味の分かる男
「中島くん、久しぶり」
辞めたサークルの同期男子から電話が掛かってきた。
「リエちゃんは元気してた?」
「してた、してた」
私がサークルの辞めた理由は三角関係。中島くんが振り向かなかった女子が、私と彼氏の仲に入って来たから。彼氏は元々その子が好きだったため私が邪魔になった。二人は付き合い始めて私を攻撃するようになり、私は撤退した。惨めすぎてサークルに顔出すのが嫌になった。その前にだって失恋してて、泣きっ面に蜂だった。
で、中島くんは三年のヤリマン先輩が好きで、進展してたらしい噂を聞いている。わざわざヤリマン先輩に惚れるのもどうかと思っていた。
狭いサークルの中で絡み合った男女はややこしい。私としては、想像以上にクズな彼氏と別れられて清々している。付き合って二週間と保たなかったし、未練はない。キスも二回ぐらいだし、デートも一回。傷は浅い。その点で中島くんには感謝した方がいいかもしれない。
「リエちゃん、アイツと別れて良かったよ〜!あの後、やっぱり評判悪いんだわ、あのカップル」
「そうだろうねぇ……」
もう、私が三角関係から潔く撤退した話はサークル内で武勇伝のように語られている。いい加減困る。
話が中島くんの恋話に移る。
「オレ、別れたんだよ〜」
「あ、そうなんだ」
なるほど、サークルを辞めた私には話しやすいよね。それで電話くれたのか。愚痴なら聞きたい。むしろ、興味あるわ。
「ヤリマン先輩、なかなかさせてくれないからね……あれ、噂よりも全然身持ち固いじゃん?って、思ってたんだよ」
「うんうん」
「でもさ、やっとやらせてもらって理由を聞いたらさ、オレと付き合い始めた時に妊娠してるかもって心配してたっていうんだよ」
「うわ〜〜」
キタキタキタ!!!
噂だけじゃなかったんだ……色気振りまいてるってだけで、優しい人って思ってた。優しいんだけど、ガチにゆるゆるだったんだね。うーん、生々しい話になってきたぞ。
「それでさぁ〜、相手の男がさ、ヤリチン先輩でさ……」
「げえええええ」
四年生のヤリチン先輩は、三年生のオジョウ先輩の彼氏だ。ご令嬢のオジョウ先輩に、ヤリチン先輩は勿体ないとみんな思っている。
サークル合宿でも、男子たちが身体を洗っている最中に浴室に現れたと思うと、そのまま誰よりも先に湯船に入ってしまう。ヤリチン先輩は基本的に最低だ。デカいらしいが、そんなのは話にならない。オジョウ先輩と別れて欲しいと後輩として願ってやまない。
「それで、まぁ、妊娠してなかったから安心してってなったけど、オレは耐えられなかったわけだよ。なんだかんだ付き合うとなると真面目なのかと思ったら、それだからさ」
たまたまヤリチン先輩だったからって、あり得る話だし、他の男だろうとなんだろうと……噂通りだっただけじゃん。ヤリマン先輩……。中島くんもアホだわ。
「オレはねー、生理前が分かるからね」
「はぁ?」
突然話のテーマが変わる。ヤリマン先輩の妊娠疑惑が収まった流れで、生理前が分かるって何よ。
「味で分かるんだよ」
「……そうなんだ」
お互いの失恋話でスッキリしたと思ったら、下ネタの話になった。中島くんは、基本的に紳士的で気の良いヤツ。その気の良さが、よく分からない方向に向かっていった。
「味がねぇ、変わるんだよ」
う、うん。そうだろうね。分かるよ分泌物変わるもん。保健体育の授業はそこまで詳しく教えなくても、言われたら理解出来る話だよ。
って、相当コツコツ味見してないと得られない知識だよな。
「ヘェ〜、そうなんだ」
中島くんの下ネタに動揺しているのに気が付かれないように、声音を丁寧に会話する。
なんなの、この電話!
中島くんとこんなに長く話すこと無かったんだけど、これは話が濃すぎるわ。
キツイわ〜〜〜
中島くんの御奉仕君アピールを受け取って、電話が終了した。
いや、ま、まだ私バージンなんだけど……
勉強になったわ……
私は中島くんに感謝しつつ、この知識の活用は難しいと思うのだった。
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