第3話
それは真夜中の出来事だった。
「ハッピーピエローーー!!」
鼓膜を打ちつけた大声。
場違いなほどに明るく、機械的で人間らしさの全くない声。
人々の目の前にあるのは住み慣れた我が家の光景ではなかった。だれもが見たこともない風景であった。
荒野。
数千人の人間がそこにいた。見知らぬ顔も多いが知った顔もある。そこにいたのは同じ町に住む人々だった。周囲を見回し、声をあげ、状況を理解しようとしたが正解にたどり着けることのできる者はいなかった。
「ヒョワッホー!お前ら様は選ばれたあ!当選、当選、当選だぁああ!ここはお前ら様の街じゃねえぞお!ってそんなこととっくにわかってっか!もちろん夢なんかじゃあねえぞお!異次元空間だぁああ!!」
手のひらサイズの不気味なピエロが大声が青空に響いた。あり得ない。どう考えても真夜中のはずなのだから。
「お前ら様は最っ高に楽しいゲームに招待されましたーってんだよ!望んでねえって?そんなこと言うんじゃねえよ、もう決まっちまったんだからよ!好きだろ?お前ら様はゲームが!」
遠くで何かの鳴き声。
「この中にはお前ら様を殺すための罠が至る所にあるぜえええ!お前ら様を食い殺そうと狙っている化物も沢山、沢山、沢山だ!!」
悲鳴があちこちで上がった。
理解した。自分たちがイカれた魔法使いのターゲットになったことを。逃れようがないことを。
「でも安心していいぜええ!いいかぁああ?これはゲームだ、ゲームなんだ。クリアすれば死ななくてもOKだあ」
悲鳴が消えた。
「お前ら様専用の宝箱があちこちにあって、その中には武器とか回復アイテムなんかもあるんだぜええ。太っ腹だろう?嬉しいだろう?」
ピエロの言葉を聞こうと必死になっている。
「ゴールはなあ!聞きたいだろう?ゴールはこの広ーい異次元空間のどこかにでっけえ扉があるんだ!その扉をくぐったお前ら様は元の場所に帰ることが出来る。つまりはゲームクリアってわけだ!生きて帰れるんだ!最っ高のゲームだろぅうう?」
押さえた声のざわめきが走る。
「さあ!お前ら様、説明は終わりだ。まだまだ聞きたいことがある!っていうお前ら様はどんどん質問していいぜぇえええ!なんでも答えるぜえええ!俺は何でも知ってる何でも答えちゃうピエロ!ただただただただーーーーー、来ちまったぜええええ!」
ピエロを囲むように集まっていた人々。
その背後。
土が盛り上がった。
「さっき教えてやったよなあぁあ」
這い出たのは複数の骸骨。
「お前ら様を殺したがっている化物の登場だああああ!!」
何もないはずの目の窪みに明確な殺意。
叫び声をBGMに虐殺が始まった。
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