1ー21★意外な知識
スルトと話をして孤児院のそばにある家で住むようになってから5日ほどが経過した。
市場で注文した調理器具も揃い、その他の道具も食材も用意をし準備OKだ。
朝は冒険者ギルドでアイテム運びの仕事を行い、昼からはエルメダと組ながらイーグルの連中と討伐の仕事をしている。
正直、疲れているがそんなことは関係ない。
俺には確かめないといけないことがあるからだ。
先ずはキッチンにある魔導式コンロと呼ばれる道具の前に陣取る。
台に2口のコンロがあり右側のコンロには、水を張った大鍋がセットされている。
水を張った大きな鍋の中に水がこぼれないようにボウルをセットし、中にはバターをたくさん入れておく。
一番右側のスイッチを入れるとコンロから火がついた。
この火を利用してボウルにいれたバターを湯煎していくと2層に分かれる。
上が
『よし出来た!後はこれを冷やして白い部分だけ取り除くことができれば、良い値で売れるんじゃないか!』
ここ最近は帰ってきてからは、この作業ばかり繰り返している。
スルトの話を聞いてから、俺はこの塩の精製を試してみたくて仕方がなかった。
フェンの話では、確かに塩は存在していて買い取りもしているということだ。
さらに希少価値も高いということなので、フェンの商会でも喜んで買取りしていると言っていた。
ただ、俺としてはどうせ儲けるのであれば、同時にもう一儲けをしたいと思い考えていたことがある。
無塩バターと塩の生成に使っていない方のコンロにも鍋が置いてあり、こちらには昨日までに作っておいた無塩バターが入っている。
コンロのスイッチを入れて弱火で暫く待つと無塩バターが溶ける。
鍋を焦がさないように注意をしながらまっていると、無数の気泡とドロッとした灰汁のようなものが出てきた。
(ドロッとしたのは確かタンパク質とか脂肪か不純物か、そんな感じのものだった気がするんだ…)
ここで灰汁のようなものを取り除きたいと用意したのが、鋳物屋さんに頼んで作ってもらった灰汁取りオタマである。
鋳物屋さんからは、変わったものを注文するなと言われた。
取り敢えず20分ほど灰汁と格闘をしていると、だんだんと泡が小さくなりバター液自体も透き通ってきたように思う。
後は、この鍋にあるバター液をろ過して完了になるのだが…
日本にいたときにはコーヒーフィルターとかで簡単にできたのだが…ここにはそれもない。
オタマと一緒にオーダーメイドした目の非常に細かい金網に目の細かい布を被せてバター液をこしていくことにした。
(布洗うの大変なんだよな…)
そして完成したのが[ギー]である。
日本にいたときに、バターコーヒーが流行り出したときに何度か試したことがあった。
これがサラダ油とかよりも体に良いとか紹介されていた気がする。
時間はかかるけど作業は楽だったなと鍋を見ると何かカスがついている。
昨日までは全く気にもならなかったのだが…
何となく気になったのでスプーンで掬って一口…
『あれ?意外にイケル!!』
もう一口と思ったのだが…
(確かタンパク質とか脂肪とかが固まったものだった気がする…)
続けると止めることができなくなる。
そしていつか絶対に罪悪感で一杯になる。
そんな後悔はしたくないので俺は泣きながら鍋のカスを洗い流すことにした。
さー、明日はフェンとの約束だ。
『明日はこの塩とギーが化けてくれると良いな』
俺は両目を欲の塊のごとく金貨のようにしながら、後片付けをすることにした。
ギーを作った鍋底のカスを舐めながら…
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