落下から始まる異世界浪漫

鍵弓

第1章

第1話 いきなり落下なう

 主人公の名は天宮 当夜 (あまみや とうや)身長176cm普通の体格で 21歳のちょいモテの医学生。父親の経営する産婦人科と外科のどちらかを継ぐべく、勉学に励んでいた学生である。半年前の交通事故により首から下が動かず寝たきり生活を送っていた当夜が異世界に転移して生きていく物語。



 当夜はふと目覚めた。目が覚めると何故かかなりの高さからというか、上空から落下中で、風を感じていた。


『一度スカイダイビングしてみたかったんだよな!風を切り裂いて飛んでるぜ!ヒャッホー』

と、場違いな事を思っていた。


 先程まで車に乗っており、乗っていた車が事故を起こし、車が転がっていた筈だった。おかしい、何かがおかしいと思っていると、ぼんやりしていた意識が急に覚醒し、現実に引き戻された。

ちなみに目は風圧で涙が出まくっている。スキーでゴーグル無しで滑っていると涙が出てしまう。そういった感じだ。


そして何故か自分が空から落下中で、地面が段々と近づいてきているという現実に気が付き



当夜「何故こうなった!ふざけんな!ダメだろうこれ!じゃない!ヤバイヤバイこのままだと地面に激突だ!死にたくない!誰か助けてくれ!」


 当夜が叫ぶと、ふと誰かの声が頭の中に聞こえて来たのだ


システム「了解しましたマイマスター。仮名ドール1を発動します。何%注入しますか?後で変更可能です。また能力値及び制約事項の設定は一度しか変更出来ませんが標準値から今回変更しますか?後からでも設定可能です。但し一度設定変更を行うと以後変更不可となります。設定変更されますか?」


当夜は不思議な声に疑問を持つが、助かるチャンスはこの声に賭けるしかないと直感して


当夜「よく分からないが設定は後でするから標準で!100%で良いから助けてくれ。頼む急いでくれ」


システム「了解しましたドール1を緊急起動します。グッドラック!」


 謎のやり取りが行われ、後2秒位で激突というタイミングで、見知らぬ女性に抱き抱えられてゆっくり地面に着地した。当夜の体は動かないが激突ではなく、ふわっと着地したのだ。


 時は意識を取り戻し、落下する前に戻る。


 当夜は勉学に励むも、女に現を抜かす金持ちのボンボン学生だった。

 しかし今は違う。それは半年前の交通事故の所為だ。

交通事故により瀕死の重傷を負うも、奇跡的に一応ー命だけは取り留めた。そう一応なのだ。なぜなら首から下が動かないのだ。、

当夜は人生が終わってしまったと絶望しており、当然1人では何もできないのだ。自らの意思で死ぬ事すら出来ない。こんな事なら死んだ方がマシだったなとずっと思っていた。そう今日までは。


 自分で言うのも何だが頭は良いのでモテるし、女もとっかえひっかえで、成績も優秀だった。よく彼女とお医者さん・・・・いやよそう。俺が首から下が動かなくなった時に現実を思い知らされた。俺が普段つるんでいる女や友達と思っていた奴等は一度だけ見舞いに来たが、その後は二度と来なかった。そう、俺がモテたのは金持ちなのと、将来性を見た玉の輿だったようで、現実は厳しい。今になって思うのは俺のルックスってまあ普通だよな。気が付くと勉学と女に励み過ぎていて、友達はいるが親友がいないんだよね。そんな寂しさも、俺の絶望感を強くしている理由の一つだった。


 今は車の中なのだが、何でも病院の建て替えが有り、俺を収容できる病院が隣の市に行かないとないのだ。

その為、転院する事となり車で移送されていたのだが、途中で交通事故に巻き込まれた。

 これでようやく死ねると思っていたんだよな、その時は・・・・・事故で車がぐるぐる転がって、俺は頭を強く打ち意識を失ったのだ。次に目覚めた時は空の上だった。



 そして物語はここからスタートする。


 落下し、謎の美女に抱きかかえられて、何とか地上に着地して九死に一生を得た所に時は戻る。

 そこには当夜をお姫様抱っこしている金髪碧眼、当夜の理想の所謂絶世の美女というのがいて、驚いて見とれていた。


 死なずに済んだのは良いが、着地した所が問題だった。

 何者かが戦っているのだ。しかも最後の一人が殺されて矛先がこちらに向いたのだ。当夜はふと思った。相手は盗賊だろうか。

血が吹き出し、手足が吹き飛んでいて仕掛けや作り物ではなく、本物の人体だ。


 当夜は訝しがっていた。当夜を抱き抱えている女性はドール1と言う仮名らしい。何故か分かるのだが、当夜の眷属か使役者か何からしい。


ドール1「マスターいかがされますか?」


凛として心地よい声だ。


当夜「あいつらが襲ってきたら俺を助けてくれるか?」


ドール1「畏まりましたマイマスター。敵を排除します。その後速やかにチャージをお願い致します」


 そう言って戦いに行ったのだが彼女は強かった。完全に無双していて、3分もせずに盗賊と思われる奴らを全滅させたのだ。

剣をあっさり奪い、そこからは一方的に倒している。華麗に舞っているのだ。


チャージってなんだろう?と当夜は謎の言葉の意味が分からなかった。


 盗賊が全滅したので当夜は一安心し、今の状況を整理した。

 どう見ても異世界だ。死んでる奴の姿格好が日本人ではないし、何より俺は日本に居たのだ!全然風景が違い、あり得ない事態だと。都会の真っ只中にいたのに、今いるのは何処かの草原だ。そして地球とは大きさの違う月が2つ見えたのだ。



今いるのは何処かの街道か何かで、周りには草木があり、桜に似た木がまばらに生えている。草原というやつだろう。日本では見られない風景だ。


 周りを観察していると、仮称ドール1が当夜の所に来て手を差し出し


ドール1「マスターさあ参りましょう。チャージを」


 しかし当夜はその手を握れないので


当夜「すまないが俺は以前の怪我により首から下が動かせないんだ」


 彼女は当夜の額に手を当てて


ドール1「理解しました。神経の損傷を確認しました。私では治療不可ですが、マスターが自由意志で動く方法が有ります」


当夜「どういう事?」


ドール1「マスターの人形使いのギフトにより私は召喚されました。マスターはもう一体ドールを召喚出来ます。私とはタイプが違い、何かに憑依して操るタイプです。それと私はマスターのナビゲーションも兼ねております。仮称としてドール2としますが、マスターの能力をドール1と2に振り分ける必用があります。割合は最低でも30%ですが、それだけあればマスターの体を動かす事が出来ます。ドール2を使いマスター自身の体を人形として操ります。ただし、わたくしドール1の戦闘能力がドール2に使う比率により著しく落ちますのでご注意下さい」


 その後色々教えてもらった内容は


 当夜は傀儡と言うか人形使いの能力を持っていて、ドールを二体出せる。


 ドール1が彼女でドール2は当夜が直接操り何かを乗っ取り、それを操る力の為、己の体自身も操る事が可能。歩いたりする事が出来る。


 2体のドールへはドールの能力値を合計100%で振り分ける。

自立して稼働しうるのには最低でも30%必要で、各ドールに30%だと一般人レベル、ドール1は生存可能なのが30%で、それより下だと今の彼女が死んでしまう。次に発動すると別の命が宿るのだ。

 これはかなり大事な事だ。彼女には俺の命を救ってくれた恩義が有るし、関わりを持ったのだ。

 基本的に彼女は当夜から魔力を得る事で生きている。人道的にドール1を消す事が出来ない。消すと彼女が死ぬ事を意味するからだ。ただし振り分ける力の比率は自由に変更できる。また希望すれば彼女は子を成す事も出来るという。基本的に人間の体なのだ。

 彼女は人間と精霊の融合体と言うが、当夜は現状では子供を作る事ができない。ドール2では体を動かせても生殖能力をコントロール出来ないと伝えられた。

 もし姓行為をしようとしても当夜の生殖器が使用できないと当人にはかなりショックな事を伝えられた。


 ドール1は40%で中級冒険者位で、60%で上級冒険者と渡り合える程度。

 彼女は当夜の相棒になったのだが、当夜からの召喚にとても感謝していた。

 詳しくは命令がないと言わないそうだが、一族の掟を破り、罰により存在抹消の処分待ちの所だった。当夜からの召喚を受け入れ、当夜の天寿が全うするまで仕える事によって罪を免除される赦免を与えられ、再び生まれ故郷に戻るチャンスを貰ったという。


 この世界は魔法が有り、彼女が剣で戦い、当夜は魔法で戦うか、剣で戦うかになる。

 彼女の話では、冒険者というのが有り冒険者ギルドで冒険者登録を行い、まずは冒険者として、生きて行く為のお金を得る事を薦められた。


 また、当夜が持っている能力はかなりレアで強力という。ステータス等は見えないがレベルが有り、冒険者に登録するとレベルの恩恵が受けられる祝福を授かる。レベルが上がると当夜の人形使いの能力も上がり、彼女も強くなる。ただしレベルが上がり戦闘能力が上がっても肉体強度は大して上がらないので防具に頼らないといけない。そんな感じだ。


 彼女は当夜が異世界から来たのは理解しているが、何故この世界に来る事になったのかは知らないし、当然誰が当夜を召喚したのかもだ。

 異世界から来た者は大抵特殊なギフトやスキルを複数持っているが、自らがその力に気が付くしかないというのだ。どんな力を授かっているか調べる術がない為に、死ぬまで力に気づかない事も有りうる。当夜も特殊な力を多分幾つか、少なくともあと一つか二つは何かの力を持っている可能性が高いというのだ。


 まずは彼女に名前を付けなければだが、精霊には名前が存在しないので当夜が命名する必要があった。


 彼女には "ルナ" と名付けた

 能力値を40%返して貰おうとしたが、本来は体のどこかに触れるとチャージを開始できるのだが、当夜は体を動かす事が出来ない為触れない。おでこを合わせてもダメだった。


ルナ「口づけはどうでしょうか?マスターの体で、自由意思で動かせるのは舌位だと思います。マスターの舌にて、ギフトに頼らず己の意思で動かして触れている、との自覚が必要かと思います」


「申し訳ない。それしかなさそうだな。来てくれ」


 そう言い、キスでは無いのだが単なる接吻を行うがダメで、舌を彼女の口の中に入れるディープキスでようやく発動し、当夜の中に40%が戻ったと理解できた。

後で検証したが舌と舌を接触する必要があり、お互い舌を伸ばすのはきつかったので接吻で行う事になった。

 そして当夜がドール2を発動すると己自身を傀儡として操作対象とするように選択したのだが、当夜は改めて思うのだが、ルナを見た時もそうだが、何かディスプレイのような画面が頭の中に浮かんできて、『ゲームかよ!』と思う状況だった。


 そして当夜は自分自身をドール2で操る事を試すが、難無く立ち上がれ、あまつさえ歩くことが出来た。嬉しくて泣きながらルナを抱きしめたのだが、そっと俺を抱きしめて頭を撫でてくれていたが、感覚が妙だった。抱きしめられている感じが頭部には感じ取れたが、体の方は感覚が殆どなかったのだ。


 とりあえず動けるようになり、コツが居るが小便も出来るのと、排便と排尿のコントロールが可能だった。有り難い事に一人で出来たので、直ぐに病院で付けられていた色々な管を体から引き抜いたのだ。


 ようやくルナをちゃんと見れた。

 165cm位でスラッとしたボディーラインだがDカップと抜群のスタイルだ。

 髪は金髪ロングのストレートで碧眼。目を見張る美人で当夜の超好みだった。

正確に言うと、召喚された時に当夜の好みを再現されているから当たり前○のクラッカーな状態なのだが、その不自然な美貌さに疑問を持つ余裕は今の当夜にはなかった。

 服装は白い丈の短い清楚なワンピース。丈が合わないので超ミニスカ状態だ。履物は黒い色をしたパンプスのような物だった。不思議なのは、ルナは盗賊から武器を奪い、その剣で切り裂いていた筈だが帰り血がどこにも無く、服にもシミ一つ無い。


 とりあえず倒した盗賊の片付けを行う事となり、体を動かす訓練を兼ねて当夜も動くようにしたのだった。



別作品  

エラーから始まる異世界生活

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