2ー37★自己紹介

肉とドライフルーツを食べ、ある程度の時間が経過した頃。

彼女の様子が何やら不思議なと言うか…

変なと言うか…

違和感があることに気づいた。

最初は腹もふくれて落ち着いたからなのかなと思っていたのだが…

理由はそれ以外もあるようだ…


と言うのも…

彼女の雰囲気だけじゃなく外見にも違和感を感じだしたからだ。


最初は食事をとり落ち着いたからだと思っていたのだが…

食事を進むにつれて変化が何となくから確信に変わっていくのが分かった。


具体的に、その確信と言うのが髪の毛だ。

最初、食事をとる前は真っ白だった髪の毛だが、食事をとるにつれて微妙に色がついていくような気がしたのだ。

彼女とは今、洞窟の中でやり取りをしている。

なので暗いから最初は髪の毛の色には気づかず、また気づいても気のせいかなと思っていたのだが…

彼女がある程度の量の肉を食べていく内に、髪の毛がクリーム色になっているのに気づいた。

そして、その変化に本人の方は気づいていないようだ。


『あのー、フィリアさん?なんか様子が変わってません?』

『あっ…、すいません。なんかがっついてしまって申し訳ありません。説明も途中でしたよね』

『いえっ…、別に食べる様が変わったと言うことではなくて…その…外見が…』

『んー…??』


俺の質問に彼女は目をパチパチさせながら小首をかしげている。

やはり彼女の中では、自身の変化には気づいていないのではないかと思う。

そして、その変化なのだが…

よく見ると老婆がやっているしぐさなのだが…

一瞬リスなどがこっちを見る可愛い仕草に見えたのは何故なのか…


『いえっ…、今の自分に変化して食事終わった直後とかに鏡で自分を見たりしたことってありました?』

『申し訳ありません。今の状態を自覚してからは、鏡などは避けてきたので…』

『あー、別に謝らないでください。そうですよね!鏡とか見ないですよね…全く持って当然だと思いますよ。さっ、さっ、別に食べながら話すので全く問題ないですから、どうぞ!』


俺がそういうと、彼女は嬉しそうに食事を続ける。

ただ食事の方も、ある程度の時間がたち彼女の方も余裕が出てきたのだろう。

目線の方は俺の方を向くようになった。


『でも、それがどうかしたのですか?』


話す直前に水を飲んだりすることからも、大分余裕が出てきたのが伺える。


『いや、フィリアさんの髪の毛なんですけど…色…変わってません?』


俺がそういうと、彼女は不思議そうに左手で髪を掴み顔の正面まで持っていく。


『えっ…あれっ…これっ…私の髪なんですか?』


彼女は全身を震わせながら俺に訪ねてきた。

やはり彼女自身で自分の変化と言うものには気づいていないようだ。


『はい、そうですよ!間違いなくフィリアさんの髪です!』

『でも…どうして…?』

『んー、俺の方では神器アークでしたっけ?後…聖杯?でしたっけ?そういう類いの伝承が、こっちの方でどう伝わっているのか分からないので…あまり変な事言えないですけど…なんか方法あるんじゃないですか…』

『あっ…、あの…、差し支えがなければ…お名前聞いてもよろしいですか?』

『あー、そう言えばまだ名乗ってませんでしたっけ?アタル・ナカノと言います。宜しくお願いします。』


そう言えば、最初会ったときは発言しようものなら何か投げつけられて睨まれて最悪の印象だったなと思いながら、俺は自己紹介していた。


『アタル様ですね。ワタクシはフィリア・ヴァン・ユースティティアと申します。家族など一部の方には、フィアと呼ばれてました。ご面倒であれば、以後そのようにお呼びください』


丁寧にお辞儀をし改めて自己紹介をしてくる彼女なのだが…

親しい者同士間での呼びなとかも教えてくれるのも非常に嬉しいのだが…


(貴方の家族って…王族だよね?)


彼女をフィアさんと呼ぶのは今の俺には、少しハードルが高い気がする…


『あー、まー、その辺は追々と言うことでも良いと思うんですけど…それよりも…話戻していいですか?』

『あっ…申し訳ありません。ワタクシとした事が…』


ここで再び彼女は一礼をするのだが…

その動作が狐か何かのように一瞬感じ…

小さい頃に聞いたおとぎ話の中に一宿一飯の恩に対してお辞儀をする狐の話が確かあったはず…

そんな事を懐かしんでしまった。


『ちなみになんですけど、グリエルモさんの方って、今どんな状況なんですか?直ぐに会ってとか言う状況なんでしょうか?もしそうなら先にグリエルモさんの方を優先した方がいいのかもしれませんが…』

『確かに彼の方は急を要するとは思うのですが…先程、ポーションを使用しまして、そのまま眠った後なので…今起こすのは、どうなのでしょうか…』

『あー、あのブレッグさんでしたっけ?彼も味方なんですね?』

『はい、そうですけど…何故、彼の名もご存じなのでしょう?』

『たまたま関係者もいたので、運よく分かった感じだと思います。そうですか、それなら先に貴方の状態の確認を少し細かくした方がいいのかもしれませんね?』

『あー…はい…宜しくお願いします』


そういう彼女の顔は実に不思議そうに俺を見ていた。

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