007 バトルアント
「アキラ、私が右翼から機動防御をかけるので、壁際を真っ直ぐ突っ切りなさい。信長さんは……」
「わしはアキラの露払いをやる!」
サイレンの命令に信長が即座に答える。
サイレンのダークレッドの<ニンジャハインド>は
機動防御で高速移動しながら、バトルアントを両手のレーザーソードと両足のローラーブレードで蹴散らしていく。
踊るような回転運動でその動きには無駄がなく、バトルアントが次々と
信長も
銃弾が
一見、生物系モンスターにみえるバトルアントは、その内部の機械部品を撒き散らしながら解体されていく。
アキラは
時折、透明レーザーのスナイパーレーザーライフルでサイレンと信長を援護している。
「では、私は高みの見物してます」
ネメシスは腕組みして状況を見ている。
危機と言っていたのに動く気配がない。
サイレンは見事な機動防御で壁となって、バトルアントの波のような大群を寄せ付けない。
このまま突破できるかに思われた。
広い洞窟の終わりにボトムストライカー数機が入れるような小さな穴が見えてきた。
「あの狭い洞窟に突入できれば逃げ切れるわ」
サイレンから通信が来る。
が、洞窟から長い首を持つ蛇が顔を出す。
牙のある口を開けて、アキラたちを待ち受けていた。
とっさに信長は慌てて方向転換して、右側に弧を描きながら蛇のアギトを回避した。
アキラは回避運動が全く間に合わなくて、そのまま蛇のアギトに飲み込まれてしまう。
「しまった!」
信長は慌てるが後の祭りである。
護衛役が逃げてどうする!とサイレンから怒られるのは必定である。
「
ネメシスは自信満々で言い放つ。
「いや、まずいだろう?」
スナイパーアレイの外側は漆黒の闇だと思ったら、急に蛇の内臓の肉の壁のようなものが見えた。
外部モニターの画面全体が赤みを帯びてみえるが、おそらく、暗視用赤外線センサーに切り替わったのだろう。
強酸の消化液がしたたる洞窟、というか
機体が溶け始めるのも時間の問題だと思われた。
「イージスワン!」
ネメシスがつぶやくと、何かが弾けるような音がして一気に視界が開けた。
スナイパーアレイの周囲に肉片と血の雨が霧のように落ちてきて真っ赤に染まった。
どういう仕掛けか分からないが、
「アキラ! 信長さん! 私について洞窟に入るのよ!」
サイレンが一気にスピードを増して、
アキラもそれに続く。
しばらく三人は洞窟の中を進んで、また少し広い空間に出た。
幸い、
おそらく、バトルアントの縄張りを抜けてしまったので巣に戻ったのだろう。
「アキラ、すまん。護衛のわしが逃げてしまっては何にもならなかった」
信長が珍しく素直に謝った。
「別にいいですよ。俺が下手なだけですよ」
確かに、スピードが乗ってたとはいえ、普通だったら容易に回避できるはずだった。
だけど、突然、
まさか、ネメシスがわざとやったのではとアキラは疑い始めていた。
「私じゃないわよ。あれは<アスカ遺跡の呪い>よ」
ネメシスはアキラの心を読んだように反論した。
「そうですね。実はこのアスカ遺跡ではそういう<呪い>と呼ばれる機体の不具合がよくあるのよ」
サイレンがネメシスを擁護するように<アスカ遺跡の呪い>の話をしはじめた。
ネメシスの声は直接、サイレンには聴こえてはいないはずだが。
「
「古代遺跡のナノマシン? そんな話は初耳だけど、俺は前線で戦うばかりであんまり遺跡探索に参加してなかったしな」
アキラは何となく納得した。
逆にあのネメシスがつぶやいた<イージスワン>とやらの呪文のようなものの正体が分かったような気がした。
そして、ネメシスが何故、スナイパーキラーの位置を特定できたかの謎についても推測は成り立つ。
とはいえ、それについては折をみてネメシスに問い質そうと考えていた。
「ちょっと休んでから、また遺跡探索しましょう」
「<<
サイレン隊長からの指示にふたりは仲良く返事をした。
最初にサイレンから、交代で機体の中で戦闘食を食べてから少し仮眠をとることになった。
ゲームの仕様で、戦闘後プレイヤーアバターの体力も減ってしまうので休息するか回復薬で回復するのが普通である。
回復薬はここぞという時に使いたいので温存することになった。
アキラと信長が見張りだが、視界が開けた広い場所だったので周囲を警戒しつつ休息を取る。
「アキラ、すまんのお」
信長から共有回線通信が入る。
「そんなに気にすることはないですよ。信長さんは悪くない。大体、俺なんかに護衛をふたり付けてもらってるので、逆に悪いなあと思ってます」
「そうか。メガネもお前のことは気にかけてるので、そう思う必要はないぞ。わしは、結構、アキラのことを気に入ってる」
信長は照れくさそうに言った。
「俺も信長さんのことは好きですよ」
何となくいい雰囲気になってきて、アキラも言い返した。
本音だった。
ゲームとはいえ、生死を一緒にした戦いを何度かやれば自然とそうなる。
「うむ。あれはなんじゃろ?」
信長が右腕で遺跡の奥を指差した。
やはり、ヒカリゴケで明るくなってる洞窟は天井が高く横幅も広い。
見晴らしは良好だった。
その先に、さっきの三倍ほどの巨体をもつ赤い
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