2ー59★話し合い
全員で夕飯を食べた後、エルメダとフィリアは後片付け、そしてアンテロは治療薬を作ると言うことで、席をたってしまった。
今、俺の周囲にはノルドとフェンしかいない状況だ。
『ノルド、ちょっといい?』
『はい、なんでしょう?』
『えーっと、実はちょっと話があるんだけどいい?』
『あー、アタルさんお話があるんでしたら、僕は席を外しましょうか?』
『んー、大丈夫じゃない?と言うか…別に話と言うか、頼まれ事があっただけだし、それにこの依頼主はフェンも知ってるからね』
『えっ…、僕が知ってる人ですか?』
『うん。トラボンさんね』
『あー、あの方ですか。と言うか、本格的に知り合いになったのは最近なんですけど』
『えっ?トラボン?ナカノ様、彼と知り合いなんですか?』
『んー、別に親しい間柄と言うわけではないよ。ただ、あの人から頼まれ事をされていたから、忘れないうちにそれを渡しておこうかなと思ってね』
トラボンとの繋がりがノルドにとっては意外だったのだろうか。
若干、驚いたような反応を見せたが、直ぐにいつのも彼と言う感じに戻った。
そうは言っても俺の方としても、ノルドの交遊関係にはあまり突っ込みたくはない。
なので、軽くトラボンから預かった鍵付きの小さな箱をノルドに見せて手渡した。
確か中は一度確認した感じだと、神代文字と言うのが書いてある羊皮紙が入っていたはずなんだが…
『彼は元気でしたか?いやー、なつかしいですね』
『んー、俺も実は二回ぐらいしかあったことがないから、それほど細かくは見てないけど…病気とか怪我とかはしてない感じだったよ。そー言えば、あの人、今見せたやつ?なんか今のお客の要望で解読する必要があってとかなんとか言ってたよ』
俺がそう言うと、ノルドは小箱に鍵を差し込み中を空け、羊皮紙を見つける。
『あー、なるほど。これですか…、んー。これくらいなら恐らく数日のうちにはお渡しできると思います』
ノルドの感じを見る限り、なかなかに交遊がありそうな印象を受けた。
だが、彼らは場所的にそれほど離れているわけではないのに、お互いの居場所なども知っていないような印象も受ける。
なんとなく、その辺の感じとかを聞いてみたいなとは思ったのだが、薮蛇になったら嫌なので黙っていることにした。
『了解。って、多分だけど…。今の問題って、数日で片付かないよねぇ…』
『『んー…』』
俺がそう言うと二人とも困ったと言う表情で一言。
『後、すいません。実は僕の方からもお二人にお話ししたいことがあるので宜しいでしょうか?』
『ん?いいよ』
『フェン君からもですか?いいですよ』
『はい。ありがとうございます。あーっと…、ただ出来れば場所代えたいなと…出来れば僕のスキルも使いたいです。後、フィリア様も交えて四人で話が出来ればと思うのですが…』
『ん?フェン君にしては注文多いですね。いいですけど…では、場所の方は一番奥の部屋にしましょう』
『あー、俺もいいよ。それじゃー、俺はフィリアさん呼びに行ってくるね』
『あーっと、アタルさんなるべくなら…』
『二人で来いってことでしょ?分かってるよ』
俺たち三人は、そう言いながらとりあえずそれぞれの行動を開始した。
★★★
『あのー、すいません。ワタクシに話があると言うことだったのですが…』
小さくドアを叩いて開けた後、ノルドとフェンを見つけたフィリアは小声で二人に聞いてきた。
『あー、大丈夫ですよ』
『アタルさんも一緒に早く中に入ってください』
『おう、分かった』
俺とフィリアは二人に言われるままに中に入り二人と正面の位置になるように座りあう。
すると次の瞬間…
フェンの周りから不思議な空間が現れ、みるみる大きくなって俺たち全員を包み込んだ。
さすがに何度も経験しているだけあり、俺はもう慣れた。
だが、フィリアは珍しいのか座りながら周囲をキョロキョロしている。
『さー、これで大丈夫です。安心してお話ししましょう』
『あのー、フェン様?今のはスキルか何かなのでしょうか?』
『はい、そうですよ。実は僕、商人でして今のは商人の能力の一つです。話し合いの内容などを外に漏らしたくない時に使います』
『と言うことは…アンテロ様やエルメダ様に知られたくはない内容も話さなければいけないと言うことなのでしょうか?』
『彼女たちに知られたくないと言うよりは、アタルさん一人に決めて貰う内容はありますね。それに万が一の事も考えてです』
(それ、多分…ギーと塩のことなんだろうな…でも万が一って何だ?)
まだ話し合い内容が本格的に始まっていないだけあって、フィリアの顔は不思議と言う表情しか見えない。
『それで、フェン…先ずは何から話をしたらいい?』
『そうですね、先ずはフィリア様はノルド様からヨハンとか言う人が生きてるかもと言うのは聞いたんですよね?』
『はい、可能性としてですが…』
『後、彼が可能性として色々と怪しいと言うのも聞いたんですよね?』
『はい…』
彼女が非常に寂しそうな顔を見せる…
確かに思い出したくない内容だとは思うが、フェンもいたずらで彼女のトラウマをほじくり出すような性格ではない。
何か考えがあるのだろうと俺は黙って聞くことにした
『それであれば、どこから連絡を取っていると思いますか?』
『え?連絡と言うのはどういうことでしょうか…?』
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