくれると思ったのだろう。まあ途中からは彼女自身ドはまりしていたが……でもそれよりも僕の気持ちを汲んでくれるのが何よりも嬉しかった。心ではこれ以上彼女に甘えてはダメなのはわかっている。でもこうやっていざ経験すると嬉しくて、自身の気持ちを抑えられそうにない。
「咲夜。好きだよ」
「へ!? 今なんて言った!?」
「……秘密」
「ええ!? もう一回‼ もう一回言ってよ‼ 録音したいから‼」
「絶対に嫌‼」
「なら私も言うからまーくも言ってよ‼」
「咲夜の好きという言葉にそれほどの価値はない」
「酷い!?」
嘘だ。本当は好きと言われるたびに僕の胸はときめている。でも僕は嘘つきだから。そんな事言わない。
「ま~くん‼」
「もう寝ろよ……」
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