第326話 冒険者ギルドでの再会
アランたち六人が、帝都エリオットの冒険者ギルドの扉を潜ると――
「おっ……アランに、レイナさん!」
「うわー! すげえ、久しぶりじゃないか!」
「おい、みんな! 『暁の光』のご帰還だぜ!」
顔見知りの冒険者たちが次々と集まって来る。ちょうど夕方に差し掛かる頃で、冒険者たちの多くが戻って来る時間帯だから。かつてのギルド現役最強パーティーの登場に、冒険者たちは大いに盛り上がる。
しかし、少し遅れてカイエたちが入って来ると――冒険者たちの視線は、カイエの方に釘付けになる……特に男たちの視線が。
「よう、カイエじゃないか……久しぶりだな!」
そんな感じで。カイエを覚えている冒険者も何人かいたが。大半の連中の目当ては――六人の美少女だ。
赤い髪に褐色の瞳の完璧美少女に、金髪碧眼の知的美少女。銀色の髪と小麦色の肌の健康美少女に、黒髪の妖艶な感じのギリギリ美少女……
さらには、藍色の髪と赤い目の魔族の美少女と、翠色のポニーテールにゴスロリ姿の美幼女までいるのだから……大抵の男なら、六人のうち誰かはドストライクだろう。
ローズたちを侍らせて入って来た黒髪の少年に。カイエを知らない冒険者たちは、殺意のこもった視線を集めるが――
「何だよ、羨ましいのか? だけどさ、手を出すなら覚悟しておけよ……こいつらは全員、俺の嫁と愛人だからな」
堂々と宣言するカイエに、ローズたち四人が嬉しそうな顔で前後左右から密着し。ロザリーとメリッサも頬を赤らめて寄り添う。
そのせいで冒険者たちの嫉妬はヒートアップするが――カイエがほんの少し、視線に威圧を込めただけで。冒険者たちは凍り付いたように押し黙る。
(((な、なんか……こいつ、ヤバくないか?)))
カイエは苦笑すると。
「悪いな……俺たちの邪魔さえしなけりゃ、文句はないから」
いつもなら、カイエもこんな事はしないが。何も知らない冒険者たちが群がってきそうだったので、先に釘を刺したのだ。
「何だよ、騒がしいね……」
このタイミングで。騒ぎを聞きつけた三つ編みで年増のギルド職員が、奥から出で来る。薄い化粧の地味なスタイルで、目つきはきついが。顔の造形は整っている。
「誰かと思えば……『暁の光』じゃないか。久しぶりだね……そこにいるのは、カイエかい?」
「よう、ギジェット。ちょっと寄らせて貰ったよ」
ギルドの怖いお局さんであるギジェットとカイエは、初対面の時に意気投合して酒を酌み交わした仲だ。
「……へえー。そういう事かい」
冒険者たちの注目が『暁の光』ではなくカイエに集まっている事と。六人の美少女の存在から、ギジェットは一瞬で状況を察した。
「カイエ、あんたは……やっぱり良い男だから、モテるんだね」
男勝りに豪快に笑うギジェットに――ローズたちは警戒する。
((((((え……もしかして、この人にもフラグを?))))))
ギジェットは六人の反応に気づいていかないのか。
「とりあえず、飲んでいくだろう? ギルドの仕事なんて、どうでも良いからさ」
ギルド職員とは思えない発言をすると。
「ああ、あんたたち邪魔だから。そこのテーブルを空けてくれない?」
若い冒険者たちを追い立てて、カイエたちのためにテーブルを空ける。
「さすがはカイエの女だね、みんな奇麗どころじゃないか……あたしはギジェット。このギルドの職員さ。久しぶりにカイエと飲みたいから、ちょっと借りるよ」
カウンターの奥からギルドマスターが顔を出していたが、ギジェットに睨まれて顔を引っ込める。
余りのマイペースぶりと発言内容に、ローズたちは警戒心を緩めるが――レイナ一人が慌てて割り込んでくる。
「ああ、ギジェットさん。久しぶりね!
レイナの心理をローズたちは想像する……自分だけカイエの女だと認定されなかった事に焦って、必死にアピールしているのだろう。
((((((レイナ、可愛い(のよ)……))))))
ロザリーまでが、そう思ってしまった。
「ああ、そうだな……
カイエの悪意のない仕返しに、レイナが思わず赤面すると――冒険者たちの嫉妬が再び燃え上がるが。
「まあ……今日のところは我慢しろよ。おまえたちにも好きなだけ酒を奢ってやるからさ」
カイエの気前の良さに、現金な冒険者たちは掌を返す。
「うおおお! さすが、モテる男は違うな!」
「マジかよ! カイエって言ったな、歓迎するぜ!」
カイエは苦笑しながらも、見知らぬ冒険者たちと次々と乾杯していく。
そんな彼らを余所に――
今日は完全に店仕舞いだなと、冒険者ギルドマスターは肩を落とし。元ホームグラウンドなのに、カイエに主役を奪われたアランたちは、諦めたような顔をしていたが。
「へえー……みんなも頑張ってるんだね。僕もカイエと一緒だから、毎日飽きないよ」
トールだけは、ちゃっかりとカイエの奢りに乗っかって。昔馴染みの冒険者たちとの久しぶりの飲みを楽しんでいた。
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