デートと幼馴染
「お、お待たせ」
「おう……」
時は進み本日は日曜日。学校はおやすみ。そんな日に僕は咲夜を誘って動物園へと来ていた。
「に、似合っている?」
「うん。とっても」
咲夜の私服姿は昔からよく見ている。でも今日咲夜が身に着けいるものは、普段の咲夜のイメージを払拭する大人びたもので、顔はうっすらとではあるが化粧をしている様に見え、とても綺麗だった。
「そういうまーくんもよく似合っているよ?」
「そ、そうか?」
「うん。普段からとてもカッコいいけど今日はいつにもましてカッコいいよ?」
「あ、ありがとう」
咲夜にこうして正面から褒められるのは、どうにも慣れない。でも嬉しいのもまた事実で、普段は頑張らないお洒落を頑張ってよかったと思う。
そもそもの話僕は普段服に興味は、微塵もない。そんな僕が服を選んだとしてもお洒落にはならないだろう。そこで僕は先輩に協力を求めた。先輩の僕に関する分析力は目を見張るものがあり、先輩ならば僕に似合う服を選べるだろうと僕は考え、その考えは見事うまくいった。
「咲夜? どうかしたのか?」
「え、な、なんでもない……よ?」
「嘘つけ。緊張しすぎだ」
咲夜は先程から手を開いたり、閉じたりしており、咲夜は緊張する場面に直面した時よくそうするのだ。
「うう……だって……これって……」
「デート。そう言いたいのか?」
「うん……」
「ば~か」
僕は咲夜の頭を軽く小突く。咲夜は可愛らしく頭を押さえると潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。
「むぅ……いきなり何するの?」
「馬鹿な事を考えている咲夜にちょっとしたお仕置き」
「馬鹿なことじゃないもん‼ というかこれデートじゃないの?」
「ああ、デートじゃないぞ」
「ええ……私デートだと思って気合い入れてきたのに.......」
まあ……僕はデートのつもりで来たんだけどな。
でもそう言ったら咲夜は、きっと今のままで楽しんでくれないだろう。それはこちらとしても望ましくない。
「それは悪かったな。デートじゃなくて。それとも咲夜はデートのつもりできていたのか?」
「それはそうだよ。普段自室にこもってばかりのまーくんがふ、二人きりで遊びにいこうだなんていうから……」
咲夜は不満げに頬を膨らませる。その様はリスの様で、とても可愛らしい。
「二人きりで遊ぶことなんで今まで何度もあっただろう?」
「それは……そうだけれど……それは子供の頃のことであって……」
「確かにそうだな」
「でしょう? 普通年ごろの男女が一緒に遊びに行くのはデートなんだよ?」
「ふ~ん。そっか、そっか。つまり咲夜ちゃんは、僕とデートに行けると思ってずっと浮かれていたというわけか」
「え、そ、それは……うう……」
「顔真っ赤だぞ?」
「ま、まーくんのせいだよ‼ そ、そんな事言うから……もう今日のまーくんは意地悪だよぉ……」
「意地悪な僕は嫌いか?」
「……好きだよ。意地悪するまーくんも……」
咲夜は耳まで真っ赤に染めながらこちらのことをチラチラと見つめ、そのいじらしい様はとても可愛い。
「そ、それでまずどこに行く?」
「咲夜は何か見たい動物いるか?」
「う~ん。私としてはやっぱりペンギンとか可愛い動物が見たいかな。そういうまーくんは?」
「僕はチンパンジーが見たい」
「なんでチンパンジーなの?」
「野生のチンパンジーは見ていて滑稽で、飽きないから」
「まーくん。性格悪いよ?」
「冗談だ。本当に見たいのはシマリスだ」
「リス……ああ、なるほど」
咲夜は僕の言葉に一人納得し、うなづく。
ただ本当は見たい動物など僕には一匹もおらず、今日この場に来たのは、咲夜が動物好きなのを利用して、デートしたかっただけだ。
「本当にまーくんはリス好きだね」
「まあね。最近は特にヨクバ〇スの影響で余計その気が強くなっているかな」
この言葉に嘘はないが、よくもまあ自分で思うのもなんだがよくもまあこんな言葉がつらつらと浮かんでくるものだ。
「う~ん。そんなに可愛いかなあのキャラ? 私としてはワンパ〇の方が可愛いと思うんだけどな~」
「はぁ……まだまだだな」
ワン〇チは確かに可愛い。でもその可愛さは所詮量産型。ヨクバリ〇の様な強烈な個性を持っていない。世の中個性に勝る魅力はないのだ。
「むぅ……なんかその態度ムカつく」
「まあヨクバ◯スより咲夜の方が可愛いけれどね」
「……さらりとそういう事言わないで欲しい」
作戦成功。上手いこと咲夜の事からかうことができた。それにしても咲夜の奴、本当に責められるの弱いな。まあそんなところも可愛いのだけれど。というかむしろ誉められ慣れていない女の子って予想以上にそそるなぁ……ジュルリ……
「何ニヤニヤしているの?」
「何。咲夜があんまりにも可愛いからつい顔が緩んじまっただけだよ」
「そ、そういうまーくんだってカッコいいよ?」
「そう? ありがとう」
「うう……今日のまーくん手ごわい……」
あ、危ねぇ……マ、マジで今のはヤバかった。つい反応してしまう所だった。もしここで反応したら確実に今度は僕が咲夜の餌食になる。それだけは、勘弁だ。というかなんで咲夜は、いちいちこんなに可愛いんだ? こんな反則的に可愛い女の子が世の中に存在していいのか?
「さてふざけるのはこれぐらいにしておいてそろそろ行くか」
「うん。そうだね。それじゃあ……」
咲夜は自身の手を僕の手に絡ませてくる。こういう所は、本当に抜け目ない奴だ。
「行こうか?」
咲夜は意趣返しと言わんばかりに、可愛らしくウインクをして僕の腕を引く。繋がれたら手から伝わる咲夜の暖かな体温に僕の胸は、自然と満たされていて、永遠にこの時が続けばいいと思った。
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