自爆するM子とF男

 うわぁ、ブス……


 地方から来た後輩のM子は、「ごめんなさい、A子先輩…」と私に謝りながら顔を涙でぐちゃぐちゃにした。「涙は女の武器」にも、色んなレベルがあるんだなと思う。申し訳ないけど、恋の勝者が見せる女の顔とはとても言えない。


 私は、サークルの夏合宿で朝食を終えた後、その片付けで後輩M子に声を掛けた。泣かせたのは私だ。


 広い食堂に私とM子だけ。


 M子は私の彼氏であるF男とイチャイチャしている事を女のY先輩に責められていた。


「なんで、F男といっしょに洗濯機回してるの?F男、A子ちゃんと付き合ってるの分かってるでしょ?」


 そういう罪状だ。


 私はというと、F男に「A子先輩は、サークル内では先輩としての立場でいてください」と言われていた。夏合宿中は特にと念を押されていた。


 飲みの席で私の隣に座ってキスしたくせに。サークルメンバー目撃者多数なのに何を言ってるのか理解に苦しむが、サークルを真面目にやりたい私は彼の意見に従っていた。


 それなのに、F男はわざわざM子といっしょに洗濯機を回している。周りからしたら、この二人が私を排除して虐めていると見ていた。


 別れたいならわざわざサークル内で波風立てる必要無いんじゃない?と、F男とM子の頭の悪さに驚いた。


 私は恐ろしい勢いでF男に冷めた。


 まさか、キスからデート1回2週間でこんな事態になるとは。


「A子ちゃん、私、M子ちゃんに文句言っといたからね?」


「……Y先輩ありがとうございます」


 Y先輩のお節介で、私は二人に対し態度を示すことにしたのだ。


「私はもういいから、F男と付き合えば良いんじゃない?私は別れるから彼に伝えといて」


 呼び止めた時のM子は、モンスターにでも遭遇したかのような怯えっぷりだった。


 私の目前でF男と仲睦まじいところを見せびらかしたくせに、Y先輩に責められたぐらいで私に怯えるって、バカなのこの女……マジで、ブスだわ。


「ごめんなさい、A子先輩」と泣きじゃくるM子。


「もういいから」と先輩モードの私。


 F男は私と同じ年なのに一浪している。だから、サークルでは私の後輩になっている。彼からしたら、私よりも地方から来た彼女の方がプライド的にも御し易いと思ったのだろう。一人暮らしの彼女の部屋は居心地も良いだろう。


 M子は私からF男を引き剥がせた優越感に浸って周りが見えてなかったのかもしれない。私よりも先に処女を卒業して有頂天にでもなったか?


 多分、M子とF男はこのサークル内で自ら居場所を無くしていくんだろうと思った。しかも、それになかなか気が付かず恥を晒すのだろう。


 見物かも知れない。


 私は温情をかけてやろう……先に退部した友だちからもらったシューズをあげる約束をして、M子を食堂に残して立ち去った。


『ブスって煽てるとヤベェな……』


 って、喉元まで出かかって、私はそれを封印した。


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