🌻もう一つの、ILoveYou

ルミン

時の龍。

その日は澄み渡る五月、

木々は青さを増し、花は咲き乱れ

俺は車を走らせる。

車体を揺らし海へ海へ、何も考える事も無く、無表情で・・・

もうどうなってもいいんだよ。

どれだけの人が泣いてくれても

もうこの世に、未練はない。


海が見える頃は、夕方になっていた

五月と言えど夕方頃は風が強くなり

頬を撫でる荒い海風を真正面から受けていた。

今日は、元嫁の結婚式、しかも相手は、俺の長年の親友・・・


嫁を失い、親友も失った!

・・・生地獄だ‼

元嫁は俺の浮気に気づいて、離婚を

言い渡してきた!

突然だった、俺の浮気旅行を暴き出しその日に引っ越してしまった。

そう嫁は計画的だったんだ

彼女は頭が良い。



それは・・・自業自得、彼女を裏切ったんだから仕方が無い、何度許しをこうが彼女は頑として許してはくれなかった。


ほんの遊びのつもりだった、浮気相手も本気じゃない‼

俺の顔と年収にヨロけただけだ。


20代後半、30前の火遊びのつもりだった。

砂浜に座り人生を振り返る

そう俺は人生をリセットしに、この海へとやって来た。


もう生きるすべも無い、俺がどれだけ元嫁に惚れていたか・・・

奴は知っていたのに・・・


裏切られた、奴がずっと嫁を狙っていた事は知っていた。


ちくしょうwww.━━━━━‼

俺は砂浜を走り抜ける。

海へ向かって・•・


だから警戒して飲みなど行かなかった。

奴の誘いには乗らなかったんだ‼

常に嫁に寄り添って生きていた

そう、大事にしていたつもりだった。


俺なりに


しかし甘い誘いは、蜜の様に俺に

降り掛かって来たんだ。



お前がいらないならと

親友は遂に重い腰をあげた。


彼女は年上で綺麗で、可愛らしく面倒見がよく、一途‼

だから俺を嫌うなんて・・・

俺以外の男を選ぶなんて・・・


彼女が俺から離れるとは

思わない‼

馬鹿な俺の性格を知っていた奴は

傷心した彼女に取り込み見事奴は

彼女を手に入れた・・・


やられた・・・愛しのミク


拓哉は砂浜から腰をあげて

と寄生を上げ背広を脱ぎ捨て海に

向い走り出した。


風で少し荒だって来た波が拓哉に

被ってくる。


うおおおおぉー

拓哉の奇声は黒い海に木霊した。


泣き叫ぶ拓哉の声は更に海を荒らし


見る見る空は曇り雨雲が現れ波が荒れ巨大な大波が繰り返し繰り返し

拓哉を飲み込んで海の中へ上へと

拓哉を弄ぶように振り回した。


拓哉は目を瞑り時を待った。

いっの間にか雨も降り出し

プカリと浮かんだ拓哉を

雨が叩く。


死を覚悟しこの世との別れ側に

何故か涙が溢れ思うのはやはり元嫁

の笑顔だった。


「ミク、ミク、ミク、」


愛した嫁が人のモノになるのを

見ているのは辛すぎる、彼女の

幸せそうな笑顔が拓哉の首を絞めた。


突然違和感を感じ目を開けた

すると大きなイカつい龍が拓哉の5メートル先の方から首を上げ睨んでいた。

拓哉はギョッとして体を起こし

龍を見た。


《《何故泣く、お前は死にに

来たのだろう‼海に沈みたいの

か‼》》


龍は地割れするようなドスの効いた声で上半身をうねらせ、拓哉に話しかける。



・・・


「俺を食うのか?」

拓哉は龍に問いかけた。



龍は大きな口を開け嘲笑うような

のぶとい声で甲高く笑っていた。


「俺はこの世に未練は無い‼

早く食え‼━━━━━━━」

荒れ狂う海で拓哉が叫んだ!


龍は静かに瞬きをした。

龍は巨体な体をグルりと回し

体を伸ばして顔を拓哉に向けると赤い目でジ━━━━━━ッと見た。

ギョロリとした赤い目を見た時、拓哉の気が遠くなり耳に又野太い声が

響いた。


《《良いか‼良く聞け‼私は神の

使いである。

ワシは人など食わない‼



偶然お前にあったのも何かの縁だ‼

もう一度生きろ!

儂と出会う人間は早々居ないぞー

命を無駄にするな━━━ぁ⚡⚡》》

ゴゴゴゴゴーと海は大きくうねり

拓哉の身体は宙を舞った。


気が遠くなりフワフワした感触に

頭がポワーンとなる。


「い・・・やだ、俺・・・は

苦しむの・・・嫌・・だ・・・殺せ‼

ひとおもいに殺・・・せ‼」


何時間経ったのだろう。

俺は自分のマンションのソファに座っていた。

辺りを見廻し我に帰る

あの海から車を運転してここまで

帰って来たのだろうか?


「ただいまァ〜

拓哉つかれてない?」


「疲れてないよ!お姫様。

風呂のお湯、用意して来るから

ビール🍺キンキンに冷やして‼」

拓哉がミクの靴を靴箱に入れながら

言うと

「はーあい。」

ミクはこんな時甘えた声をだす。


『あれは、おれだ』


俺はミクの前に立ち、「ミクミク」と呼んで見た。

ミクは俺に気づく事無く

テイクアウトして来た、焼き鳥や

ポテトサラダ、ステーキをテーブルに並べ始めた。


「拓哉ァー拓哉ァーー‼

スープー?お味噌汁ゥー

どっちにする━━━━━‼」


俺が風呂場から叫んでいる。

その声を聞くとミクは、フフッと

嬉しそうに笑って、ハイハイ。


『ああ、そうだこんな事も

あったな。』


「里芋と豆腐多めの奴ね‼」

ボソッと呟き里芋の皮を剥き出した。

ああ、そうだミクは出汁を冷蔵庫に

何時も常備していた。

椎茸だったり、昆布だったり、カツオだったり、何時も健康を気にして

くれていた。


「ミク、風呂用意出来たぞー‼」

「はーい♡先に入ってて、お味噌汁

作ってるから・・・」



そう言うと味噌樽から味噌を上げて

いる。

そうだ、ミクは味噌も手作りしていた。多めに作って俺の実家にも送っていた、両親はミクの味噌を楽しみにしていたんだ‼


そう俺だって、・・・



つい2ヶ月位前に戻っていた。


ミクと俺は風呂に入り食事をして

酒を飲んでいる、ミクは飲めないからと甘い梅酒を薄めて飲んでいた。

ニコニコ笑うミクに発情して、寝室へミクをお姫様抱っこして・・・


俺もフラフラと立ち上がり後を追う

俺自身であってもその行為を見る事に異常な嫉妬が湧き上がって来る。


しばらくビデオでも見ているかの様に事は進んで行く。


そしてついに俺は・・・あろう事か

俺は俺が羨ましくなり俺にのしかかった。すると・・・

(;꒪ö꒪)ビックリする俺に


「どうしたの!?拓哉‼」

ミクが俺の頬に手を当て丸い目で見つめてくる。


「嘘、嘘、嘘だーぁ‼」

意味不明な俺の叫び声に

ミクは驚いて


「どうしたの!?、どうしたの!?」


俺はキッとミクを見つめ

ミクを堪能した。

間違いなくミク・・・だ。

俺は嬉しくなって・・・

「愛してる、もう、ぜーったい

離さな い‼ ミク、俺はぜーったい裏切らない、ミクだけだから本当に、ミクだ けだ‼」


「う、うん、そうじゃなくちゃ

困っちゃうんだけどね!」


ポカンとした顔をしながらミクは

今更ながらの俺の愛の告白に引いていた。


ミクの体の温もりを感じながら

ミクに包まれながら

幸せな気持ちも俺を包む!


眠気が襲ってきて眠りそうになるが

目が覚めたら又あの暗い海にいるんじゃないかと不安で眠れない。


「ミク今日は、何月何日だ?」


「いゃだぁ、何言ってるの?

三月三日じゃない、だから

デパ地下に寄ってひな祭りの

お祝いしょうって拓哉が言ったん

じゃない、今日の拓哉何か変だ

よ。」


あ‼思い出した。

あれは・・お昼休みの事だ。


「ミク、今日何時に終わる?」


「ん〜そうだなぁ!

交代だから5時かなぁ。」


「よし、今日はデパ地下でひな祭り

の、ご馳走買おう、食事に行くより

ミクと家飲みしたいし

その方がゆっくりあるだろ‼」


「でもここからじゃ遠いよ。

雛鮨と言う歳じゃ無いし

あ、じゃあ拓哉の好きなの

作るよ!なに食べたい?」


「いや、今日はミクとゆっくり

したい、買っていこう。

迎えに行くから待ってて

たまにはミクも人の作ったの食べて

みたら?

家事って息抜きも必要だよ。」


「うん。

ありがとう。」




いっもミクは自分より俺の事を優先

していた。早く気づくべきだった!


「ミク今何時?」


「ん?21:00時」


横になっていたミクはスマホをイジリ表示された時間を見て答えた。


「ちょっと待ってて」


確か駅前のケーキ店は22:00まてやってるはず、俺は服を着てマンション

の外でタクシーを広い駅に向かった。


少し薄暗くなった店内へのドアを開ける。


「いらっしゃい‼」


の呼び声にホッとする。

閉める寸前に間に合った。

店のガラスケースの中に雛ケーキが

どんと座っていた。


俺は¥3580の雛ケーキを買い、ワインを買い又タクシーで帰った。


マンションに帰るとミクがソファに

不安な顔をして座っていた。


「ミクお待たせ‼

桃の花も買いたかったけど

シャッターがおりてて・・・とっとっと‼」


「バカぁ、急に居なくなるからァ

心配したじゃん!又浮気かと

思ったよ‼」


拓哉に飛びついたミクを拓哉はようやく受け止めた。



「ん?又?またって?」


「アッ‼ゴメン‼ 違うの

だって、何も言わないで出て

くから・・・」


「う・・・ん。ゴメン

ひな祭りなのに雛関係なくてサ

せっかくの初めてのひな祭りだろ‼

ミクを喜ばせたくて・・・サ」


「たくやぁ〜グスッ

有難う、もう32なんだからぁ

ひな祭りなんて・・・」


「何言ってんの?

ミクは何歳になっても

俺の、お雛様だよ。チュッチュ」


28歳で年下の俺はミクに猛アタック

に継ぐアタックを繰り返しミクを手に入れた。






「亀嶋さーん亀嶋拓哉さん」



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